インテル® Quartus® Primeプロ・エディションのユーザーガイド: タイミング・アナライザー

ID 683243
日付 1/31/2023
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ドキュメント目次

1.2.7. タイミングの悲観

共通クロックパスの悲観性除去では、スタティック・タイミング解析時に共通クロックパスに関連付けられる最小および最大の遅延の変動を考慮します。それには、共通クロックパスの最大遅延値と最小遅延値の差を適切なスラック計算式に加えます。

最小および最大の遅延の変動は、タイミング解析で 2 つの異なる遅延値を同じクロックパスに使用すると発生する可能性があります。例えば、単純なセットアップ解析では、送信元レジスターへの最大クロックパス遅延によりデータ到着時間が決まります。送信先レジスターへの最小クロックパス遅延では、データ所要時間が決まります。ただし、送信元レジスターへのクロックパスと送信先レジスターへのクロックパスで共通のクロックパスを使用する場合は、タイミング解析で最大遅延と最小遅延の両方が共通のクロックパスをモデル化します。2 つの異なる遅延値、つまり最大遅延と最小遅延を使用して同じクロックパスをモデル化することはできないため、最小遅延と最大遅延の両方を使用すると、過度に悲観的な解析結果になります。

図 30. 一般的なレジスター間パス

セグメント A は、reg1reg2 の間の共通クロックパスです。最小遅延は 5.0ns、最大遅延は 5.5ns です。最大遅延値と最小遅延値の差は、共通クロックパスの悲観性除去の値と等しくなります。この場合、共通クロックパスの悲観性は 0.5ns です。タイミング・アナライザーは、共通クロックパスの悲観性除去の値を適切なスラック計算式に加え、全体的なスラックを決定します。よって、この例のレジスター間パスのセットアップ・スラックが共通クロックパスの悲観性除去がない場合に 0.7ns であれば、共通クロックパスの悲観性除去を含むスラックは 1.2ns になります。

共通クロックパスの悲観性除去を使用して、レジスターの最小パルス幅を決定することも可能です。クロック信号がレジスターで認識されるには、レジスターの最小パルス幅要件を満たす必要があります。最小の High の時間では、ポジティブエッジでトリガーされるレジスターの最小パルス幅が定義されます。最小の Low の時間では、ネガティブエッジでトリガーされるレジスターの最小パルス幅が定義されます。

レジスターの最小パルス幅に違反するクロックパルスでは、レジスターのデータピンでデータがラッチされなくなります。最小パルス幅のスラックを算出する際に、タイミング・アナライザーは、実際の最小パルス幅の時間から必要な最小パルス幅の時間を減算します。タイミング・アナライザーは、レジスターのクロックポートに供給されるクロックに指定しているクロック要件から、実際の最小パルス幅の時間を特定します。タイミング・アナライザーは、最大立ち上がり時間、最小立ち上がり時間、最大立ち下がり時間、最小立ち下がり時間から、必要な最小パルス幅の時間を決定します。

図 31. High パルスと Low パルスに必要な最小パルス幅の時間

共通クロックパスの悲観では、最小パルス幅のスラックを増加することができます。増加幅は、最大立ち上がり時間から最小立ち上がり時間を引いた値、もしくは最大立ち下がり時間から最小立ち下がり時間を引いた値の小さいほうの値になります。この例では、0.3ns (0.8ns - 0.5ns) と 0.2ns (0.9ns - 0.7ns) の小さいほうの値である 0.2ns だけ増やすことができます。