インテル® Quartus® Primeプロ・エディション ユーザーガイド: PCBデザインツール

ID 683768
日付 11/04/2020
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ドキュメント目次

1.4.3. Mentor Graphics* HyperLynx*ソフトウェアを使用したデザインのシミュレーション

インテルのWebサイトからダウンロードしたIBISモデル、または インテル® Quartus® Prime IBIS Writerで作成したIBISモデルは、タイミングおよびシグナル・インテグリティーを正確にモデル化するためにボードデザイン・シミュレーションに統合する必要があります。

Mentor Graphics* 社のHyperLynx*ソフトウェアは、最も一般的なデザイン・シミュレーション・ツールの1つです。HyperLynx*ソフトウェアを使用すると、IBISモデルをシミュレーションに簡単に統合できます。

HyperLynx*ソフトウェアは、LineSimとBoardSimの2つの製品で構成された高速デザイン用のPCB解析およびシミュレーション・ツールです。

LineSimは初期シミュレーション・ツールです。ボード・ルーティング実行前に、LineSimを使用して、ルーティング・ルールの作成およびボード・パラメーターの定義を支援する「what if」シナリオをシミュレートします。

BoardSimは、既存のボード・ルーティングを解析する目的で使用するポスト・レイアウト・ツールです。ボード・レイアウト・ファイルから1つまたは複数のネットを選択すると、BoardSimはそれらのネットをLineSimと同じ要領でシミュレートします。ボードおよびルーティングのパラメーター、および周囲の信号配線は既知であるため、最終的に製造されるPCBの非常に正確なシミュレーションが可能です。

この項では、LineSimに焦点を当てて説明します。シミュレーションの作成と実行のプロセスはLineSimとBoardSimの両方で非常に似ているため、LineSimでのIBISモデル使用の詳細はBoardSimのシミュレーションにも適用されます。

I/Oバッファー、ルート・トレース・セグメント、および終端コンポーネント間の接続とトポロジーを作成するために、スケマティックGUIを使用して、LineSimでのシミュレーションをコンフィグレーションします。LineSimは、ルーティング回路図を作成するために、セルベースとフリーフォームの2つの方法を提供します。セルベースの回路図は、バッファー、トレース・インピーダンス、およびコンポーネントの典型的な配置からなる固定セルに基づいています。グリッドベースのセルの一部は、トポロジーを作成するために最適のオブジェクトで埋められています。セルベースの回路図のトポロジーは、セル内およびセル間で使用可能な接続によって制限されます。

シミュレーション用の回路図を作成するための、より堅牢で拡張可能な方法は、LineSimでフリーフォーム回路図形式を使用することです。フリーフォーム形式の回路図形式では、パーツを任意のコンフィグレーションに配置し、必要に応じてパーツを容易に編集することができます。この項では、フリーフォーム形式の回路図でのIBISモデルの使用について説明しますが、手順はセルベースの回路図とほぼ同じです。

図 3. HyperLynx LineSim Free-Form Schematic Editor

HyperLynx*ソフトウェアを使用してシミュレーションを実行する場合、一般的には次の手順を実行します。

  1. 新しいLineSimフリーフォーム回路図ドキュメントを作成し、Stackup Editorを使用してPCB用のボード・スタックアップを設定します。このエディターで、レイヤーの厚さ、誘電率、トレース幅といったボードの層のプロパティーを指定します。
  2. シミュレートするネットに向けて回路図を作成します。回路図は、ソースおよびデスティネーションI/Oバッファー、終端コンポーネント、伝送経路セグメント、およびビアまたはコネクターなどのインピーダンス不連続部の表現を含む、ルーティングされたネットのすべての部分を表します。
  3. 実行中の動作を表現するために、IBISモデルをソースおよびデスティネーションI/Oバッファーに割り当てます。
  4. LineSimに組み込まれているデジタル・オシロスコープのプローブを、シミュレーション中に監視したい回路の位置に接続します。一般的には、少なくとも1つのプローブがデスティネーションI/Oバッファーのピンに接続されます。差動信号の場合は、差動プローブを接続先の正と負の両方のピンに接続することができます。
  5. シミュレーションをコンフィグレーションして実行します。立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジをシミュレートし、異なるドライブ強度の条件下で回路をテストすることができます。
  6. 結果を解釈して調整を加えます。デジタル・オシロスコープでキャプチャーした波形を基にして回路図の任意の箇所を調整することで、オーバーシュートやリンギングなどのシグナル・インテグリティーの問題を修正することができます。必要に応じて、I/O割り当ては インテル® Quartus® Prime開発ソフトウェアで変更可能です。IBIS WriterでIBISモデルを再生成し、更新したIBISモデルをHyperLynx*ソフトウェア・スケマティックのバッファーに適用します。
  7. 満足のいく結果となるまで、シミュレーションと回路の調整を繰り返します。
  8. ネットの動作がデザイン要件を満たしているのであれば、 インテル® Quartus® Prime開発ソフトウェアでI/O割り当てに変更を適用します。またオプションで、シミュレーションに適合するように、ボード・ルーティングの制約、コンポーネントの値、および配置を調整することも可能です。
回路図の作成、シミュレーションのセットアップ、モデルの使用、製品のサポート、ライセンス、およびトレーニングを含むHyperLynx*ソフトウェアについての詳細は、 Mentor Graphics* 社のWebページを参照してください。