AI ハードウェアとは?
AI ハードウェアは、人工知能のタスクを容易にするために使用される汎用性が高く、特殊化されたコンピューター部品やコンポーネントを包含します。それらは、効率性と拡張性を兼ね備えており、大規模なデータセットを迅速に処理できます。AI ハードウェア・コンポーネントの例としては、プロセッサー、AI アクセラレーター、専用メモリーユニットなどがあります。
使用する AI ハードウェアの種類は、ユースケース、処理される AI ワークロードの規模と複雑さ、どの程度迅速にデータ分析を行う必要があるかに左右されます。例えば、金融サービスで使用される AI は、不正を検出するために 1 日当たり数百万のデータポイントをほぼリアルタイムで処理する必要があります。自律走行車で使用される AI 対応センサーは、データがほぼリアルタイムで収集されるエッジで、より小さなワークロードを処理し、人間の安全性を確保します。小売ウェブサイトで顧客サービスの回答を提供するために使用される AI チャットボットは、分析するパラメーターが少なく、厳密な応答時間の要件はさらに少なくなっています。
AI におけるハードウェアの役割
人工知能におけるハードウェアの役割は、基本的かつ多面的なものです。異なるコンポーネントは、AI コンピューティングのさまざまな側面に影響を与えます。つまり、システムが使用する種類の AI ハードウェアは、特定の AI タスクの実行能力に大きく影響します。
例えば、プロセッサーの速度は、AI モデルの計算の実行速度に直接影響します。メモリーとストレージは、同時に処理できるデータの量と、データにアクセスする速度に影響します。冷却や電力供給を含むシステムの全体的な設計は、経時的に持続的なパフォーマンスに影響を及ぼすため、連続的な AI ワークロードを処理するために最適化する必要があります。
AI ハードウェアのメリット
AI ハードウェア・コンポーネントには多くの種類があり、各コンポーネントにはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあります。システムに要求する AI タスクによっては、特定のコンポーネントを含める、または省略する方が理にかなっている場合があります。
AI プロセッサーとアクセラレーター
AI プロセッサーは、AI タスクを完了するために必要な計算能力を提供し、AI アクセラレーターは統合型とディスクリート型の両方があり、高度な AI パフォーマンスを引き出すために使用されます。
これらのテクノロジーの多くには、共通の記述子や標準化された言語はまだ生まれておらず、多くのベンダー固有の用語が含まれていることに注意する必要があります。
注意すべき AI ハードウェアの種類には、次のものが含まれます:
- CPU: 中央処理装置は AI システムにおいて基礎的な役割を果たし、データの前処理、モデルの調整、制御フローなどの AI アプリケーションにおける汎用的なニーズを満たします。
CPU は、より小規模な AI モデルを扱う際に高い柔軟性を提供し、幅広い AI ワークロードやユースケースに適しています。これは、高いシングルスレッドのパフォーマンス、低レイテンシー、リアルタイム・システムやより複雑な自然言語処理タスクなど、複雑なシーケンシャル・ロジックを必要とするものです。
また、CPU は、AI パフォーマンスの最適化に役立つアクセラレーター・エンジンである統合アクセラレーター・エンジンでも使用できる場合もあります。
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GPU: グラフィックス・プロセシング・ユニットは、もともとグラフィックスをレンダリングするために設計されており、多数の計算を同時に実行するのに優れたディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターの一種です。GPU は大規模なデータセットを CPU よりもはるかに高速かつ効率的に処理できるため、AI モデルのトレーニングを大幅に高速化し、ディープラーニングやコンピューター・ビジョンに最適です。
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TPU: テンソル・プロセシング・ユニットとは、AI ワークロード向けに特別に設計された AI アクセラレーターの一種です。大規模な学習タスクを処理するために作成されており、高いパフォーマンスとエネルギー効率を提供します。そのアーキテクチャーにより、多くの AI アルゴリズムに不可欠な高速な行列乗算と畳み込みを実行できます。CPU と比較した場合、TPU は計算を大幅に高速化し、複雑なモデルのトレーニング時間を短縮し、クラウド環境における AI サービスの使用をより効率化することができます。
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NPU: ニューラル・プロセシング・ユニットとは、人間の脳と同様にデータを処理するように設計されたニューラル・ネットワークやマシンラーニング・モデルでの演算処理に特化した AI の処理能力を高速化するハードウェア・コンポーネントです。NPU は、行列乗算、畳み込み、活性化関数など、一般的な人工知能の運用やマシンラーニングのタスクに最適化されています。NPU は AI にとって非常に効率的な選択肢であり、高速かつ高帯域幅であるため、動きの速いワークフローへの統合に最適です。
- FPGA: フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、非常に汎用性の高い AI ハードウェア・ソリューションです。これらは再構成が可能で、さまざまな AI タスクのニーズに合わせてプログラムできるため、ハードウェアを交換せずに更新や修正が可能です。また、AI のパフォーマンスを向上させるために並列コンピューティング・アーキテクチャーで使用され、特にデバイスやアプリケーションが適応性と高いパフォーマンスを必要とするエッジにおけるリアルタイムの処理、コンピューター・ビジョンのタスク、ニューラル・ネットワークの推論に適しています。
メモリー
メモリーは AI タスクの実行に必要とされる重要なインフラストラクチャーを提供します。これにより、データと指示が、処理ユニットにおいてすぐに利用可能となり、AI アルゴリズムが迅速かつ効率的な実行できるため、AI 運用におけるボトルネックが解消されます。メモリーの容量と速度は、AI パフォーマンスの重要な要素である、大規模なデータセットや複雑なモデルを処理する能力に直接影響を与えます。
すべてのコンピューティング・システムには、何らかのメモリー容量が搭載されていますが、異なる種類のハードウェアにより、AI 処理のためのシステム容量を最適化できます。AI システムには、各メモリータイプに適した場所があり、AI のパフォーマンス要求に基づいて速度、容量、コストのバランスを取るために、互いに組み合わせて使用されることがよくあります:
- ランダム・アクセス・メモリー (RAM): RAM は、AI システムの主要なメモリー・コンポーネントであり、アクティブなデータやモデル・パラメーターに高速かつ一時的なストレージを提供します。RAM は、データの読み取りも書き取りも速いため、一定のデータ演算を処理するのに最適です。しかし、そのボラティリティと容量は、より大規模な AI 運用では制限要因となり得ます。
- Video RAM (VRAM): VRAM は、GPU で使用される特殊なメモリー・コンポーネントです。グラフィカルなデータを処理するために作成されていますが、並列処理を実行する機能により、一部の複雑な AI タスクの効率が向上するため、ニューラル・ネットワークやディープラーニング・モデルのトレーニングに役立ちます。VRAM は、通常、標準の RAM よりも高価で容量が少なくなります。
- 高帯域幅メモリー (HBM): HBM は、ハイパフォーマンス・コンピューティング向けに設計されており、非常に高い帯域幅を提供し、処理ユニット間のデータ転送を大幅に高速化することができます。GPU や AI アクセラレーターを通じて、大規模なニューラル・ネットワークのトレーニングや複雑なシミュレーションを行うのに最適です。また HBM は、他の形式のメモリーよりも高価で容量も少なくなります。
- 不揮発性メモリー: ソリッドステート・ドライブ (SSD) やハードディスク・ドライブ (HDD) などの不揮発性メモリーは、AI データの長期保存に役立ちます。その強みは、メンテナンスや電源を必要とせずにデータを保持する能力ですが、RAM や VRAM よりも大幅に遅いです。AI システムにおける不揮発性メモリーの主な用途は、アクティブな処理ではなく、データの永続性です。
AI ハードウェア・ソリューション
システムに設定する AI ハードウェアの種類は、AI アプリケーションを実行している場所、データセットのサイズ、必要な処理速度によって異なります。
クライアント・コンピューティング
クライアント・コンピューティング・プロセッサーは、通常、パーソナル・コンピューターやモバイル・デバイスで見られます。標準の PC には、CPU と GPU が含まれていますが、これらのコンポーネントの機能は、AI アプリケーションの処理ニーズを満たすように設計されておらず、AI モデルの実行や AI データセットの分析には、クラウドの使用が必要とされています。しかし、AI の急激な導入により、専用ハードウェアを搭載した新しい AI PC が、市場に投入され、デバイス自体に AI ワークロードを効率的に実行できる統合 NPU が搭載されています。これにより、インターネット接続がなくても、処理と応答性が高速化されます。また、データがクラウドとの間で送信されないため、コストとデータ・セキュリティー・リスクを軽減するのに役立ちます。また、最近のイノベーションにより、CPU のみのアーキテクチャー上で、より多くの AI ワークロードを実行できるようにもなっています。
エッジ
生成場所の近くでデータの収集、処理、保存、動作を行うエッジ・コンピューティング・アプリケーションでは、より高速なデータ分析とほぼリアルタイムの応答性が必要です。エッジで生成されたインサイトは、産業、医療、テストおよび測定、航空宇宙、防衛、自動車などの用途に使用されます。また、自律運転のシナリオなど、人間の安全性に直ちに影響を及ぼす可能性があり、製造の自動化に IoT デバイスを使用した場合など、産業業務に影響を及ぼす可能性もあります。また、小売、ヘルスケア、通信のユースケースに適用すると、さらに優れた体験となる可能性があります。エッジにおいては、CPU と FPGA が柔軟性と効率性のメリットを提供しており、AI の機能をより多くの場所に広げられるよう後押ししています。
データセンター
オンプレミスとクラウド・データセンター環境の両方において、CPU、GPU、専用の AI アクセラレーターの組み合わせが、一元化されたサーバー環境における大規模な AI ワークロードを処理するために使用されています。CPU は、幅広いワークロードやアプリケーションに適していますが、特にレイテンシーやコア当たりのパフォーマンスが重要な懸念事項となる場合に適しています。一方、GPU やその他の特殊な AI アクセラレーターは、CPU と併用して、非常に複雑な AI ワークロードの高度な計算需要に対応することができます。