AI ソフトウェアとは
AI ソフトウェアとは、データセットの準備や AI モデルの開発、導入、最適化に使用される、さまざまな種類のプログラムとツールをカバーする幅広いトピックです。AI ソフトウェアを使用すると、機械による学習、適応、意思決定などのタスクの実行が可能になります。
開発者は AI パイプラインまたはワークフローの 3 つの段階 (データの準備、モデルの選択とトレーニング、導入) の作業に AI ソフトウェアを使用します。そうすることで、生産性を向上させ、効率的でスケーラブルかつ管理可能なプロセスを構築し、目標とする機能を導入する際の柔軟性を高め、AI のパフォーマンスを最適化することができます。
AI におけるソフトウェアの役割
ソフトウェアの 1 種である AI がその性能を発揮するには、幅広いソフトウェア・アプリケーションとツールの使用が必要です。AI 開発プロセスの各段階で異なる種類の AI ソフトウェアが求められますが、これは実行すべきタスクの種類によって変わります。
データの準備
AI ワークフローの最初の段階であるデータ準備は、最も時間がかかる重要なステップです。この段階では、トレーニング用の AI モデルにデータを取り込む準備を整えます。データ・サイエンティストは、生データを集めてクリーンアップを実行し、分析して一元的データセットに統合できるようデータベースに収集します。このデータセットには、数値データ、動画、音声、そして AI モデルの意図された用途に固有のその他多くの種類の情報を含めることができます。
この段階で使用されるソフトウェア・ツールは、データの収集、保存、管理、データの抽出、操作、検証、データの調査、視覚化、変換を補助します。
モデルの開発とトレーニング
この段階では、AI モデル (データの分析、パターンの特定、予測を行うソフトウェア・アルゴリズム) を選択し、ユースケースおよび解決を支援する問題に合わせて調整を行います。
モデルは膨大な量のデータと超高速で実行されるテストの反復を通じて、特定のパターンを検出し、特定のタスクを実行できる能力を習得します。AI 開発者がモデルを改良し、その目的のタスクを正確かつ繰り返し完了できるようになるまで、モデルの学習が続きます。
専用のフレームワークとライブラリーおよび事前構築されたソリューションの要素が、モデルの選択、開発、トレーニング、評価を支援し、学習を加速します。
使用するソフトウェアの選択は、AI モデルの種類と、マシンラーニング (ML) またはディープラーニング (DL) のどちらに使用するかによって大きく異なります。
AI モデルはゼロから構築することも可能ですが、AI 機能の出発点となるオープンソースのモデル (基盤モデル) も存在します。このようなモデルを使うと、AI ソリューションの特定のニーズに合わせたカスタマイズと微調整を容易かつ迅速に行えるので、競合他社に先行しようと急いでいる企業は貴重な時間を節約できます。
導入
AI モデルを十分にトレーニング・検証できたら、導入段階でモデルを実環境に組み込みます。具体的には、トレーニングした AI モデルが推論プロセスで使用され、コンピューター・ビジョン・アプリケーションにおけるリアルタイムの映像など、見たことのない新規データを使用して判断と予測を行うことになります。
AI 推論ワークロードは、あらゆる AI アプリケーションのエンジンです。AI アプリケーションが適切に機能するには推論が適切に実行される必要がありますが、コンピューター・リソースに多大な負荷がかかります。そこでスケーラビリティーと予測可能性を確保する上で、導入中のハードウェア・インフラストラクチャーの選択が非常に重要となります。このステップにおける AI ソフトウェア・ツールは、モデルの提供方法、実行方法、および継続的な改善に関連して使用されます。
最適化
最適化は継続的なプロセスです。モニタリング・ソフトウェアを使用して、AI アプリケーションのパフォーマンスを継続的に分析します。ワークロードの最適化と分散を行うソフトウェアにより、AI アプリケーションが確実にインフラストラクチャーで支えられるようになります。また、モデルの拡張と実環境シナリオへの対応に伴って、モデルの定期的な更新と再トレーニングも必要になります。
ハードウェアによるパフォーマンスへの影響
AI ソリューションには、AI ソフトウェアと AI ハードウェアの組み合わせが必要です。モデルが単独でどれほど優れた性能を発揮しても、大規模および実環境シナリオのプレッシャーの下でどう機能するかは、AI の使用と、AI が提供する価値にとって極めて重要です。AI の導入を成功させるには、適切な規模のスケーラブルかつ安全な AI インフラストラクチャー上で、最適化されたソフトウェアで実行することが必要です。最新のテクノロジー・スタックと、AI ワークフローをサポートするエンドツーエンドの AI インフラストラクチャーのコンポーネントの詳細はこちらをご覧ください。
AI ソフトウェアのメリット
AI ソフトウェアは、AI ワークフローのプロセス全体に不可欠です。各ツールが特定の役割を果たして、ビジネスに全体的なメリットをもたらします。
- 生産性と効率性の向上: ライブラリー、フレームワーク、事前構築されたソリューションの各要素が、データ・サイエンティストや開発者の出発点となり、各ワークフローのステップを加速します。エンドツーエンドのプラットフォームは、ワークフローを効率化し、効率と生産性を高めるのに役立ちます。
- スキルギャップの縮小: エンドツーエンドの AI ソフトウェア・プラットフォームの数は増加しており、データ・サイエンティスト以外の人でも、モデルのトレーニングを支援しやすいツールと組み合わせて利用可能になっています。これにより、専門家の募集や雇用の必要性が減り、開発や市場投入までの時間を短縮できます。
- スケーラビリティーと柔軟性: 導入および最適化ツールは、1 回コードを記述すればどこにでも導入できるアプローチを支援し、異なるハードウェアおよびソフトウェア・プラットフォームで容易にモデルを効率的に実行できるようになります。
- AI のパフォーマンスを加速: ハードウェアの性能を活かし、リソース管理とコードの効率を最適化することでソフトウェア・アプリケーションのパフォーマンスを全体的に向上させるために、多数のツールが使用されています。
- タスクの自動化: 自動コード分析、デバッグ、テストのフレームワークは、開発プロセスの早期にエラーを特定し、ソフトウェアの信頼性と安全性を高め、こういったタスクに必要な開発者の作業時間を短縮できます。
AI ソフトウェア・ソリューション
AI は、膨大な量のデータとデータの流れを分析することで、新しい小売店舗に最適な立地を明らかにしたり、機械の重大な故障を予測したり、潜在的なリスクと拡大しつつある脅威を突き止めたりできます。AI に特定のタスクを実行させて組織の回復力、収益性、革新性を高めるには、数多くの AI ソフトウェア・ツールとコンポーネントが必要です。
一般的に、データ・サイエンティストとソフトウェア開発者が採用する AI ソフトウェア・ツールは、次の 3 つの主な機能を提供します。
- リソース管理の最適化: AI はリソース集約的です。AI 推論を実行するには膨大なコンピューティング・パワーが必要であり、ハードウェア・インフラストラクチャーと使用するエネルギーの両面でコストがかかります。パフォーマンス・ライブラリー、コンパイラー、カーネルは、リソース管理とコードの効率を最適化することで、ハードウェアの性能を活かし、ソフトウェア・アプリケーションのパフォーマンスを向上させるために使用されます。
- AI ワークフロー・プロセスの簡素化: AI ライブラリー、ツール、フレームワークは、AI ワークフローのプロセスを高速化および効率化するために使用されます。ライブラリーは、モデルの構築およびトレーニングに使用する事前構築済みの関数、クラス、モジュールのコレクションを提供します。フレームワークは、データの収集から導入後の AI モデルの管理まで、エンドツーエンドのプロセスを促進するコンポーネントとツールのエコシステムを提供します。
- AI の活用: ROI を高める効率的な AI アプリケーションには、多くの場合、大規模な組織や多数の拠点 (エッジからクラウドまで) にわたる継続的な最適化と管理が求められます。AI プラットフォームおよびマシンラーニング運用 (MLOps) ツールと原則は、AI の管理をエンドツーエンドで一元化し、部門横断的なチームの生産性向上を支援します。
AI パイプライン向けの AI ライブラリー、ツール、フレームワーク
AI イニシアチブにおいて最も重要な要素は、トレーニングと開発に適したデータを用意することです。実際に AI ソフトウェア開発では、データの調査、クリーニング、準備に最も多くの時間が費やされています。一般的なライブラリーとライブラリー・アクセラレーターは、データ構造を提供し、データの操作、分析、演算を可能にするために使用されます。
モデルの開発とトレーニングには非常に多くの時間とリソースが必要です。開発者がプロセスを簡素化および高速化する追加のライブラリーとツールを使用しているのは、このためです。選択されるツールは、AI モデルの種類とその目的によって異なります。
AI モデルと推論を導入する方法と配置の選択は、AI イニシアチブの長期的な成功に大きな影響を与えます。AI ワークロードの配置は、コストの管理、データの保護、応答時間の要件を満たすために最適化する必要があります。導入と最適化の段階では、ML モデルを最適化および高速化し、さまざまなハードウェアおよびソフトウェア・プラットフォームで効率的に実行できるようにするために、多数の推論エンジン、コンパイラー・フレームワーク、ツールキットが必要です。
AI ソフトウェア開発での前進
事前構築済みのモデルとリファレンス・キットにより開発を高速化
基礎モデルという既存の AI モデルは、AI 機能開発の出発点となります。基礎モデルの微調整は、ゼロからモデルを構築するよりも簡単かつ迅速に行えるため、競合他社に先んじるために急いでいる企業は貴重な時間を節約できます。
AI リファレンス・キット (特定のユースケース向けに設計され、一般的なフレームワークとライブラリー向けに事前最適化されている無料のオープンソースのリソース) も利用できるので、開発者とデータ・サイエンティストはモデルのプロトタイプを迅速に作成し、コンセプトからデモへと素早く移行するのに役立ちます。
生成 AI 開発の新たな方法
検索拡張生成 (RAG) は、追加のモデルのトレーニングを必要とせずに、生成 AI から迅速に価値を引き出す方法を提供します。RAG の手法では、基礎となる大規模言語モデルを特定のナレッジベースに接続し、関連するコンテキストと情報を統合します。
AI に必要なものが揃っているプラットフォーム
AI 開発、トレーニング、導入を効率化するツール、厳選されたデータセット、事前トレーニング済みモデル、API、ライブラリーの完全なエコシステムを提供する AI ソフトウェア・プラットフォームが数多く用意されています。