人工知能 (AI) 向けフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ (FPGA)

FPGA の独自の特性が、エッジ、データセンター、クラウドにおける AI の実現にどのように役立つかをご覧ください。

重要ポイント

  • FPGA は、再構成可能なコンピューティング・コンポーネントであり、AI ワークロードを高速化するために使用できます。

  • FPGA は、エッジ、データセンター、クラウドにおける AI の実現に重要な役割を果たします。

  • AI ソリューションに FPGA を活用することで、将来的な柔軟性を維持しながら、電力効率、I/O、パフォーマンスの最適化に役立ちます。

  • FPGA を使用する AI のユースケースは、事実上あらゆる業界にわたっており、組込み機器と AI サーバーに導入できます。

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FPGA とは

FPGA は、コンピューティング・コンポーネントの一種であり、さまざまな目的に対応するよう再プログラミングできます。CPU や GPU などの処理テクノロジーと比較すると、FPGA はより汎用性が高く、幅広いユースケースに合わせて再構成できる機能を備えています。FPGA は、速度、プログラマビリティー、柔軟性の組み合わせにより、カスタムチップの開発にかかるコストと複雑さを伴わずにパフォーマンスを実現します。

AI 分野では、FPGA はエッジからクラウドまでの AI ワークロードを実現する AI アクセラレーターAI プロセッサーとして使用されます。FPGA 内の相互接続性は、人間の脳にある神経の配線に似ています。FPGA 内のプログラマブル・ロジック・ファブリックも同様に接続されており、FPGA がニューラル・ネットワークやその他の AI ワークロードの優れた実装対象である理由の 1 つです。FPGA は、CPU と組み合わせて導入され、AI アプリケーション全体の成功に不可欠な特定の機能を処理します。

AI における FPGA の役割

FPGA は、クラウド、データセンター、エッジで AI アプリケーションをサポートするために使用されています。メモリー・バッファリングを排除し、I/O ボトルネックを克服するための効果的なツールで、AI システムのパフォーマンスにおいて最も制限的な制約となっています。データの取り込みを加速することにより、FPGA は AI のワークフロー全体を高速化することができます。

FPGA は、さまざまな産業、医療、試験および計測、航空宇宙、防衛、自動車などのアプリケーションにおけるエッジ AI に最適です。AI サーバーと組込みデバイスの両方に導入可能で、さまざまな高度なユースケースを強化します。ソリューション設計に FPGA を使用すると、I/O プロトコルの堅牢なサポート、低レイテンシー、低消費電力、長い導入寿命など、エッジでの多様なデータニーズをサポートするのに役立ついくつかの利点が得られます。

さらに、FPGA は、AI アプリケーション向けのネットワーキングにも使用されています。AI をサポートするためには、ネットワークはエッジデバイス、クラウドサービス、その他の相互接続コンポーネント間の迅速なデータ転送と通信を促進する必要があります。これを可能にするために、FPGA は最新世代の高速 I/O 標準を搭載し、無線および有線ネットワーキングでの使用を加速するために活用できます。また、ネットワークに AI 支援型機能を追加して、異常検出、ワイヤレス・チャネル推定、ワイヤレス・デコーダー・コンバージェンスなどの新たなアプリケーションをサポートすることもできます。

一方、クラウドおよびデータセンター環境では、データベース、ゲノミクス、ネットワーキングの高速化や、大規模言語モデル、対話型 AI、推奨システムなどの AI 推論タスクの最適化に FPGA が適用されています。また、異常検出、金融詐欺検出、高速取引などのニューラル・ネットワーク・アプリケーションにも使用されています。このような高性能なデータセンター環境では、FPGA の高い電力効率は、冷却コストの削減に役立ち、より環境に優しい AI テクノロジーの開発をサポートします。

AI 向け FPGA のメリット

FPGA を AI に使用すると、次のような多くのメリットがあります。

 

  • 新しい機能を簡単かつ効率的に追加: FPGA を使用することで、設計者は既存のワークロードに、ディープ・パケット・インスペクションや金融詐欺検出などの AI 機能を追加できます。さらに、FPGA は、チップを追加することなく、セキュリティー、I/O、ネットワーキング、または前処理 / 後処理機能を追加できます。
  • 高スループットと低レイテンシーで優れたパフォーマンスを実現: FPGA は、CPU を介してビデオを FPGA に直接取り込むことで、ビデオ・ストリーミング、文字起こし、行動認識などのリアルタイムのアプリケーションに対し、本質的に低レイテンシーと確定的レイテンシーを提供できます。設計者は、ゼロからニュートラル・ネットワークを作り上げ、モデルに最適な FPGA を構築できます。
  • 本質的な柔軟性により ROI を改善: FPGA チップ内の回路の内容は固定されていないため、必要に応じて再プログラミングできます。これにより、最もコスト効率の高い、利用可能なハードウェア・オプションの 1 つとなります。さらに、AI 以外の用途にも使用できます。追加の機能を同じチップに統合することで、設計者はコストとボードの占有面積を節約できます。FPGA は長い製品寿命を持ち、FPGA を搭載したハードウェア設計の場合、製品寿命を数年または数十年単位で伸ばします。この特性により、産業、防衛、医療、自動車市場での使用に最適です。
  • 消費電力を削減: FPGA を使用することで、設計者はアプリケーションに合わせてハードウェアを微調整でき、電力効率の要件を満たすことができます。また、FPGA は、複数の機能に対応し、チップからより多くの電力効率を発揮します。FPGA のチップ全体ではなく、機能に合わせて FPGA の一部を使用することができるため、FPGA は複数の機能を並列で実行できます。
  • I/O の最適化: FPGA は、カメラ、LIDAR、オーディオセンサーなどの複数のセンサーからのデータ入力を処理する際に力を発揮します。この機能は、自動運転車両、ロボット、産業機器の設計にとって非常に貴重です。

FPGA に関する課題

FPGA を使用する際に障壁となり得るものの 1 つとして、ハードウェアには通常、専門的なプログラミングと専門知識を要する点があります。この課題に対処するために、ソフトウェア・ベースの FPGA プログラミング・モデルが使用され、必要な専門知識の量を削減しています。これらの高レベルのプログラミング・モデルにより、データ・サイエンティストやモデル開発者は、TensorFlow や Caffe などの共通 AI フレームワークを使用してニューラル・ネットワークを作成し、FPGA のアーキテクチャーの詳細を知らなくてもそれを FPGA 上に展開できます。

FPGA AI ソリューション

AI 向け FPGA は、さまざまな業界における多くのユースケースを実現するために使用されています。

 

  • 医療およびライフサイエンス: 適用分野には、医療用モニター、X 線機器や内視鏡などの画像認識と物体検出機能を備えた 2D 診断機器、その他の種類の病理学的検出、ゲノムシーケンス、手術用ロボットなどが含まれます。
  • 軍用および航空宇宙産業: 用途には、無人航空機 (UAV)、ターゲット検出、レーダー検出および分類などが挙げられます。
  • 産業機器アプリケーション: FPGA は、エッジで AI ベースの検出とリアルタイム制御を追加します。
  • オーディオビジュアル・アプリケーション: 例としては、自動パンニングとズーム機能を備えた顔検出機能付きビデオ会議用カメラや、正確なフォーカス機能を備えた自動顔検出機能付きスタジオ用カメラなどが挙げられます。
  • ブロードキャスト・ビデオ: 用途には、標準的なダイナミック・レンジからハイダイナミック・レンジへの変換、ビデオ解像度間のインテリジェントな変換、可変フレームレートのビデオ・キャプチャーと表示などが挙げられます。
  • コンシューマー向けアプリケーション: 例えば、ステレオ画像処理のための視線検出および追跡機能付き 3D ディスプレイなどです。
  • 車載アプリケーション: 用途には、自動運転車における物体検出やインフォテインメント・システムの制御およびカスタマイズなどがあります。