組立てラインのロボットアーム

エッジ・コンピューティングとは?

端末近くのサーバーでデータを分散処理するエッジ・コンピューティングはより多くのデータを高速で処理することが可能です。

エッジ・コンピューティングの要点

  • 強力なエッジ・コンピューティングをデータが生成される場所により近いところへ移行することにより、企業やサービスプロバイダーは新しい収益機会を識別し、革新的なサービスを提供し、運用における時間と費用を節約できます。

  • エッジ・コンピューティングは、データ処理のレイテンシーを削減し、レスポンスの速度を向上し、ネットワーク・トラフィック管理とセキュリティーおよびプライバシーに関する管轄区域の要件との整合性を向上させます。

  • エッジ・コンピューティングは、分散型コンピューティング・アーキテクチャーの一部にしかすぎず、相互運用可能なエッジツークラウド・ソリューションを設計する際、エッジデバイスからオンプレミスのエッジ、ネットワーク、クラウドまでのインフラストラクチャーの検討を必要とします。

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エッジ・コンピューティングとは?

エッジ・コンピューティングは、データが生成される場所により近いところでデータの処理、分析、保存を行い、迅速でほぼリアルタイムの分析と応答性を実現します。近年では、データストレージとクラウド内の処理を一元化することで、運用を統合する企業もあります。しかし、スマート化が進む倉庫や在庫管理のソリューション、ビジョンが強化されたロボットによる製造ライン、スマートシティーの高度な交通管制システムなど、膨大な分散型デバイスによる新しいユースケースが生成するデータ量の増加が、クラウドへデータを集約するモデルでの、データ処理を難しくしています。
例えば、わずかな遅延が大きな事故につながる、車の自動運転のように膨大なデータを高速で処理する必要がある場合は、エッジ・コンピューティングによるほぼリアルタイムでのデータ処理の重要度は高くなります。

さらに、スマートカメラ、モバイル POS キオスク、医療センサー、産業用 PC などモノのインターネット (IoT) デバイスから、ゲートウェイおよびコンピューティング・インフラストラクチャーまで、データソースでのより高速でほぼリアルタイムの実用的なインサイトのためのエッジデバイスの使用の増加は、生成され、収集されるデータの量における飛躍的な成長を促進しています。

2025年までに、全データの 75% はデータが集約されるデータセンターではなく、その外側で生成されると推定されています。1 さらに言えば、現在企業が収集している全てのデータの約 90% は、再利用されることがありません。2 エッジ・コンピューティングは、デバイスから収集されるデータから、ハイパフォーマンス・プロセッシング、低レイテンシーな接続、安全なプラットフォームを通してメリットを得るための、有効なソリューションなのです。

2025年までに、データの 75% は今日ほとんどの処理が行われている中央データセンターの外側で生成されると推定されています。1

エッジ・コンピューティングが注目される理由

ネットワーク経由でデータを集約し、処理、分析、保存だけでなく、そうしたデータを利用してシステムやアプリケーション、IT サービスを実行し、データの送信などを行うクラウド・コンピューティングでは、ネットワークの帯域幅や処理能力を増やしたとしても、接続されたデバイスから送られるすべてのデータを処理し、リアルタイムでのレスポンスを返すことは困難です。しかし活用が進む AI や自動運転、自律走行するロボットなど、収集したデータのより高速な処理や分析、低レイテンシーなレスポンスへの需要は高まっています。そのため、データが生成される場所の近くで、高速かつほぼリアルタイムでの対応が可能なエッジ・コンピューティングが注目されているのです。

クラウドにおける課題の主要な要因には次のようなものがあります。

  • レイテンシー。より多くの業界が、迅速な分析と応答を必要とするアプリケーションを実装しています。クラウド・コンピューティングだけでは、これらの需要に追いつくことはできません。なぜなら、データソースからのネットワークの距離により生じるレイテンシーが、非効率性、待ち時間、質の悪い顧客体験の原因となるからです。
  • 帯域幅。企業がエッジデバイスの数や生成するデータの量をネットワーク上に増加し続けるにつれ、クラウドへデータを送信するコストは、加速度的に増大し非現実的なレベルに到達する可能性があります。そのため、データをエッジで処理、保存、分析することでデータ量を軽減したうえで、伝送帯域幅を追加したり、処理能力を向上する必要があります。
  • セキュリティーとプライバシー。個人の医療記録や企業における機密データをエッジで保護し、インターネット上では最低限のデータのみを取り扱うことで、データが傍受されるリスクを軽減するなど、セキュリティーを向上させることができます。加えて、一部の政府機関や機密情報を取り扱う業種においては、データを生成された場所から別の区域に移動させることを制限している可能性があります。国や地域によってはヘルスケア分野などで、個人データの保存場所やデータ送信が法律などで制限されている場合もあります。
  • 接続性。エッジからの迅速なデータ転送とサービス提供のために高帯域幅で低レイテンシーな接続を提供する 5G などのネットワーク接続のテクノロジーにより、エッジツークラウド・コンピューティングが実現されていますが、物理的な故障をはじめとしたさまざまな要因で発生する、継続的なインターネット接続の欠如は、クラウド・コンピューティングの障害となります。
  • AI。企業では、ほぼリアルタイムに対応可能なインテリジェンスによる、これまで手付かずだったデータを活用したいというニーズが高まっています。処理を高速化するには、よりデータに近い場所へ AI を配置する必要があります。

エッジ・コンピューティングのメリット

データ処理や保存、分析などの機能をクラウドからエッジシステムへ移行することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 高速化と低レイテンシー化: データ処理や分析をエッジに移行することでデータ移動に要する時間を削減し、自動運転車の操作などほぼリアルタイムの対応が必要なアプリケーションに欠かせない、より速いトランザクションとシステム反応の高速化を実現できます。
  • ネットワーク・トラフィック管理の改善: クラウドに送られるデータ量を最小化することで、ネットワークの効率が向上するだけでなく、データをネットワーク経由で送信、保存するための帯域幅やコストも抑えることができます。
  • 信頼性の向上: ネットワークが 1 回に送信できるデータの量は限られています。インターネットへの接続が不安定な場所では、クラウド接続が中断した場合に備え、エッジ側でデータを保存、処理することで、システムの信頼性を向上できます。ネットワークで障害があっても、エッジで処理が継続できるため、サービスの継続性を確保できます。
  • データ・セキュリティーの強化: エッジ・コンピューティングは、データをローカルで処理するため、クラウドにデータを送信するために、インターネットを経由する必要が無くなります。これにより、データ・プライバシーの保護やセキュリティーを強化できます。

エッジからクラウドへ

エッジ・コンピューティングは、組織がデータの価値を引き出すためのこれまでにない機会を提供しますが、クラウドは引き続き中央データレポジトリーおよび処理センターとして不可欠です。次の画像は、データの収集、処理、保存、およびネットワーク接続のための各デバイスがどのように組み合わさり、企業が各ポイントにおいてデータを最大限に活用するのに役立つかを示しています。

IoT およびエッジ・コンピューティングのデバイスは、データを収集し、それを 2 つの主要な方で管理します。一つ目は、内蔵プロセッサー搭載のインテリジェント・エッジ・コンピューティングのデバイスが、オンボードの分析や AI のような高度な機能を提供する方法です。もう一つは、プロセッサーを搭載しないデバイスが、生成するデータをオンプレミスのエッジに導入されているサーバーに送り、保存や分析を行う方法です。オンプレミスにあるエッジサーバーは、エッジにあるデバイスからのデータを処理し、ほぼリアルタイムのアプリケーションに必要な情報をデバイスへと返信したり、データの関連性の高い部分だけをクラウドへ送ります。どちらも、多数のエッジ・コンピューティング・デバイスからのデータを統合して、クラウドでより広範な処理や分析を実行できます。

エッジ・コンピューティングのユースケース

インテルは多くの業界パートナーおよびエンドユーザーと提携し、さまざまなエッジ・コンピューティング・ソリューションの導入を支援しています。次の 4 つのエッジ・コンピューティングのユースケースは、企業が新しい体験を可能にし、より効率的な運用を推進するために、インテルがどのように支援しているかを示しています。

小売: エッジ・コンピューティングは、センサーとカメラを使用して小売在庫の正確性を向上し、サプライチェーンと製品開発をより効率的にするのに役立ちます。さらに、エッジ・コンピューティングは、ほぼリアルタイムでの顧客行動の分析をサポートし、買い物体験を向上し、潜在的により安全にします。例えば、Sensormatic ビデオベースの AI ソリューションは、収容人数を追跡し、ソーシャル・ディスタンスを監視することで、新型コロナウィルス感染症パンデミックの間に小売店が安全に開店するのに貢献しました。
産業: エッジ・コンピューティングは、より柔軟で応答性の高い製造のために、デジタルおよび物理的なテクノロジーを統合することで、インダストリー 4.0 の基盤を提供できます。例えば、インテルと Nebbiolo Technologies は、Audi の自動車製造エンジニアと提携し、予測分析とマシンラーニングのアルゴリズムを使用するスケーラブルで柔軟なプラットフォームを作成し、溶接検査の作業効率を向上させ、重要な品質管理プロセスを強化しました。
教育: 一部のソフトウェア・ベースの教育ソリューションでは、パーソナライズされたバーチャル支援、自然言語対話、拡張現実体験に向け、オンデバイスの AI を使用します。例えば、ViewSonic デジタル・ホワイトボード体験は、エッジおよびビジョン・テクノロジーを使用して、遠隔学習に参加する学生や教師のための教室体験を再現します。
医療: エッジ・コンピューティングは、入院患者と外来患者の監視と遠隔医療サービスによる結果を変換し、画像処理装置のマシンおよびディープラーニング推論を使用して健康上の問題をより速く検出するのに役立ちます。Philips は AI 推論を改善し、高価な新しいハードウェアの必要なしに、既存の CT スキャン装置において医用画像を 188% 向上させました。3

アプリケーションにおけるエッジ・コンピューティング・テクノロジー

インテル IoT ジェネラル・マネージャー (当時) のスティーン・グラハムは、「The Inside Edge」で、ヘルスケアから製造、小売におけるエッジ・コンピューティングの現実世界のアプリケーションについて説明し、インテル搭載のエッジ・コンピューティング・ソリューションが、どのように顧客に新しい体験を実現し、業界全体を変革したかについて言及しています。

エッジで得られるより良い成果

エッジ・コンピューティングは、企業やサービスプロバイダーがデータの価値を引き出すためのこれまでにない機会を提供します。適切なパートナーにより、企業はあらゆるポイントにおいてデータを最大限に活用できます。真の価値を創造する数万のエッジ導入事例、数百の市場対応ソリューション、規格に準拠したテクノロジー、そして世界で最も成熟した開発者のエコシステムを擁するインテルが、インテリジェント・エッジを現実のものにする支援をします。

よくある質問 (FAQ)

よくある質問

エッジ・コンピューティングとは、ネットワーク内のデータが生成される場所により近いところでデータの処理、分析、保存を行うことを指します。これにより、迅速でほぼリアルタイムの分析とレスポンス、データ収益化の可能性の創造、新しいサービスの提供、運用にかかる時間と費用の節約を実現します。エッジ・コンピューティングを推進する 5 つの主要な要因は、レイテンシー、帯域幅、セキュリティー、接続性、そして AI です。

ネットワーク・エッジは、ネットワーク内のネットワーク・コアのすぐ外側に位置し、地域のデータセンター、次世代セントラルオフィス (NGCO)、固定の有線アクセスポイント、ワイヤレス・アクセス・ベース・ステーション、および無線アクセス・ネットワーク (RAN) などの場所を統合します。

エッジ・クラウド・コンピューティングは、特定の種類のワークロード向けに、エッジ・コンピューティングでクラウド・コンピューティングを強化します。エッジ・クラウド・コンピューティングにより、エッジサーバー上にホストされ、マイクロデータ・センターとして機能するエッジクラウドは、データの収集、保存、高速データ処理のためにインテリジェントなエッジノードをローカルデバイス、機器、リソースにより近い場所へ配置することでクラウドの利便性をエッジ・ネットワークに拡張します。これにより、ほぼリアルタイムのデータに依存するエッジ・アプリケーションのためのレイテンシー削減につながります。