AI アクセラレーターとは
今日の AI コンピューティングのタスクの多くは、望ましい結果を得るために、追加の専用 AI 処理機能を必要とします。
こうした新たな需要に対応するため、技術者は AI アクセラレーターを活用しています。AI アクセラレーターには、ソリューションの設計に個別のハードウェアが組込まれたものと、CPU に内蔵された機能があります。いずれのタイプの AI アクセラレーターも、AI ワークロードのパフォーマンスを大幅に強化します。AI アクセラレーターは今日の IT および AI 分野全体にわたって採用されており、クライアント・コンピューティング・デバイス、エッジ環境、およびあらゆるタイプのデータセンターで使用されています。
ディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターは、並列コンピューティング・モデルで CPU とともに使用されることが最も一般的ですが、一部のテクノロジーはスタンドアロン・アーキテクチャーでも使用できます。市販されている製品の中には、CPU / アクセラレーターを単一のパッケージとして提供しているものもあります。
統合 AI アクセラレーターは、最新の CPU において AI を実現するために重要な役割を果たします。内蔵機能は、ベクトル演算、行列数値演算、ディープラーニングなど、特定の機能や演算に最適化されたパフォーマンスを提供します。場合によっては、専門のハードウェアを必要とせず、統合 AI アクセラレーターだけで AI を実現できます。
要求の厳しいユースケースで、大規模なスループットとレイテンシーのニーズをサポートする必要がある場合、設計者と開発者は、両方のタイプの AI アクセラレーターをソリューション設計に含めます。
AI におけるディスクリート・ハードウェア・アクセラレーターの役割
ディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターは、CPU の機能を強化し、負荷の高い AI ワークロードを処理するために用いられるのが最も一般的です。このアプローチは並列コンピューティングと呼ばれるもので、2 つのコンピューティング・ユニットが連携することで複雑な問題に対処できます。CPU とディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターを連携させることにより、並列コンピューティングを活用して、AI ワークロードの処理時間を大幅に短縮できます。場合によっては、ディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターを CPU と連動させることなく、単独で使用できます。
ハードウェア AI アクセラレーターの種類
ハードウェアの観点からすると、AI アクセラレーターという用語は、AI 向けグラフィックス・プロセシング・ユニット (GPU)、AI 向けフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ (FPGA) などの汎用コンポーネントと、ニューラル・プロセシング・ユニット (NPU) やテンソル・プロセシング・ユニット (TPU) などの AI に特化した製品を指します。
AI アクセラレーターと AI プロセッサーについて論じる際は、これが発展中の分野であり、ベンダー固有の用語が多数存在するという点に注意することが大切です。これらのテクノロジーの多くにおいて、一般的な記述や標準的な言語はまだ登場していません。
GPU
多くの人は GPU というとゲームや高度な 3D レンダリング・タスクを思い浮かべますが、AI ワークロードでも強力なアクセラレーション機能を発揮できます。GPU は、最も広く使用されている、手頃な価格のハードウェア AI アクセラレーション・テクノロジーの一つです。GPU は、マシンラーニング、ディープラーニング、コンピューター・ビジョンなどの AI アプリケーションを強化するために使用されています。
FPGA
FPGA は、特定のニーズに合わせてハードウェア・レベルで再プログラミングできるという点で CPU と異なる特徴があり、時間の経過とともに需要が変化するなかで、優れた汎用性を提供しています。
FPGA は、AI パフォーマンスを向上させるために、並列コンピューティング・アーキテクチャーで使用されます。多様な I/O プロトコル、低レイテンシー機能、低消費電力、長い導入寿命などが求められるエッジ AI に特に適しており、産業、医療、テストおよび計測、航空宇宙、防衛、自動車といった用途に最適です。FPGA は、ネットワーキングやデータセンターのユースケースをサポートするためにも使用できます。
NPU
ニューラル・ネットワーク運用向けに構築された NPU は、ディープラーニング・アルゴリズムを高速化する専門ハードウェア AI アクセラレーターです。CPU や GPU と比べ、NPU は AI にとって非常に効率的な選択肢です。また、高速性と高帯域幅を備えているため、画像の高速生成や音声コマンドへの応答など、動きの速いワークフローへの統合に最適です。
専用の AI アクセラレーター
FPGA、GPU、NPU 以外にも、さまざまなユースケースにおいて強力で特化型の AI パフォーマンスを実現できるさまざまな独自のシリコン製品が市場に出回っています。こうした専用の処理ソリューションは、スタンドアロン・アーキテクチャーに導入されたり、この記事で言及している他のアクセラレーターのように、CPU 機能を強化するために使用されたりすることがよくあります。
ディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターのメリット
ディスクリート・ハードウェア AI アクセラレーターは、AI ワークフロー全体にわたりメリットを提供し、AI の取り組みの価値実現までの時間を短縮できます。
電力効率
サステナビリティーと電力使用量は、AI の取り組みにおける重要な懸念事項です。ハードウェア AI アクセラレーターは、AI のパフォーマンスを単一のデバイスに詰め込んでいるため、組織はこれを使用することで、より少ないノードで AI に必要な計算能力を提供できます。こうしたフットプリントの削減は、エネルギー消費の削減につながります。
パフォーマンスの加速
AI から迅速なインサイト、応答、およびトレーニングの結果を得るには、レイテンシーを最小限に抑え、処理時間を早める最適化されたコンピューティングが必要です。ハードウェア AI アクセラレーターは、AI ワークロードに求められる特化的なコンピューティング機能を提供することにより、AI の出力を高速化し、ビジネスの成果を向上させます。
拡張性
多くのアクセラレーター、特に専用の AI ハードウェアは、複雑な AI ワークロードに求められる大規模環境に最適な追加機能を提供します。このスケーラビリティー機能には、メモリー容量や多数の大容量イーサネット・ポートなどが含まれており、大規模な AI や HPC システムにおける接続性のニーズを満たすために役立ちます。
AI における統合アクセラレーターの役割
統合 AI アクセラレーター・エンジンは、特定の AI ワークロードや業務の種類などに応じて最適化された AI パフォーマンスを提供する、CPU 内蔵機能です。AI のパフォーマンスを高速化するため、CPU のアーキテクチャーに NPU を統合することもできます。
統合 AI アクセラレーターは、ソリューション設計に専門ハードウェアを追加する必要性を軽減するため、パフォーマンス要件を満たしつつも、無駄を省いたコスト効率の高い AI を導入したい人々にとって優れた選択肢です。統合 AI アクセラレーターは、自然言語処理、推奨システム、画像認識、生成 AI、マシンラーニングなど、エッジからクラウドに至るまで、多数の AI ワークロードを強化するために使用できます。
統合 AI アクセラレーターのメリット
トレーニングから推論まで、統合 AI アクセラレーター・テクノロジーは、スタンドアロン CPU アーキテクチャーにより AI で優れた成果を得られるよう組織を支援します。
AI パフォーマンスを最適化
内蔵の AI アクセラレーションにより、CPU は多くの AI ユースケースにおける高度なパフォーマンス要件を満たすことができます。
ハードウェア・コストを削減
統合アクセラレーターは、ハードウェアのフットプリントを最小限に抑えつつ、組織が AI を実現できるようにします。内蔵機能により、組織はディスクリート・アクセラレーターに投資することなく、多くのトレーニングと推論ワークロードを実行できるので、最終的にはより効率的な AI ソリューション設計につながります。
電力効率を向上
内蔵アクセラレーターは、ワット当たりパフォーマンスを大幅に向上させ、消費電力を削減し、AI の環境への影響を最小限に抑えます。
開発を簡素化
統合 AI アクセラレーションを活用することで、ソリューション・アーキテクトは、専用ハードウェアによって生じる複雑さを回避できます。また、コーディングやアプリケーションの変更も最小限に抑えられます。
AI アクセラレーター・ソリューション
AI の採用が増加しているということは、AI アクセラレーターがテクノロジー分野のあらゆるレイヤーに導入されていることを意味します。
- エンドユーザーのデバイスでは、AI ワークロードのパフォーマンスを向上させるために、GPU と統合 NPU が一般的に使用されています。
- エッジにおいては、FPGA が柔軟性と効率性のメリットを提供しており、AI の機能をより多くの場所に広げられるよう後押ししています。
- データセンターにおいては、GPU と専用 AI アクセラレーターの両方が大規模に使用されており、金融モデリングや科学研究など、非常に複雑な AI ワークロードを動かしています。
- 統合 AI アクセラレーターは、一部の CPU 製品で利用可能であり、エッジ、データセンター、クラウド、クライアント・コンピューティングにわたる選択肢があります。
AI が普及し、高度化するにつれて、どちらのタイプの AI アクセラレーターも、次世代の機能をサポートする上で重要な役割を果たし続けるでしょう。