インダストリー 4.0 を見据えた学生教育
第 4 次産業革命 (インダストリー 4.0 または 4IR) は、現代において最も大きな責務を教師に与えました。それは、学生ひとりひとりの可能性を引きだし、テクノロジーに支えられたイノベーションによって未来を形作るために必要なスキルを学生が習得できるように、教育戦略を進化させることです。
これまでの産業革命を考える上で重要なのは、職場のニーズと教育の相関関係に注目することです。第 1 次産業革命では、水と蒸気の力で発電した電力で製品を生産していたため、肉体労働が求められていました。第 2 次産業革命では、高等教育を受けた熟練労働者により、電気と組み立てラインを利用した大量生産が行われていました。第 3 次産業革命では、コンピューター、データ、情報技術 (IT) を活用して、スマートマシンとそれらをプログラムできる人々が登場し、生産が自動化されました。
第 4 次産業革命とテクノロジー
現在の第 4 次産業革命では、人工知能 (AI)、モノのインターネット (IoT)、スマート・ファクトリーを活用して製品を生産することで、現実社会とデジタル社会が融合しつつあります。今日では、コンピューターやロボットがルーチン作業、日常的な作業、反復作業、危険な作業を任されるようになりました。これにより、労働者は戦略的な意思決定、問題解決、コミュニケーション、管理活動に集中することができます。結果として、人間と機械が隣り合わせで働くようになりました。テクノロジーとイノベーションに支えられた新たな仕事も生まれています。機械による労働者の支援が広がるにつれて、テクノロジー・システムを利用するための資格やスキルを持つことがますます重要になります。
このような変化の影響は、工業、製造、農業、生産などに限らず、あらゆる分野に及んでいます。医療、金融、科学、テクノロジー、マーケティング、ヘルスケア、教育など、ほぼすべての専門分野において先進技術を取り入れるようにシフトしています。
今日の学生には、このような変化に適応するだけでなく、クリエイティブな問題解決とオープン思考によって変化を形成する能力が求められています。オープン思考とは、常にクリエイティブであること、クリエイティブに意思決定を行い、行動を完了すること、ひいては次のクリエイティブな思考の波を引き起こすことです。失敗は学ぶための機会に過ぎません。オープン思考は、特にエクスポネンシャル思考を適用したテクノロジーと組み合わせた場合、学生が社会に専門的価値を提供することを可能にし、また、テクノロジーを新たな手法で最大限活用することも可能にします。
したがって、第 4 次産業革命における教育とは、教育戦略を進化させなければならないことを意味します。学生は、与えられたカリキュラムのトピックを覚えて理解するだけではなく、教室で学んだことを使って応用し、分析し、創造する方法を学ぶように、教育を変えていく必要があります。パーソナライズされた学習はゴールではなく、これらの成果を獲得するための手段です。ゴールは、これまで想像もしなかったような方法で問題を解決できるテクノロジー・ツールを使って、学生の能力と問題解決スキルを育成することです。
例えば、ブルームの目標分類学は、教育者がさまざまなレベルの思考、学習、理解を定義し区別するために使用する階層的な分類システムです。認知の各レベルは、学習レベルに対応しています。ブルームの目標分類学を使用する目的は、低レベルの論理展開能力を積み重ねていくことで、学生の上位思考を促すことです。
教師は、ブルームの目標分類学やテクノロジーを利用したその他のアプローチを採用することで、個別指導により多くの時間を確保しながら、最適な創意工夫、イノベーション、収束的思考を体験することができます。学生が未来の労働者としての役割を果たせるようにするのではなく、将来の職場で自主的に考え、自身の未来をデザインできるようにすることが重要です。
パンデミックは、他の社会的要因と同様に、教育にも影響を与えました。教育の継続性、関連性、回復力を最大限効果的に活かすためには、優先順位を考え直す必要があります。基本的に、未来の仕事を革新し形作るためには、テクノロジーとより高度な創造的思考スキルを組み合わせる必要があります。
私たちの学習システムでは、若者たちが絶えず発展している世界でつながり繁栄するためには、何が重要なのかというビジョンを自身で描けるよう促し、そのビジョンを追求するスキルを身につけさせる必要があります。」1
今日の教師は進行役
第 4 次産業革命に向けて学生を指導するには、教師が個人の専門知識の枠を超えて学習の進行役へと変わっていく必要があります。テクノロジーを活用することで、学生が柔軟にスキルを身につけ、情熱を追求できるようにしてあげるべきです。大勢の学生の前で講義を行い、学生たちが幅広いプレゼンテーションから価値を見出してくれると期待するのは、今や限界のある教育モデルです。そうではなく、教師は学生が考え、参加するプロセスの中で、彼らに合った学習を手助けするように変わらなければなりません。
教育戦略は進化しており、リモート、ハブリッド、クラス内の状況で機能する教室の新たな基準に適応しています。これらの教育戦略には、次のものが含まれます。
- 反転授業。学生は授業の課題を自宅で行い、教室では実践的な活動に参加します。
- アクティブラーニング。学生に直接参加してもらい、「やってみる」ことで学ぶよう促す指導方法。
- コラボレーション・クラスルーム。学習において積極的な役割を果たすテクノロジーに精通した視覚型学習者にとって魅力的な、学生中心の共有環境を指します。
インテルでは、学生を飽きさせないためのツール、リソース、戦略を盛り込んだe ラーニングのための教育者向けガイドを提供しています。
新しい学習環境の例として、教師はある生徒にはビデオ講義を見せ、別の生徒にはバーチャル学習ラボに参加してもらい、あるグループには同じトピックのプロジェクトで共同作業をしてもらうことが可能です。このような一連の活動は、各学生の所在地に関係なく、同時に行われます。多様な手段があることで、学生はパーソナライズされた学習を行うことができ、必要な時に必要な方法で教師と接することができます。このレベルの多様な学習を実現するには、テクノロジーを活用して効率性とパフォーマンスを高める必要があります。
学習環境の中心となるのは教師と学生ですが、学校管理者もまた、教育テクノロジーの状況を理解し、パーソナライズされた学習を可能にするためのサポート、リソース、テクノロジーへの投資を実施する必要があります。学生が将来雇用の機会を得るための準備を、高等教育、コミュニティ・カレッジ、専門学校に先送りするのは簡単なことです。しかし、職場の要件やテクノロジーは急速に変化しているため、K-12 の学習環境下においても生徒は独習者になる必要があります。
教育戦略とインテル
教育は進化しており、教師が学生ひとりひとりの可能性を伸ばし、明日の世界の革新を担う独習者になるよう指導するのを支援しています。インテル® テクノロジーは、世界と現代の教室を形作っています。
インテルはこの半世紀の間、第 3 次産業革命と現在の第 4 次産業革命においてテクノロジー・リーダーとして活動してきました。その結果、コア・テクノロジーのイノベーションを主導するだけでなく、さまざまな業界や職場で見られる新しいテクノロジーの新しい用途を目の当たりにしてきました。学生とその教育、特に教育テクノロジー (EdTech) に支えられた教育を通して、将来の集団的な労働力に備えることは、もちろん重点的な課題です。
EdTech は、スキル習得の機会に適したテクノロジーを学生に提供します。技術的な進歩は急速に進んでおり、学生はそれに応じて学習のペースを上げる必要があります。EdTech の目的は、学生のコラボレーションの向上、エンゲージメント、有意義な学習をサポートすることです。EdTech を効果的に活用することで、学生のスキルを高め、将来の雇用市場における人材のギャップを埋めることができます。
一方、教師は教室を活性化させるために、より良いデバイス、より良い接続性、管理のしやすさを必要としています。適切な処理能力を備えた周辺ハードウェアを適切に処理するテクノロジーにより、教師はより多くの時間学生と向き合い、教えることができます。テクノロジーによって、教室の最も重要なリソースである教師が、より教育に集中することができるのです。具体的な例を紹介しましょう。
- インタラクティブ・ホワイトボード: すべての学生が質の高い教育を受けられるようにするインタラクティブ・フラットパネル・ディスプレイ
- 人工知能 (AI): 非常に複雑な教育課題の解決、学習パターンの識別、より正確な生徒の行動予測や結果予測を行います
- Intel Unite® ソリューション: 学校で使用されている既存のソフトウェアやハードウェアをサポートし、より魅力的な授業を実現します
テクノロジーだけでなく、インテルはさまざまなフレームワークを通じて、教育の変革を主導する教師をサポートしています。その 1 つが、インテル® Skills for Innovation (インテル® SFI) イニシアチブです。インテル® SFI フレームワークは、教育者や意思決定者がスキルアップの目標を達成するために、積極的で魅力的な学習体験を開発および実施する際のガイドとなるものです。インテル® SFI を活用することで、教育者や意思決定者は自信を持ってテクノロジーをカリキュラムに組込むことができ、テクノロジー優位の今日の世界の課題に対応するために必要なスキルを学生が身につけられるようになります。
インテルでは、教育者がインテル® SFI について学習し、統合するためのリソースを数多く提供しています。インテル® SFI Starter Pack により、教育者や管理者は、学校に学生の高次認識スキルを構築できる新しいテクノロジー・ベースの学習体験を取り込むことができます。このパックは、リモートや教室内での学習に適した実践的なアクティビティーにより、学生がカリキュラム科目に参加し、興味を持つことを支援します。
インテル® SFI イニシアチブでは、教育者はインテル® SFI 専門能力開発スイートにアクセスでき、現職の教師を 4IR に対応できる教師にするための個人開発ツールや授業計画を利用できます。学生の将来に影響を与えるトレンドや学習の成果を最大化するツールについて、教師が常に最新の情報を得られるように設計された、80 時間以上の e ラーニングと対面型ワークショップが用意されています。テクノロジーへの対応や革新的なマインドセットの指導など、そのトピックは多岐にわたります。ステップアップ・モデルは、学習にテクノロジーを取り入れた経験の有無にかかわらず、教育者のニーズに対応できるよう慎重に検討されています。
インテルの別のプログラムであるインテル® Future Skills では、科学、技術、工学、数学 (STEM) の学習を通じて、問題解決と発見について学びます。実際の現場で行われる革新的なプロジェクトに挑戦することで、学生がこれまでとは違う考え方をしたり、早々に失敗を経験したり、成長型のマインドセットを身につけたりするよう促します。学生は社会に出ると、職業選択にかかわらず、テクノロジーの仕組みを理解していることが求められます。さらに、このような学生たちが、推論力と革新力によって世界を形成していくことになります。テクノロジーは、彼らの高度な思考力を支える促進剤です。
学生の最適な学習体験
第 4 次産業革命における教育は、教師と学生に新たな課題と機会をもたらしています。教育の現場では、以下をサポートできるようにテクノロジーが集約されています。
- アクセスの向上
- エンゲージメント
- スキル構築
- パーソナライズされた教育
インテルは、教育者、管理者、政策立案者と協力して、包括的なエコシステムの構築を支援しています。仕事、イノベーション、創造性を通じて私たち集団の未来を形成する今日の学生にとって、最適な学習のサポートは必要不可欠です。
また、インテルは、学生が教室内外で成功を収めるために必要なテクノロジーへのアクセスを妨げている、デジタルデバイドの解消にも取り組んでいます。インテルのオンライン学習イニシアチブは、教育に特化した非営利団体やビジネスパートナーを支援し、テクノロジーにアクセスできない学生にデバイスやオンライン学習リソースを提供するために開始されました。このイニシアチブでは、公立学区との緊密な連携により、PC の寄贈、オンライン仮想リソース、自宅学習ガイド、デバイスの接続支援を実現します。インテルのオンライン学習イニシアチブは、インテルがテクノロジーに対して行ってきた長年の取り組みを基盤としており、そのテクノロジーにより、特にサービスが行き届いていないコミュニティでの学習を改善しています。
インテルの目標は、教師、管理者、学校組織が、学生にパワフルで魅力的で刺激的な学習体験を提供できるようにすることです。