マシンビジョンとは?

マシンビジョンは、産業用機器に視覚、分析、行動の機能を提供し、製品の品質向上、コストの削減、業務の最適化を実現します。

マシンビジョンと AI による産業イノベーションの推進

  • 製造ライン、産業用ロボットおよび機器に、視覚、認識、行動といった機能を提供することで、オートメーションに新たな可能性を生み出し、運用を変革しています。

  • マシンビジョン・カメラと AI によるビジョン処理を組み合わせることにより、生産速度での高性能な欠陥検出が可能になります。

  • インテリジェント・マシンビジョンは、ロボット制御システムに新たなレベルの自律性と、産業用ロボットに高度な自己検査システムをもたらしています。

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マシンビジョンとは?

簡単に言えば、マシンビジョン・テクノロジーは、産業機器に何をしているか「視覚」する機能と、視覚したことに基づいて迅速に判断する機能を与えます。マシンビジョンの最も一般的な用途は、視覚検査と欠陥検出、位置調整と測定、製品の識別・分類・追跡です。

マシンビジョンは、産業用オートメーションの基盤となるテクノロジーの 1 つです。これにより、製品の品質と生産性を向上し、数十年の間、製造と物流の最適化を支援してきました。現在、この実績あるテクノロジーは、人工知能と融合し、インダストリー 4.0 への移行を導いています。

マシンビジョン・システムのアーキテクチャー

マシンビジョンは、産業用オートメーションの最も重要なコンポーネントです。マシンビジョンのシステム・コンポーネントが連携して運用の変革を行う方法については、上記の図をご覧ください。

すべてはどのように始まったのか: 典型的なマシンビジョン・システム

AI とマシンラーニングが導入される前は、機械では「見る」ことが可能でした。1970 年代初頭に、コンピューターは特定のアルゴリズムを使い始め、画像を処理し、基本的な特徴を認識していました。この基本的なマシンビジョンのテクノロジーは、部品の位置調整のために対象物の輪郭を検出し、欠陥を示す色の差異を見つけ、穴開きを示すピクセルがつながった小さな塊を識別することができます。

典型的なマシンビジョンは、人工知能が不要な比較的単純な運用を含みます。テキストは、バーコードのように簡略で、輪郭が明瞭でなければなりません。形状は予測可能なものであり、正確なパターンに適合する必要があります。典型的なマシンビジョン・システムでは、手書きの読み取り、しわになったラベルの判読、またはリンゴとオレンジの識別といったことはできません。

それにもかかわらず、典型的なマシンビジョンは、製造業に大きな影響を与えてきました。機械は疲れることがないため、人間の目よりも素早く、正確に欠陥を検出できます。さらに、機械は人間の視覚の限界に制約されません。専用のマシンビジョン・カメラは、熱画像処理を使用して熱の異常を検出し、X 線により顕微的な欠陥と金属疲労を特定することができます。

人工知能の台頭: ディープラーニング推論と産業用マシンビジョン

ネットワーク・エッジやそれを超えた枠組みでの組み込みデバイスおよび IoT デバイスなどの、ますます強力になったエッジ・コンピューティングは、人工知能 (AI) 向けディープラーニング・モデルの分野が急成長することで、マシンビジョンのできることを急激に拡大しています。このように機能が急速に発達することで、スマート・ファクトリーとインダストリー 4.0 への変革が推し進められています。

AI は、ニューラル・ネットワークと呼ばれるモデルを用いて、従来のコンピューター・ビジョン・アルゴリズムを強化します。コンピューターが画像または画像のビデオストリームを受信する際に、マシンビジョン・ソフトウェアはその画像データをニューラル・ネットワークのモデルと比較します。ディープラーニング推論と呼ばれるこのプロセスは、コンピューターによる織物の非常に小さなパターンのミスマッチや、回路基板の顕微的な欠陥などの非常に微妙な差異の認識を可能にしました。

精度と速度を向上させるために、データ・サイエンティストは、特殊なアプリケーション向けの固有のニューラル・ネットワーク・モデルを作成します。監視トレーニングと呼ばれるこのプロセスでは、コンピューターは数万件のサンプルをレビューし、人間が検出できないパターンを含む、意味のあるパターンを識別します。

ディスプレイのドット欠けや発色の異なるピクセルを検出するモデルがあり、溶接部の空洞を確かめたり、布地の糸引きを指摘したりすることができます。もちろん、それ以外のモデルについても、開発と洗練は常に進められています。

スマート・マシンビジョンと自律型システム

人工知能は、視覚検査や品質管理だけにとどまらず、マシンビジョンを拡大しつつあります。スマート・マシンビジョンにより、ロボットは 3 次元で認識し、ロボット同士で部品を掴み、相互の作業を確認することができます。また、一緒に作業する人間と交信することが可能で、確実に連携した作業を安全に行うことができます。

スマートビジョンを搭載した機械は、自然言語処理を使用してラベルの読み取りや記号の解釈を行うことができます。スマートビジョンを搭載したロボットは、形状の理解や量の計算が可能で、箱詰めや荷物を運搬車に載せることができます。さらに、無駄な空間を最小限にしてコンテナを出荷することすら可能です。

単純なタスクを自動化できる機械から、人間の視覚できる範囲を超えて、自分で考えて要素をより長い期間、最適化できる自律型機械への移行は、新たなレベルの産業革新を促進します。

SF のように聞こえるかもしれませんが、スマート・マシンビジョンが、今日の工場、倉庫、輸送センターの業務において単調な作業を担い、人間の従業員を支援するおかげで、従業員は専門知識を活用して、最も重要な部分に集中することができます。

マシンビジョンのアプリケーション

産業用マシンビジョンは、スマート・マニュファクチャリング、物流、運用の根幹を担っています。マシンビジョン・カメラ、組込み IoT センサー、産業用 PC は、製造プロセスのすべての段階でインテリジェンス、分析、効率性をもたらします。

スマート・マニュファクチャリングにおけるマシンビジョンの利点

マシンビジョンを製造に適用することにより、製品品質とシステム全体の効率の改善、製造ラインのスループットの向上、人件費の削減を可能にし、従業員がより価値の高い作業に集中できるようにします。

インテルや Nebbiolo Technologies と連携したアウディの場合、予測分析と機械学習アルゴリズムを溶接検査と重要な品質管理プロセスに統合することで、1 日あたりの溶接の分析数が増加し、工場の人件費が削減されました。また、それによりアウディは単に問題に対応するだけでなく、問題を回避するために、より積極的な監視を行うように移行することができました。1

「ネッカーズルム工場では、すでに 30% ~ 50% の人件費が削減されいます。」

アウディ Head of Production Planning、Automation and Digitization、Michael Häffner

制約などの規制が厳しい業界では、マシンビジョンを使用して製品の内容、パッケージ、ラベリングを定期的に検査し、品質保証を行っています。サプライチェーンに適用される場合、マシンビジョンはワークフローの各ポイントでアイテムを自動的にスキャンしたり、追跡したりすることができます。これにより、その時点での正確な在庫報告を提供します。

スマート・マニュファクチャリングの詳細 ›

運用におけるマシンビジョンの利点

従業員の健康と安全性を向上させることは、マシンビジョンを運用に適用する上で重要な利点です。AI 搭載コンピューター・ビジョンにより、従業員は確実にソーシャル・ディスタンスを保ち、適切な安全装備を着用することができます。マシンビジョンを搭載したロボットと機器は、人間の行動を解釈し、交信することができるので、事故を未然に防ぐことができます。また、状況が危険な場合、オペレーターに警告したり、機器を自動的にシャットダウンしたりすることで、従業員と企業のリスクを削減できます。

さらに、産業機器やマシンに組み込まれたカメラ、マイク、センサーからのデータを継続に分析することにより、産業用 PC は AI を使用して、故障の発生前に欠陥や摩耗のサインを検出できます。これにより、事前に予防的な修理を計画することができ、予期せぬダウンタイムや長期にわたる保守費用をなくすことができます。

資産管理とセキュリティーの分野では、AI はビデオフィードで対象物を検出および追跡して、適切な使用とストレージを確保し、資産があらかじめ定義された境界を離れた場合、管理システムにアラートを通知します。セキュリティー・カメラ・システムは、建物へのアクセスを制御し、危険な場面を特定するアクティブなセキュリティー・パートナーになります。

AI と産業用 IoT の詳細 ›

インテルが、産業用マシンビジョンに AI をどのように導入しているかをご覧ください。

マシンビジョンと産業用オートメーションは、生産性の向上、品質管理の強化、効率の向上において、すぐに実を結びます。インダストリー 4.0 テクノロジーの基本的なビルディング・ブロックとして、マシンビジョンは製造、物流、運用を変革しています。

最新のマシンビジョンの導入事例を読んで、インテル® ディープラーニングのモデル、ミドルウェア、リファレンス・デザインが、どのように次世代のインダストリー 4.0 を構築しているかについて詳しく説明します。

マシンビジョンの詳細 ›

よくある質問 (FAQ)

よくある質問

マシンビジョンとコンピューター・ビジョンのどちらのシステムも、1 台または複数のカメラをビデオ画像やストリームをキャプチャするために使用し、自動的な意思決定のために処理や分析を行います。システム間の主な違いは、各システムによるデータ処理の深度です。マシンビジョンは、プログラマブル・ロジック・コントローラーを使用して画像を迅速に処理、分析し、簡単な決定を行います。一方、コンピューター・ビジョンは、PC 搭載のプロセッサーを用いてより安定した画像処理を行い、トレンドの識別や予測、より多くの変数の分析に適したものにします。

典型的なコンピューター・ビジョンは、ディスクリート・アルゴリズムを使用して、特定の形を識別します。堅牢で完成度が高いため、見分けやすい対象物の識別に最適です。

AI ベースのコンピューター・ビジョンは、ディープラーニング・モデル (トレーニング済みのニューラル・ネットワーク) を使用して、対象物、欠陥、手書き文字のほか、識別が困難な有機的な形状を識別します。

ロボットは、正確な場所で部品を取り上げるといった個別のタスクを完了するために、プログラムで制御できます。こうしたタイプのタスクでは、ロボットは単に事前計画されたプログラムを実行しています。

カメラや基本的なマシンビジョンを追加することで、ロボットは、2 つの端をそろえたり、単純な欠陥を特定するなど、より高度なタスクを実行できます。

AI をこの状況に追加すると、ロボットは「視覚」を取得し、分析を行い、認識したことに行動を適応させることができます。例えば、溶接ロボットは部品を並べて溶接し、その結果を検査します。