農業におけるビッグデータ

精密農業が切り開く、分析の新たな可能性。

要点

  • 農業は、データによる産業構造の変革をいち早く導入した業界の 1 つです。

  • ハードウェアと分析の活用により、農家は環境に優しい農業を採用し、安全でおいしい作物をより多く収穫できるようになりました。

  • 農家は、他の業界でも達成可能だと専門家が見込んでいるいくつかの目標を、すでに実現しつつあります。

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IoT という言葉を聞いたとき、ネイサン・シュタイン氏の頭にまず浮かんだのは、トウモロコシと大豆でした。天候や土壌の状態に秒単位で反応するこれらの作物は、ノンストップのデータストリームを生み出し、そのデータは、アイオワ州にある彼の農場経営の改善に貢献しています。彼は、農家向けに開発された分析ソフトウェアを使用して、水、肥料、農薬調整の効果をシミュレートしています。

「原則として、すべての作物を仮想化できます」とシュタイン氏は言います。

リアルタイム・データ収集とコンピューター・ベースの分析を利用する農家は増えつつありますが、シュタイン氏もそうした農家の 1 人です。シュタイン氏のような先進的な農家と、農家向けのテクノロジーを開発している研究者や企業のおかげで、人類史上最も長い歴史を持つ産業である農業は、センサー、ドローン、ビッグデータ分析などの最新テクノロジーの主要な試験場となっています。

実際、こうしたデバイスにより、収穫量、利益、効率は大幅に改善されています。そして、これこそあらゆる業界が目指している目標です。

こうした効果は「大規模農場という枠組みの中で成立するものであり、その他の分野にも応用できるものだ」と、インテルのビッグデータ・ソリューション担当兼戦略・製品・マーケティング担当ディレクター、ヴァン・シャルマは指摘します。

例えば、小売業者ならば、ビデオ分析を単機能の歩行者センサーに置き換えることで、店頭ディスプレイの効果を測定し、改善することができます。配送センターのマネージャーならば、多目的ドローンにセンサーを組み込んで在庫を確認することができるでしょう。ほかにも、センサーを使ったデータ分析を導入して、CIO 自らが、原料からコンピューティング能力まで、社内リソースを緻密に制御している業界は数多くあります。対象を絞り込んで制御を行うことで、社内の効率が向上するだけでなく、サプライチェーン全体の効率も向上する可能性があります。

原則として、すべての作物を仮想化できます。

アイオワ州の農家: ネイサン・シュタイン氏

データセンターとエッジデバイスはともに進化を遂げると私たちは予想します。

インテル ビッグデータ・ソリューション・ディレクター: ヴァン・シャルマ

データの収集および分析プロセスでシュタイン氏が気づいたのは、農場の状況が 1 日を通じて変化する度合いです。太陽の角度が変化するにつれて、熱が地盤に蓄積されていきます。「熱データが変化していき、それに合わせて植物の蒸散が増加し、やがて減少するのが分かります」と彼は言います。

シュタイン氏が農場の航空写真から得たデータにより、「春に排水箇所を増設しなかったことで、トウモロコシ畑にどれほど損害が出たか」を一目で確認できました。1 エーカー当たり約 40 ブッシェル (約 1,800 リットル) の損害が出ていたのです。

「この事実だけでも、数千ドルを投じて、水浸しになった土を効率よく排出するメインと側面の新たな排水溝を設置する決心がつきました」とシュタイン氏は言います。

今後は、農場の肥料配分を最適化する senseFly ドローンとソフトウェアを導入する予定です。senseFly のソフトウェアと飛行後のドローンマップを使用することで、彼は自動運転トラクターをプログラミングして、畑全体に所定量の肥料を撒くことができるようになるでしょう。

新たに登場したスマートドローンや無人トラクターなどのデバイスに対して、インテリジェンスはどこで機能しているのか、またデータ処理はどこで行われるのかという疑問が生じます。農場の端にある機器? あるいはクラウドベースのデータセンターで行われているのでしょうか? シャルマは、その両方とも正解だと言います。

「これらのテクノロジーはいずれも高く評価されていますが、業界の一部にはまだ懐疑的な意見、反対意見もあります」と、彼は指摘します。「私たちは、データセンターとエッジデバイスがさらに進化を遂げることを期待しています」

シャルマは、これらを人間の神経に例えて説明します。末端には十分な反射的思考が存在しているため、例えば、熱いストーブに手を触れたら、何も「考えなくても」手を離します。一方、インテリジェンスの中枢である脳では、行動を改善したり、優先順位付けをすることで、より高い価値を生み出します。未来の農場では、スマートな半自動デバイスとクラウドベースの一元化されたコマンドシステムを組み合わせて、多くの場所でデータ分析を行うことになるでしょう。

シュタイン氏も、この点を強調しています。「農業データとっては時間が重要であり、緻密なタイミングでデータを取得する必要があります。また、常に正しく機能しなければなりません」。彼曰く、現在の農業において、農家こそ「データの目利き」なのです。