データ分析とは
知識は力ですが、情報の価値はそれをどう活用できるかによって変わります。今日のデータ分析の分野では、マシンラーニング (ML) やディープラーニング (DL) などの AI 手法を使用して、構造化データ、半構造化データ、非構造化データをビジネス・インテリジェンス (BI) に変換しています。
最終的に、AI で強化されたデータ分析の望ましい結果は、ビジネスリーダーが組織の目標を達成するための適切な意思決定を支援することです。
最近数年間でデータ分析は進化している
ギガバイトからペタバイト、それ以上の膨大な容量になっているデータの急激な増加は、強力な分析インフラストラクチャーを保有する企業であっても、依然として課題となっています。データソースの数と種類の増加は、データを収集・処理するシステムの分散 (データサイロ) の増加にもつながっています。この状況に対応するため、企業はデータをより高速に分析する必要があります。また、データアナリストがスキルセットを継続的に進化させないと、重要なインサイトを見逃すリスクがあります。ここで登場するのが、大量のデータセットからデータを収集、分析してインサイトを抽出する ML、AI、強力なコンピューティングです。
データ分析における AI の影響
AI は、従来のデータ分析ワークフローの重要なステップの自動化を支援し、あらゆるステップでより迅速な進捗とより良い結果を可能にします。
AI は大規模で効率的に機能するので、より深いインサイトを解き明かし、人間のオペレーターの作業だけでは見出せない、データ内の複雑なパターンを識別できるようアナリストをサポートすることもできます。AI 分析の可能性は膨大な価値を秘めていますが、その一方で、分析の自動化に使用される AI モデルの構築とトレーニングに開発時間が生じ、成功に必要なスキルセットを備えた AI 開発者を見つける必要があるというトレードオフがあります。
データ・パイプライン
AI を活用したデータ分析は、データ・パイプラインと呼ばれるアプローチを通じて構築されます。プロセスは企業によって異なりますが、データ分析ソリューションは、ほぼ同じコア・データ・パイプラインの段階を経て機能します。
- データの読み込み、探索、前処理
- モデルセクションおよびトレーニング
- 本番環境への導入
データの取り込み、前処理、探索
まず、顧客とのインタラクション、ソーシャルメディアの投稿、音声や動画などのマルチメディアなど、さまざまなソースからさまざまな種類のデータが収集されます。このデータは、構造化データと非構造化データに分けられます。構造化データとは、スプレッドシート内の数値データなど、事前定義済みのスキーマに適合する、狭義で定義された情報のことです。非構造化データには、付箋の書き込みから音声ファイルまで、あらゆるものが含まれる可能性があります。
すべてのデータを収集した後で、重要な前処理ステップが実施されます。このステップで実施されるのは、AI または人間のデータ・サイエンティストによる分析やモデリングのためのデータ準備です。これは、データの所有者が必要に応じてデータを構造化する「抽出、読み込み、変換 (ELT) 」プロセスを通じて行われるか、または使用前にデータをクリーニングする「抽出、変換、読み込み (ETL) 」プロセスを通じて行われます。
データが一貫した形式に整理されると、データ探索が始まります。この段階で、データ・サイエンティストは、統計、確率計算、グラフやプロットなどのデータの可視化を活用してデータを理解し、包括的なインサイトを導き出します。パターンや注目すべき点を明らかにするために、AI を含むさまざまな分析ツールが、データセットの構造、外れ値の有無、データ値の分布などのさまざまな特性間の関係をデータサイエンティストが特定するのに役立ちます。
モデルの選択とトレーニング
この段階で、データ・サイエンティストは AI モデルやアルゴリズムを利用し、記述的分析を通じてデータの意味を理解したり、予測モデリングを通じて将来の結果を計算したりしています。予測モデリングは、入力テストデータに基づいて将来の行動を予測する、統計モデルを作成するための数学的手法です。
データ・サイエンティストは、手元の質問への回答に必要な精度のモデルを得るために、1 つ以上の数学的手法 (アルゴリズムと呼ばれる) を使用することができます。アルゴリズムの例としては、回帰、クラスタリング、決定木 / ルール、時系列 / シーケンス、K 近傍法、ランダムフォレストなどがあります。最終的に、データ・サイエンティストは、利用可能な演算能力を用いて、最良の結果を生むと思われるモデルとアルゴリズムを選択します。
アルゴリズムが選択されると、データ・サイエンティストはトレーニングに進みます。トレーニングとは、基本的にはアルゴリズムのさまざまなパラメーターのチューニングを自動化し、そのチューニング結果をテストデータに適用して予測することです。このチューニングでは、教師ありマシンラーニングという既知の結果を用いて、データについて可能な限り正確な予測をすることを目指します。一方、教師なしマシンラーニングと呼ばれる別の手法では、アルゴリズムを使用してデータを個別にグループ化して理解します。
モデルの選択とチューニングを迅速化するために、データ・サイエンティストは既製のモデル (基盤モデルともいう) を出発点として使用できます。これらのモデルは、特定のユースケースのニーズに合わせてカスタマイズおよびファインチューニングできます。全体として、基盤モデルのファインチューニング・プロセスは、ゼロから構築するよりもシンプルで迅速であるため、導入を効率化および迅速化する効果的な方法となっています。
本番環境への導入
データ・パイプラインの最終段階である本番環境への導入の段階で、データ・サイエンティストはトレーニング済みのアルゴリズムを新しいデータに適用し、新しい結果を導き出します。この場合、トレーニング済みモデルは、その分類と予測をユーザーや他のシステムで利用できるようにします。モデルが新しいデータを処理すると、データ・サイエンティストは、できるだけ正確な出力とインサイトの生成を確実に行うために、モデルの最適化を選択する可能性があります。
AI はデータ・パイプラインをどのように変えるのか?
AI の導入は、従来のデータ分析パイプラインを変えるものではありませんが、準備要件に影響を与えます。つまり、大量のデータを扱う複雑で時間のかかる処理を自動化する ML と DL アルゴリズムに対応するには、データの準備が必要になるということです。AI は、速度、一貫性、人間の専門家が対応できない極端な複雑度と量のデータを処理する能力など、データ分析に幅広いメリットをもたらします。
4 種類のデータ分析
データ分析には 4 つのタイプがありますが、第 1 のタイプは、データを通じて現在と過去の現実を理解することに重点を置いた従来の方法です。これは、記述的分析および診断的分析と呼ばれます。予測的分析や処方的分析などの高度な分析手法は、文書化された現実を超えて、将来の出来事や傾向を予測し、可能な行動方針をビジネス目標に整合させることを目指しています。
- 記述的分析: 過去に何が起きたのか?
- 診断的分析: 過去の状況はなぜ、このような状況に陥ったのか?
- 予測的分析: 今後何が起きるのか?
- 処方的分析: 最善の道筋はどうか?
データ分析の分野は、AI の影響力と採用が拡大し続ける中で、絶えず進化しています。AI は、次のような新しいタイプの高度なデータ分析を可能にしています。
- 認知的分析: セマンティック・テクノロジーと ML、DL、AI アルゴリズムを活用し、人間と同等の知能をデータ分析に適用します。
- AI を活用した分析: ML アルゴリズム、自然言語処理 (NLP)、その他の AI アプリケーションと分析ツールを組み合わせることで、複雑なデータからより優れたインサイトと理解を引き出します。AI を活用した分析は、分析タスクを自動化してワークフローを高速化したり、組織のより多くの人々にデータアクセスを拡大したりすることもできます。
- リアルタイム分析: 受信したデータを即座に分析し、インサイトを迅速な意思決定に活用できるようにします。不正検出、クロスセルの機会、変動価格設定、異常検出、センサーデータの管理など、多くのユースケースではリアルタイムの分析が活用されています。
- インメモリー分析: ディスク上ではなくメモリー内のデータを使用することで、レイテンシーを低減し、より大規模なデータセットの分析を高速化します。データをメモリー内に保存することは、リアルタイム分析においても重要です。
高度な分析ソリューションとビッグデータ
「ビッグデータ」という用語は、一般的にテラバイト以上の情報を含む非常に大規模なデータセットを指すために使用されます。ビッグデータは構造化されておらず、量が多く、高速で (リアルタイムで大容量に到達する)、多様性が高い (多様なデータ形式とタイプで構成されている) ことを意味します。そのサイズと特性から、ビッグデータはデータ・パイプラインを通過する際に ML、AI、強力な演算能力を必要とします。
高度な分析ソリューションは、エッジ IoT デバイスやセンサーなど、より多様なソースから収集される大量の非構造化データの処理を加速します。企業は、不正検出、感情分析、産業機器の予測メンテナンスなどのユースケースで、これらのより困難なビッグデータ・ワークロードに対処するため、高度な分析ソリューションを導入しています。
データ分析の使用事例
データ分析は、世界中のどこでも、ほぼすべての業界に適用できます。データを活用して状況や出来事をミクロ規模またはマクロ規模で理解するという実践は、あらゆる企業が自社が作成するデータに価値を見出す機会が広がっていることを意味します。データ分析の一般的な使用方法は、次のとおりです。
- 顧客分析: 顧客行動のデータは、市場セグメンテーションや予測的分析を通じて、主要なビジネス上の意思決定に役立てられます。
- 需要予測: 過去データの予測的分析を使用し、製品やサービスに対する顧客の将来的な需要を推定・予測します。これにより、企業は情報に基づいて、適切な供給の意思決定を下すことができます。
- 異常検出: 大半のデータから大幅に逸脱し、明確に定義された典型的な行動と一致しない、稀な項目、出来事、観測値を特定します。
- 人流分析: 人の動きをデータとして表示し、行動の背後にある隠れたパターンを明らかにします。
- 時系列分析: 観測されたデータを理解することで、企業が予測、監視、さらにはフィードバックやフィードフォワード制御のためのモデルを構築できるようにします。
- ソーシャルメディア分析: ソーシャルチャネルから収集されたデータから意味を見出し、ビジネス上の意思決定を支援し、その意思決定に基づく行動の成果をソーシャルメディアを通じて測定します。
- 顧客への提案: 顧客が企業とかかわるあらゆる接点において、それぞれの顧客の好みや嗜好に合わせてパーソナライズされた提案を行います。
組織は、これらのデータ分析のユースケースを、次のような幅広い業界に適用しています。
- 小売: 小売業者は、データ分析を需要予測、実店舗での動線分析、メール、店内広告、ソーシャルメディアによるパーソナライズされた顧客への提案に活用することができます。
- 製造: 製造業者は、製造ラインでのコンピューター・ビジョン検査を通じて、顧客分析や異常検出にデータ分析を活用できます。
- 通信: 通信サービス・プロバイダーは、データ分析を使用してネットワーク・トラフィックの異常を検出したり、時系列分析を使用してネットワークの混雑を予測したりできます。
- 医学研究: 研究者は、異常検出を活用して医用画像の精度を向上させたり、患者データを分析して、見過ごされていた健康上のリスク要因を特定したりできます。
AI を活用したデータ分析は、競争力を確保し、イノベーションを推進したい組織にとって、必須の要件となっています。データの活用に積極的な企業は、遅れをとっている企業よりも、成功を収めることができるでしょう。