RCNP が原子核物理学研究を加速

大阪大学核物理研究センターでは、Lenovo のサーバーを使用して、ビッグデータ分析と HPC を強化しています。

概要:

  • 1971年に設立された大阪大学核物理研究センター (RCNP) は、原子核物理学とその応用分野を研究する最先端の研究施設です。

  • 600 人以上のユーザーに、膨大なデータセットと高パフォーマンスな分析へのシームレスなアクセスを提供するために、同センターは古くなった原子核物理学計算機システムを第 2 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーを搭載した Lenovo ThinkSystem SD530 および SR630 サーバー上に構築された新しいインフラストラクチャーに再構築しました。

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背景

1971年に設立された大阪大学核物理研究センター (RCNP) は、原子核物理学とその応用分野を研究する最先端の研究施設です。RCNP は、日本の大学で最大のサイクロトロン加速器施設を所有しており、2018年に国際共同利用・共同研究拠点として認定されました。

RCNP センター長 中野貴志氏は次のように述べています。「RCNP の明確な特徴の 1 つが、原子核に対してさまざまな粒子を衝突させ、振動とエネルギーの変化を正確に測定する精密核物理学の研究です。また、この実験データに基づいて理論的な研究も行っています。」

RCNP では、他の研究施設とも連携し、物質科学研究におけるミューオンの使用や、医学研究における加速器の採用など、日常生活に直接応用される分野で、本格的な研究を行っています。

中野教授は次のように説明しています。「例えば、医療分野では、アルファ線核医学治療に取り組んでいます。これは、全身にがん細胞が認められている患者、他の治療法では扱いにくい場合などに有用です。」

また、RCNP は、本学の優れた大学院課程の中心的な施設であり、生物医科学の社会実装を推進する優秀な研究者の育成を目的としています。

「国際共同利用・共同研究拠点として、世界中の研究者との交流のハブとなっています」と、中野教授は述べています。「RCNP で勉強した研究者は、現在、世界中の研究機関や大学で働いており、我々は多くの国際的なコラボレーションに参画しています。」

課題

RCNPは 2019年に原子核物理学計算機システムの再構築計画を開始し、実験データの保存、結果の分析、理論計算の処理を行っています。

これらのシステムは、現在、RCNP に拠点を置く研究者や、他の国内外の研究施設のリモートユーザーなど、600 人以上のユーザーにサービスを提供しています。センターが保有するデータは、多くの共同研究プロジェクトで利用されているため、リモートユーザーが全体の中でかなりの割合を占めています。

中野教授は次のように述べています。「IT は我々の研究拠点にとって、レーザー電子光施設や加速器施設と同様に重要です。適切な IT システムが利用できなければ、完璧な研究環境を構築することはできません。」

さらに、次のように述べています。「我々のシステムは、研究施設の中核にあります。実験は数週間しか続かないかもしれませんが、世界中の研究者は、実験データを数カ月、場合によっては数年分析し続けるかもしれません。我々のデータに新たな疑問を投げかけることで、新しいインサイトを得ることができます。」

これらの理由から、RCNP は原子核物理学システムの代替が、いくつかの重要な要件を満たす必要があることを認識しました。世界中のユーザーに簡単なアクセスを提供し、ユニバーサル言語での分析を実現し、とりわけ、非常に高速なデータ分析処理を実現する必要がありました。

Lenovo を選ぶ理由 高いパフォーマンスと耐障害性に優れたシステム

RCNP は、新しい原子核物理学計算機システムのサーバー・プラットフォームとして Lenovo ThinkSystem を採用することを決定しました。システム刷新プロジェクトの主要人物であり RCNP のリング・サイクロトロン施設研究員 堀田智明准教授は、アップグレードの主な要因を次のように説明しています。

「まず、高い処理能力を第一に考えました。というのも、原子核物理の膨大な実験データの処理や、原子核理論の大規模な研究には不可欠だからです。第二に、安定性は非常に重要であり、多くのユーザーが使用しても、新しいシステムを問題なく簡単に運用できるようにしたいと考えていました。第三に、実験データは機密性が高く、紛失した場合には復旧できないため、データ・セキュリティーと保護を考慮する必要がありました。」

中野教授は次のように述べています。「計算能力と大量のデータを保存する機能が重要であり、また、長年にわたって蓄積された研究データを途切れることなく分析できる環境を構築する必要もありました。つまり、使用可能な予算内で、IT サポート機能をどれだけ強化できるかを調べることを意味しました。例えば、問題が発生した場合、現場のコンピューター室のチームと協力して、解決することはできるのか?といったことです。」

また、次のように付け加えています。「信頼性に加え、データ量の増加と分析処理の高速化にも対応する必要があるため、将来的な開発に対する Lenovo ソリューションの高い潜在能力を重視しました。」

困難な状況で納入に成功

Lenovo ThinkSystem ソリューションの選択が行われ、RCNP チームは、約 5 カ月で新しい原子核物理学計算機システムの納入に成功しました。

RCNP の原子核物理学計算を処理するために、新しいプラットフォームでは、第 2 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーを搭載した 24 台の Lenovo ThinkSystem SD530 サーバーを使用し、データ分析処理に約 800 CPU コアを提供しています。さらに、8 台の Lenovo ThinkSystemSR630 サーバーが管理ノードとして使用され、データの送受信、ジョブ制御を担っています。Lenovo ThinkSystem SD530 は、狭いスペースで最大のパフォーマンスを発揮するように特別に設計された超高密度 2U 4 ノード (2U4N) システムであり、高度なハードウェア・セキュリティー機能を備えています。一方、Lenovo ThinkSystem SR630 は、ビジネス・クリティカルなワークロードに汎用性と高い信頼性を提供する 1U ラックサーバーです。

通常、この種のシステム更新プロジェクトには、ハードウェアのインストール、OS、ソフトウェアのインストール、構成、稼働開始などのタスクを実行するために、多数の従業員によるオンサイト作業が伴います。しかし、RCNP のプロジェクトは、人々の移動が制限されたコロナ危機の間に実施され、プロジェクトのタイムラインを圧縮し、より小規模なチームで実施する必要がありました。

「新型コロナウイルスの影響にも関わらず、Lenovo の効率的な運用チームとリモート管理機能のサポートにより、このシステムを成功裏に立ち上げることができました。」 —大阪大学核物理研究センター 准教授 堀田智明氏

成果

RCNP は現在、世界最高性能の加速器を使用して、加速器およびビーム物理学の研究を行っています。さらに、医学研究施設との連携により、革新的ながん治療や診断のための次世代加速器と照射システムの開発・研究にも挑戦しています。

中野教授は次のように述べています。「我々が行っている、この種の加速器研究では、膨大な量のデータを蓄積し、それを我々のシステムに格納する必要があります。その後、世界中のユーザーにデータ処理時間を付与します。常に利用可能で安定し、アクセスしやすい環境を提供し続けたいと考えています。」

さらに、次のように述べています。「最初にこのシステムを導入した際は、主に Lenovo ハードウェアのパフォーマンスに魅了されました。今後は、Lenovo を戦略的パートナーとして、問題解決とシステム改善にさらに注力したいと考えています。つまり、ソフトウェア面での連携を深めることを意味しています。」

中野教授は、実用的かつ理論的な研究に加えて、IT スキルの開発を研究センターの重要な使命と考えています。国際的な研究と教育で大きな市場シェアを占めている Lenovo のシステムを使用することで、RCNP がこの分野で活躍できる技術的に熟練した研究者を育成することを、中野教授は期待しています。

堀田准教授は次のように述べています。「RCNP では、研究内容や方法に応じて、さまざまなコンピューターの使用方法があります。そのため、我々の Lenovo システムは、特定のアプリケーションに特化した単なる HPC プラットフォームではなく、多くのユースケースに適応できます。例えば、マシンラーニングを研究に組み込み、大規模な並列処理を行いたいと考えているチームがいます。我々の目的は、そのようなニーズに柔軟に対応できる最適なシステムを開発することです。」

さらに、次のように述べています。「今後は、オンプレミス・サーバーとストレージ環境を強化するために、クラウドの使用を検討します。これにより、多様な分野の研究において、ユーザーのニーズを満たすコンピューター・リソースを提供できるようになります。また、クラウドベンダーは、安価で高性能なハードウェアを提供するだけでなく、システムを運用し、サポートする人員の負担を軽減することもできます。Lenovo が、ハードウェアと運用サポートの両方を組み合わせた総合的な価値の高い高度なシステムを、適切な技術とノウハウで提供してくれることを期待しています。」

将来的な計画

中野教授は、より大きな全体像を見て、次のように述べています。「ますます複雑化する世界で、より良い未来の社会を構築するために、我々は実現したい将来から『逆算』して、今何が必要かを理解することができます。研究者の育成や人材の育成が必要であることが分かりました。」

RCNP のビジョンを達成するため、ITがますます重要な役割を果たすことが期待されていますが、同時に、中野教授は次のように述べています。「現在のペースでシステムを使用し続けると、電力使用量は増加し、ストレージの容量は制限されます。」

「我々の目標は、研究を超えて人類の問題を解決するために有用な結果を生み出すことです。つまり、それは IT をさらに有効活用して、この拠点の将来的な発展を推し進めることを意味します。」―大阪大学核物理研究センター センター長 中野貴志氏

堀田准教授も同意しています。「コンピューター・システムをインストールし、運用する際、消費電力とその環境への影響を考慮するのは当然です。この観点は、研究資金の有効活用に直結しており、今後、留意していくことは重要です。」

2019年以来、Lenovo は、データセンターのハードウェアおよびサービス向けの包括的な従量課金型のサブスクリプション・サービスである Lenovo TruScale Infrastructure Services を提供しています。また、同社は、Lenovo Neptune 液冷技術により、消費電力の効率を向上し、コストの削減にも取り組んでいます。「Lenovo はこれらの対策を採用することで、国連の持続可能な開発目標 [SDGs] に沿っています」と、堀田准教授は述べています。「中野教授と同じになりますが、SDGs に合った最適なシステム環境を着実に構築するには、考え方を変え、バックキャスティングを活用する必要があると思います。」

中野教授は次のように述べています。「今後は、これまで以上にコンパクトで、消費電力も少なく、より高い演算処理能力を発揮するシステム環境が必要になっていきます。このようなシステムを構築し、適切に維持することで、我々は原子核物理学の分野のリーダーとなるでしょう。」

大阪大学核物理研究センター

 

  • 日本三大研究大学の 1 つ
  • QS World University Rankings で世界 75 位にランク付け1
  • 日本国内の大学では、最大のサイクロトロン加速器施設を保有