Gunpowder がデジタル・レンダリングの時間とコストを削減

第 4 世代インテル® Xeon® プロセッサー搭載 Google Cloud C3 インスタンスは、以前のインスタンスと比較してレンダリング・パフォーマンスが高速化しています。

概要:

  • デジタル VFX サービスおよびテクノロジー・プロバイダーである Gunpowder は、ハイパースケール・クラウド機能の効率性に関する知識と、エフェクト制作とレンダリングに関する専門知識を兼ね備えています。

  • 同社は最近、第 4 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーを採用した新しい Google Cloud インスタンスをテストしました。ベンチマークでは、前世代のインテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーを搭載したインスタンスと比較して、レンダリング時間の短縮とコストの削減を実現しています。

author-image

投稿者:

エグゼクティブ・サマリー

デジタル・ビジュアル・エフェクト (VFX) が映画制作に影響を与えたというのは、非常に控えめな表現と言えます。デジタル VFX はパラダイム・シフトでした。ストーリーを表現し、視聴者に新たな体験を提供する全く新しい方法を導入しました。『スターウォーズ』から最新作の『アバター』まで、デジタル VFX の基盤となるテクノロジーが新しく進化するたびに、映画 (そしてテレビ、ストリーミング、ゲーム、コマーシャル、デジタルアートなど、あらゆるモーションメディア表現) が、新しい世界へと私たちを導くクリエイティブな方法を、デジタル VFX を支えるアーティストに与えています。

自宅、ギャラリー、劇場など、視聴者は場所を問わず、豊かな視覚体験を望んでいます。つまり、次のデジタル VFX プロジェクトを新次元に引き上げる必要があり、それにはコンピューティング処理が求められます。時には膨大な量のコンピューティング処理です。しかしながら、ニュースの見出しで映画の予算がいかに高騰しているか誇らしく語られる一方で、エフェクトの予算は厳しい状況にあり、エフェクトスタジオ間の制作競争は熾烈を極めています。エフェクトを支える計算処理のコストと効率性も、その競争に追随する必要があります。

デジタル VFX サービスおよびテクノロジー・プロバイダーである Gunpowder は、ハイパースケール・クラウド機能の効率性に関する知識と、エフェクト制作とレンダリングに関する専門知識を兼ね備えています。Gunpowder は、Google Cloud を使用し、Refik AnadolUrs Fischer などのデジタル・アーティストにレンダリング・サービスを提供しています。時には世界中の何万ものサーバーを活用することもあります。同社は最近、第 4 世代インテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーを採用した新しい Google Cloud インスタンスをテストしました。ベンチマークでは、旧世代のインテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーを採用したインスタンスと比較して、最大 52% 優れた価格対性能比1 を発揮し、レンダリング時間の高速化およびコストの削減が示されました。いずれもアーティストとプロデューサーの双方にとって利点となります。

『CHAOS #501』- アーティスト Urs Fischer による制作中の作品。クレジット: Urs Fischer (Gunpowder 提供)。

課題

2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが猛威を振るっていました。スタジオが閉鎖され、VFX 部門はリモートワークの方法を模索しています。Gunpowder の創設者である Tom Taylor 氏は、レンダリング・ソフトウェアとシステムに関する技術的知識と、クラウドサービスの機能を活かし、クラウドにおける高性能なコンピューティングを実現し、デジタル・アーティストがどこからでも作業できるようにしました。ここ数年、Gunpowder は、Google Cloud インスタンスを使用してレンダリング・サービスを提供し、成長を続けています。レンダリングに関しては、高い処理能力が常に望ましいことです。

「レンダリングに関して、処理能力が高すぎるということはありません」と Taylor 氏は述べます。「レンダリングを送信すると、利用可能なすべてのリソースを使おうとします。60 コアのマシンを起動すると、レンダリングを実行した瞬間、60 コアすべてがリソース 100% 使用で固定されます。これはレンダリングが終了するまで続きます」

Gunpowder のクライアントにとっては、レンダリングに利用可能なコンピューティングが増加するほど、処理が高速に完了することになります。VFX ビジネスでは時間がすべてです。

Taylor 氏はさらに述べています。「私たちの業界では、スピードと時間がお金に直結します。締め切りがすべてを左右します。クリエイティブな視点からは、コンテンツは決して完成しません。アーティストが作業を多く繰り返すほど、最終的な作品の質も良くなります」

Taylor 氏と Gunpowder にとって、クラウド・インスタンスのパフォーマンスとコストは、タイムラインが短く、予算が厳しく、利幅の少ない業界に競争力の高いサービスを提供するうえで不可欠です。

そして、第 4 世代インテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーと Google Cloud C3 インスタンスが登場しました。

ソリューション

Gunpowder は、クラウドに独自のレンダリング・システムを構築したいスタジオや、オンプレミスのソリューションをクラウドに拡張または移行したいスタジオの相談に応じています。同社は、オンデマンドのレンダリング能力も顧客に提供しています。

パフォーマンス、パフォーマンス、パフォーマンス

現在、Gunpowder サービスは、Google Cloud C2 インスタンス (第 2 世代インテル® Xeon®プロセッサー・ファミリーをベースとしたコンピューティング集約型ワークロード向けの超高性能な構成) と n1 インスタンス (以前のバージョンのインテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーをベースとした価格と性能のバランスに優れた構成) で実行されています。そして現在、Google Cloud は、第 4 世代インテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーを実行する C3 インスタンスの導入を進めています。新しいC3 インスタンスは、Google Cloud 向けにカスタマイズされたインテル® Infrastructure Processing Engineインテル® アドバンスト・マトリクス・エクステンションを備え、AI のトレーニングと推論を高速化します。

Taylor 氏は次のように説明します。「C2 および C3 インスタンスで当社の従来のレンダラーを使用して、ベンチマークを実行しました。結果を比較したところ、C3 インスタンスではレンダリング時間が 25~30% 短縮されました。VFX では、レンダリングが高速になるほど、より長い時間をかけて何度も反復して作品を完成させることができると言いましたが、要するに、アーティストが作業する時間を増やすことができるのです」

さらに、クラウドでは、すべてが秒単位で課金されます。レンダリングにかかる秒数が少なければ、顧客は費用を抑えられます。

Taylor 氏は言います。「より安く、より良いパフォーマンスが得られるので、双方にメリットがあります。採用しない理由がありません」

優れたコスト・パフォーマンス

Google インスタンスは、さまざまな構成 (またはシェイプ) で提供されています。C2 の標準シェイプは、C3 highcpu シェイプの 2 倍のメモリーを備えています。ほとんどのレンダラーは、C3 highcpu シェイプの減少したメモリーでも、適切に動作する傾向があります。少ないメモリーのインスタンス・シェイプは、インスタンスの価格を削減するのに役立ちます。そのため、C3 highcpu シェイプとレンダリング時間の高速化の組み合わせにより、C2 インスタンスと比較して、50% 以上コスト・パフォーマンスが向上します。

数字による比較

Gunpowder でベンチマークを実行した際に、C2 および C3 両方のインスタンスで 2 つの主要なレンダリング・エンジンをテストしました。

図 1.Antonio Bosi ベンチマークを使用した Arnold レンダリング・テストで、第 2 世代インテル® Xeon® プロセッサー・ファミリー搭載 C2 インスタンスの結果を、第 4 世代インテル® Xeon® プロセッサー・ファミリー搭載 C3 インスタンスの結果を比較しました1

「消費者が目にする映像は、アーティストのインターフェイスで直接制作されたものではありません。実際にアーティストがするのは、専用のソフトウェアを使用して、さまざまなシーンのデザインとアニメーション化をし、美しくすることです。このようなシーンが「ファーム」と呼ばれる映像処理センターに送信され、そこで必要な計算を実施したうえで放送される最終的な映像が制作されます」

図 1 は、Google Cloud インスタンスにおける Arnold を使用したレンダリングの結果を示しています。表 1 は、V-Ray ベンチマークの結果を記載しています。価格は、米国アイオワ州の Google データセンターのインスタンスに基づいています。

表1.V-Ray benchmark-5.02.01 による V-Ray パフォーマンス・テスト

米国アイオワ州の Google Cloud データセンターにおける Gunpowder の推定インスタンス・コストは以下の通りです。

C2-standard-30: 1 時間あたり $1.566
C3-highcpu-44: 1 時間あたり $1.8942

2 つのベンチマークにおいて、より多くのコアと新しい CPU アーキテクチャーを備える Google Cloud C3 インスタンスがより高速に実行しました。また、C2 よりも完了までのコストが安く、コスト・パフォーマンスが向上しています。

Taylor 氏は次のように述べています。「VFX スタジオがプロジェクトに入札する際、見積りの範囲内での仕事が求められます。つまり、可能な限り効率的でコスト効果に高いレンダリング・システムが必要になるのです。レンダリングを高速化しながら、コストの削減に役立つことであれば、それは利点となります。C3 インスタンスがその実現に貢献するでしょう」

「Artificial Realities: Coral」は、Refik Anadol Studio による、サンゴ画像の包括的なデータセットのコンパイルに関する長年の研究の究極的可視化を表現した作品で、アートを通じて気候変動に対する意識を高めることを目的としています。世界経済フォーラム 2023 で展示されているこのサイト固有のデータ・スカルプチャーは、海洋環境とサンゴ礁の苦境にインスパイアされ、約 1 億個のサンゴの画像を生データとして使用しています。クレジット: Refik Anadol Studio (Gunpowder 提供)

成果

レンダリングは、コンピューティング集約型のタスクです。画像が複雑で解像度が高いほど、より多くのコンピューティングが必要となります。Google Cloud と連携することで、Gunpowder は、すべてのレンダリングをクラウドで実行するか、顧客のオンプレミス・テクノロジーを活用するか、個々のプロジェクトにレンダリング・サービスを調整してセットアップできます。例えば、最近の顧客では、水中の動植物の 1 億枚の画像を使用して、AI により生成された海のサンゴ画像をレンダリングする必要がありました。

「この顧客は、複数のノードをオンプレミス・システムに接続し、今年初めの世界経済フォーラムで展示する映像をレンダリングするという要件で、当社に問い合わせてきました。当社の取り組みを通じて、多数のレンダリング・ノードをセットアップし、顧客の機器との接続を確立し、既存のライセンスリソースを最大限に活用することができました」 レンダリングのジョブによっては数千のノードが必要なジョブもあります。1 つのプロジェクトを社内で完結させることは、超大手スタジオ以外ではほぼ不可能です。このようなプロジェクトにおいて、Gunpowder は、Google Cloud の世界的なプレゼンスを利用し、世界中からノードをセットアップします。コストを抑制するため、スポット・インスタンス (世界中のデータセンターに存在する未使用のインスタンス) を探します。

Taylor 氏は次のように説明しています。「1 万個のレンダリング・ノードを必要とする非常に大規模なプロジェクトのために、世界中の Google Cloud スポット・インスタンスを探しました。「そのプロジェクトでは、日常的なオブジェクト 2,500 個の 3D スキャンを使用し、10K の画面に表示される動く環境の中で、それらが相互に影響し合います1。ニューヨークの Gagosian Gallery で展示されます」

Taylor 氏によると、これらは Google Cloud C3インスタンスのパフォーマンスとコストのメリットを享受できるプロジェクトだそうです。

ソリューションのまとめ

デジタル VFX のレンダリングとは、多くのノードを 100% で実行させることが必要になる、コンピューティング集約型のオペレーションです。デジタル VFX スタジオでは時間が重要であるため、レンダリング時間を短縮するテクノロジーは、アーティストが作品を完成させる機会を増やすことで、プロジェクトの品質向上に貢献します。第 4 世代インテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーで構築された Google Cloud C3 インスタンスは、C2 インスタンスに比べて、Gunpowder にパフォーマンスおよびコスト面での改善をもたらし、レンダリング・ジョブの高速化とコスト削減を支援します。

PDF をダウンロード ›