電源インテグリティー
適切なバイパス手法およびデカップリング手法により、信頼性の高いデザインの動作に重要な電源全体のシグナル・インテグリティーが向上します。これらの手法は、電源電流要件がより厳しくなり、かつ電源と負荷ポイント (一般的には FPGA や CPLD デバイス) 間の距離が長くなるほど、より重要になります。設計者が検討しなければならないバイパス手法およびデカップリング手法のタイプは、システムデザインやボードの要件に応じて異なります。
出力バッファーが状態を変えると(例えば、出力ピンを論理 High から論理 Low にドライブして)、出力構造全体で瞬間的に電源レールからグランドに低インピーダンスのパスが生じます。この出力遷移によって、出力が充電または放電するので、必要な電圧レベルに達するよう出力負荷に即時に電流を供給する必要があります。バイパス・コンデンサーは、この過渡電流に必要な蓄積エネルギーをローカルに供給します。
このエネルギー蓄積システムの過渡応答は、広い周波数および負荷範囲に対応する必要があります。したがって、エネルギー蓄積システムはさまざまなタイプのコンデンサーで構成されていなければなりません。低い直列インダクタンスを持つ小容量コンデンサーは、高周波遷移に対して高速で電流を供給できます。大容量コンデンサーは高周波コンデンサーの蓄積エネルギーが枯渇した後も電流を供給し続けます。図 1 は、大きな周波数範囲と負荷範囲に対応するように設計された一般的エネルギー貯蔵システムを示しています。一般的なデザインには、以下の 3 つの範囲の 1KHz ~ 500MHz の周波数範囲のコンデンサーが必要です。
- 0.001 ~ 0.1µF
- 47 ~ 100µF
- 470 ~ 3300µF
図 1.一般的なエネルギー所蔵システム。
デバイスで使用されるロジック量および出力スイッチングの要件によって、デカップリング・コンデンサーの要求値が定義されます。I/O ピン数およびピンの容量性負荷が増加すると、デカップリング・キャパシターの追加が必要になります。設計者は、可能な限り多くの 0.2µF 電源デカップリング・キャパシターを VCCINT、VCCIO およびグラウンドピン / プレーンに追加すべきです。理想的には、これらの小容量コンデンサーはできる限りデバイスの近くに配置する必要があります。設計の際には、各 VCCINT または VCCIO およびグラウンドピンのペアを 0.2µF コンデンサーとデカップリングできます。あるデザインでボール・グリッド・アレイ (BGA) パッケージなどの高密度パッケージが採用されている場合、VCCINT / VCCIO とグラウンドピンのペアごとに 1 つのデカップリング・キャパシターを使用するのが難しい場合があります。このような場合は、レイアウトで許される範囲で、できるだけ多数のデカップリング・コンデンサーを使用するようにしてください。デカップリング・コンデンサーは、モノリシック・セラミック・コンデンサーなど、良好な周波数応答特性を備えたものでなければなりません。
コンデンサーの選択と配置
高周波コンデンサー (0.001 ~ 0.1µF の低インダクタンス・セラミック・チップ) には、適切な配置と位置が非常に重要です。設計者は、コンデンサー端子からデバイスの電源ピンまでの経路の抵抗を減らすため、可能な限り配線長を最小限に抑えてください。これにはグラウンドまたは電源プレーン (VCCINT または VCCIO) を通る経路が含まれ、銅製プレーン 1 インチの抵抗が約1 nHとなります。バイパス・コンデンサーの穴はグラウンド、VCCINT または VCCIO プレーンに直接通してください。その他のタイプのコンデンサー (47 ~ 100µF 中周波および 470 ~ 3,300µF 低周波コンデンサー) は、「バルク」コンデンサーと呼ばれ、ボード上のどこにでも実装できます。ただし、バルク・コンデンサーはできる限りデバイスの近くに配置する必要があります。VCCINT または VCCIO 高周波バイパス・コンデンサーを、PCB 上の対応する VCCINT または VCCIO ピンの 1cm 以内に配置します。VCCINT または VCCIO 中周波バイパス・コンデンサーは VCCINT または VCCIO ピンの 3cm 以内に配置してください。
VCCINT バイパス静電容量
Stratix® II の場合、異なるアーキテクチャー機能内の個々のロジックアレイ構造が非常に短い時間(50 ps 未満)に非常に小さな電流(ピコアンペアまたはそれ以下)を流します。これらの電流は小さなものですが、デバイス全体で合算されると、数アンペアに達する可能性があります。これらのわずかな電流遷移が、1 秒間に何億回も発生する可能性があり、また数百万個もの個別スイッチがこれらの電流遷移を伝達することを考慮し、バイパス・コンデンサーの計算は平均エネルギー蓄積要件に基づいて計算されます。高周波コンデンサーの値は、次のように近似することができます。
ロジックアレイ電力 = 等価スイッチ・ロジックアレイ・キャパシター × VCCINT2 × クロック周波数
または
等価スイッチ・ロジックアレイ・キャパシター = (ロジックアレイ電力) / (VCCINT2 × クロック周波数)
等価スイッチ・ロジックアレイ・キャパシターは、V CCINT が給電される Stratix II ロジックアレイの等価スイッチ・キャパシタです。電力ノイズを低減するために、V <sub>CCINT </sub> 電源バイパス・コンデンサーは、等価スイッチ・ロジック・アレイのキャパシターよりもはるかに大きくなければなりません。高周波バイパス・コンデンサーは、等価スイッチ・ロジック・アレイのキャパシターよりも 25 ~ 100 倍大きいことが必要です。係数 50 で VCCINT の 2% の変動をもたらすことになります。
高周波バイパス・コンデンサー = <25 ~ 100> × 等価スイッチ・ロジック・アレイのキャパシター
VCCINT とグラウンドピンのすべてのペアに、高周波バイパス・コンデンサーが必要となります。各高周波バイパス・コンデンサーの最適なサイズを求めるには、合計高周波バイパス・キャパシターをデバイスの VCCINT ピン数で除算して、次に大きな一般値に切り上げます。従って、各高周波 VCCINT コンデンサーの最小サイズは以下の通りになります。
次の式を検討してみましょう。
- デバイスの VCCINT 電力 = 5 W
- VCCINT = 1.2 V
- システムクロック周波数 = 150 MHz
- 高周波バイパス・コンデンサー乗数 = 50
- デバイスの VCCINT ピン数 = 36
コンデンサーのサイズは 0.032 µF 以上でなければなりません。この例により、設計者は個々の容量がこの値以上の高周波コンデンサーを選択する必要があります。
中周波コンデンサーは、47 µF ~ 100 µF のタンタル・コンデンサーでなければなりません。タンタル・コンデンサーが利用できない場合は、低インダクタンスのアルミニウム電解コンデンサーを使用できます。Stratix II デバイスでは少なくとも 4 個の中周波コンデンサーをデバイスから 3 cm 以内に実装する必要があります。加えて、PCB には最低 1 個の低周波コンデンサー(470 µF ~ 3300 µF)が必要です。
VCCIO バイパス・コンデンサー
VCCINT に関する考慮事項と同じく、VCCIO バイパスの要件も平均エネルギー貯蔵要件に基づいています。FPGA または CPLD デバイスで駆動される負荷によって、等価スイッチ・キャパシターの容量が決まります。I/O バンクごとに異なる電圧およびスイッチング周波数で動作可能なので、設計者は高周波コンデンサーの要求値を求めるために、以下の式を使用して個別にバイパス網を検討する必要があります。
VCCIO のノイズ量を低減するために、バイパス・コンデンサーの容量は合計出力負荷キャパシターよりもはるかに大きくなければなりません。高周波バイパス・キャパシターは、合計負荷キャパシターの 25 ~ 100 倍が必要です。すべての VCCIO とグラウンドピンのペアに、デバイスに大きな電流が流れるときに、即時に必要な電流を供給するために、高周波バイパス・コンデンサーが必要です。以下の式から各コンデンサーの最適なサイズを求めます。
次の式を検討してみましょう。
- 負荷数 = 40 信号
- 平均負荷値 = 10pF
- 高周波バイパス・コンデンサー乗数 = 50
- デバイスの VCCIO ピン数 = 5
コンデンサーのサイズは 0.004 µF でなければなりません。この例により、設計者は個々の容量がこの値以上の高周波コンデンサーを選択する必要があります。利用可能な次に大きいコンデンサー・サイズを選択します(0.047 µF または 0.01 µF)。
中周波コンデンサーは、47 µF ~ 100 µF のタンタル・コンデンサーでなければなりません。VCCIO バンク 2 個ごとに 1 個の中周波コンデンサーが必要です。タンタル・コンデンサーが利用できない場合は、低インダクタンスのアルミニウム電解コンデンサーを使用できます。これらのコンデンサーは VCCIO ピン接続から 3cm 以内に配置する必要があります。さらに、PCB には各 VCCIO 電圧レベルに最低 1 個の低周波コンデンサー (470µF ~ 3,300µF) が必要です。