送電網を変革するマイクログリッド

電力会社および電力利用者にスマートなマイクログリッドが提供する新たなメリット:

  • 風力や太陽光など再生可能なカーボンフリー・エネルギーを含む、分散したエネルギー資源の統合が可能。

  • 必要に応じてエネルギーの備蓄や供給を行い、緊急時には予備エネルギーとして提供することで、送電線網の柔軟性と効率を向上。

  • インテルはマイクログリッドの採用を実現させるために必要なテクノロジーを提供。

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従来型の送電網 (グリッド) は、アップグレードする必要に迫られています。このようなグリッドは、石炭や天然ガスを燃焼させる大規模な発電所から電気を供給するために数十年も前に設計されたのですが、ウィンドファームやソーラーファームなどの小規模で分散した再生可能エネルギーによる電力供給源や、自宅や企業が発電した余剰電力などから、従来のグリッドへ流れてくる電力が増えています。こういった状況の変化に対応し、将来に向けたカーボンフリー・エネルギーの足固めをするには、グリッドを見直して、二酸化炭素を発生させない再生可能エネルギーによる電力供給源をより多くグリッドへ接続して、環境に優しい電力供給システムを構築する必要があります。災害や落雷などによる停電時に、病院や軍事施設などの止めることができない重要な施設に対して電力を供給し続けられるように、信頼性と復元力の向上もこれからのグリッドに要求されます。

テクノロジーの進化が、スマートグリッドへの急速な移行を促進しています。スマートグリッドは、セキュリティー、信頼性、負荷の管理という 3 つの課題すべてを満たす潜在力がありますが、まだ課題も存在しています。インテル® ベースのプラットフォーム・ソリューションでは、こうした課題を解決するために、AI、マシンラーニング、ビッグデータによる分析、自動制御、新しいエネルギー資産を管理するための IoT テクノロジーによるツールなどを使用しています。

巨大な従来型のグリッドを低電圧のマイクログリッドと接続すると、電力を柔軟かつ効率的に使用できるようになります。小規模な電気システムというこのアイデアは、トーマス・エジソンによる石炭火力発電所である Pearl Street Station がニューヨーク・マンハッタン半径数ブロック内の顧客 82 人に電力を供給した 1882年にまで遡ります。1

マイクログリッドの概要

マイクログリッドとは、大規模なインフラストラクチャーのメンテナンスや修理が不要なため、雷雨や自然災害に対する耐性がある地域用の小規模な電力システムであり、従来型のグリッドとは切り離して個別に運用できます。自律的な動作を維持できるため、グリッドの修繕時や、広範囲な停電の原因となるような緊急時も、電力システムを高度にバックアップできます。

マイクログリッドでは、さまざまな分散型エネルギーリソース (DER) をグリッドに統合することができるため、発電量が気象条件や時間に左右される風力や太陽光といったクリーンな電力供給源を利用可能な時だけ利用して、発電量が少ない時はその他の発電システムを利用するという事が可能です。

バックアップと安定性という 2 つの機能を活用することで、信頼性の高い電力供給と二酸化炭素排出量の削減という 2 つのニーズのバランスを取ることができます。

マイクログリッドの仕組み

現在のマイクログリッド・テクノロジーは、主要な要素が少ない比較的シンプルなものです。

マイクログリッドのコンポーネント

マイクログリッドの最も重要な部分は、従来型のグリッドと同様、発電であり、ディーゼル発電機からバッテリーまで多岐にわたります。現時点で最も一般的なマイクログリッドの電力供給源は、ソーラーパネル、ウィンドファーム、燃料電池、そのほかの再生可能エネルギーのリソースです。

系統連系点 (PCC、Point of Common Coupling) は、マイクログリッドが一般送配電事業者のグリッドと接続する個所のことです。連系時は、2 つのシステムが並列で稼働し、PCC は双方の電圧を均等に維持します。PCC を使用すると、マイクログリッドが価格シグナルに反応して、親グリッドからの電力のインポートやエクスポートを実行し、バッテリーのような蓄電メカニズムを利用することもできます。

一般送配電事業者のグリッドで問題が発生すると、手動または自動によりスイッチでグリッドとの連携を解除できます。このアイランドモード時は、一般送配電事業者のグリッドが停電時でも、マイクログリッドから顧客が重要施設を維持するために必要十分な電力を供給することができます。AI によるマシンラーニング機能が、このプロセスを継続的なものにするための最適化を支援しています。

電圧と電流を安定した状態に維持する必要がある電力会社は、インテル® アーキテクチャーをベースにしたプラットフォームを使用して、パフォーマンスの問題を特定し、送電線に組込まれたスマートメーターやセンサーが、停電を防ぎ、変圧器やポンプ、そのほかの機器のモニタリングおよび予測メンテナンス・ソリューションにより、リスクを低減し、コストを削減します。IoT テクノロジーを使用した製品は、グリッドをよりスマートかつ安全、セキュアにして、信頼性を高めつつ、顧客側のコストも削減します。

マイクログリッド・プロジェクトは、幅広い用途に対応し、環境を汚染する高価な燃料の代替手段を発展途上国と孤立したコミュニティーに提供します。

マイクログリッドの導入事例

マイクログリッドの最大のメリットは、状況と規模によって異なります。キャンパス・マイクログリッドは、大学、病院、刑務所、産業用施設など、単一のユーザーが使用します。コミュニティーや地区のマイクログリッドは、複数の顧客が使用します。どちらも地域の送電網と完全に統合されます。規模の最も小さいナノグリッドは、建物 1 棟に電力を供給できます。「オフグリッド」システムは、リモートサイト、島嶼部など、経済的または技術的な問題により PCC を使用できない場所において有益であり、地域の電力網からは完全に切り離されています。

マイクログリッド・プロジェクトは、規模と場所に応じて、電力会社のグリッド最適化と補助的サービスのニーズや、中断しない電力供給を必要とする軍事施設など、幅広い用途に対応します。環境を汚染する高価な燃料の代替手段を発展途上国と孤立したコミュニティーに提供します。

インテル® アーキテクチャーをベースにしたマイクログリッド向けソリューション

インテル® アーキテクチャーをベースにした高度なグリッド管理ソリューションは、電力会社およびほかの顧客の送電網の信頼性、安定性、効率性を高めます。すべてのタイプのマイクログリッドにとって、最大の課題は導入コストです。さまざまなシステムのインストールと統合が要求され、プロジェクトの ROI が著しく低下するため、複数のプラットフォームで同じソフトウェアを再利用できることが欠かせません。インテル® アーキテクチャーが提供する柔軟なコンピューティング・インフラストラクチャーは、迅速にインストールでき、ソフトウェアとハードウェアのさまざまなプロバイダーと互換性があります。

風力や太陽光など、再生可能エネルギー源にはメリットがあるものの、グリッドを不安定にさせ、運用コストが増加します。インテルの IoT テクノロジーは、資産のデジタル化を推進して、お客様のニーズを満たしています。電力会社は、データ収集と予測分析を簡単に実行でき、運用コストの削減と収益性の維持に役立ちます。

その結果、グリッドの信頼性、安全性、生産性、顧客満足度が向上します。マイクログリッドは、パズルの重要なピースのように、電力供給の維持において不可欠な役割を果たします。