ロボットアーム

産業用ロボットアーム: 作業の仕方を変革

最新のマシンビジョンとネットワーク・テクノロジーでロボットアームを強化することで、企業は業界を問わず、手ごろな費用で新しいレベルの生産性、速度と精度を実現できます。

産業用ロボットアームに関する重要なポイント:

  • 産業用ロボットアームは、さまざまなアプリケーションにわたって速度、効率と精度を高め、企業が新しいレベルの生産性を達成するのに役立っています。

  • ロボットアームは、マシンビジョンとネットワーク・テクノロジーを使って周辺環境を視認し、分析、理解することができます。このインテリジェンスによってロボット作業の柔軟性、精度と速度が高まると同時に、工場や倉庫の安全性と品質も向上します。

  • エッジにおけるリモート監視および分析テクノロジーを備えたロボットアームは、ロボット設備の状態やパフォーマンスに関する実用的なインサイトをリアルタイムで企業に提供し、予測メンテナンスを実現します。その結果、メンテナンス費用を削減しながら稼働時間を向上させることが可能になります。

  • インテルのテクノロジーで強化されたロボットアームは、インライン検査を行うリアルタイム溶接や塗装、マテリアル・ハンドリング、対象物操作など、さまざまな業界にわたって複数のユースケースやアプリケーションを実現します。

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産業用ロボットアームとは?

製造業から自動車産業、農業まで、産業用ロボットアームは、現在最もよく使用されている種類のロボットです。

ロボットアームは、多関節ロボットアームとも呼ばれます。速度、信頼性と精度が高く、プログラミングによってさまざまな環境で無限の種類の作業を行うことができます。ロボットアームは、工場では装置または部品への塗装といった反復作業の自動化に、物流倉庫では消費者からの注文に対応するため搬送コンベヤ上の商品の把持、選択または仕分けに、あるいは農地では熟したくだものの収穫と保管トレイへの配置などに利用されています。ロボティクス・テクノロジーが進歩し、産業環境の接続性が高まるにつれて、ロボットアームの機能が拡大して新しいユースケースや事業運用モデルが実現しています。

過去のロボットアームでは、特定の向きに置かれた 1 種類の対象物を特定の場所から取り上げるなど、限定された作業を教える必要がありました。そうしたロボットは、多数の中から特定の種類の対象物を識別したり、ある程度の許容範囲 (正確な位置ではなく領域) から対象物の位置を認識したり、対象物の向きに合わせて把持を調整したりすることはできませんでした。

現在では、インテル® RealSense™ 高解像度デプスカメラなどのデバイス、強力な CPU や GPU、OpenVINO™ ツールキットなどの AI テクノロジーによってロボットアームが認識機能とインテリジェンスで強化されており、新しい作業の実施が実現しています。これらのスマートでビジョン機能を備えたロボットは、周辺の物体を検出、その種類を認識し、適切な操作を行うことができます。こうした機能により、これまで以上に精度と一貫性が高く、より安全で高速なロボットの動作が実現しています。また、ロボットが実施できる作業の範囲も拡大します。

マシンビジョン、AI およびネットワーク・テクノロジーの進歩により、ロボットアームは、周辺環境を視認、分析し、それに対応しながら、価値の高いデータとインサイトを施設や事業管理システムに送信することができます。この変革による利点を得られる分野の 1 つに、ロボットを含む設備のメンテナンスがあります。ロボットは、エッジでデータを計算、あるいはリモート監視目的にサーバーやクラウドへとデータを送信できます。このプロセスによって予測メンテナンスが可能になり、その結果、メンテナンス費用を削減しながらマシン稼働時間を向上させることができます。

産業用ロボットアームの利点

産業用ロボットアームは、以下のさまざまな利点を企業にもたらします。

  • 安全性の向上。ロボットアームは、危険な環境で稼働して人が怪我をする危険性の高い作業を実施することで、労働者の安全確保に役立ちます。
  • 効率性と生産性の向上。ロボットアームは、毎日 24 時間、疲弊することなく稼働できるため、企業は、製造や検査などの作業を常時続けて生産量を増加させることができます。
  • 精度の強化。ロボットアームはその性質から、高い精度と一貫性を必要とする作業において人よりも優れた精度と一貫性を発揮します。
  • 柔軟性の改善。企業の優先事項が変わるのに伴い、ロボットアームを新しい活動に簡単に再配置したり、あるいは必要に応じて自律移動ロボット (AMR)、固定型の組み立てラインプラットフォーム、壁または棚など異なるプラットフォームに取り付けしたりできます。

産業用ロボットアームのコンポーネント

人の腕に似ているために相応の呼称が付けられたロボットアームですが、通常は、ベースに取り付けて利用されます。

アームには、一定の動きを可能にする軸の役割を果たす複数の関節があります。ロボットアームに備えられた回転関節の数が大きいほど、より自由度の高い動きが可能になります。大半の産業用ロボットには 4 ~ 6 個の関節があり、同数の回転軸によって動作します。

回転関節に加えて、ロボットアームのコンポーネントには、ロボット・コントローラー、アーム先端ツール、アクチュエーター、センサー、ビジョンシステム、電力システム、ソフトウェアのコンポーネントがあります。

下の図でロボットアームの詳細をご覧ください。

ロボットアームのアプリケーション

産業用ロボットアームの主な利点の 1 つは、最も単純な作業から最も複雑な作業、最も安全な環境から最も過酷な環境まで、複数のアプリケーションに対応できる汎用性です。こうした作業の自動化により、人の労働者が潜在的に危険な状況で働くのを回避するだけでなく、労働者は顧客への対応など価値の高い仕事に従事できます。

以下は、製造業者によるロボットアームの最も一般的な用途です。

パレタイジング

ロボットアームは、商品や製品をパレット上に配置するプロセスの自動化に利用できます。このプロセスを自動化すると、パレタイジングの正確さ、費用対効果、予測可能性が高まります。また、ロボットアームの利用により、人身傷害の危険がある作業を労働者が行わずにすみます。

マテリアル・ハンドリング

マテリアル・ハンドリング・ロボットアームは、商品や資材を適切に保管、見つけやすいようにして、正確に運搬することで、安全で効率的な物流倉庫を実現させるのに役立ちます。こうしたプロセスの自動化により、顧客への商品配送の加速化、労働災害の防止、施設の効率性の向上が可能になります。

溶接

溶接作業は、自動車製造などの高度な産業環境でロボットによる実施が可能です。製品品質に重大な影響を及ぼすことを考慮すれば、溶接は、インライン品質検査向けのビジョンと AI で強化された高度なロボットにとって非常に適した作業です。

検査

品質検査は通常、生産ラインの最後に実施されますが、その場合、製造における品質問題の検出が遅れることになります。ビジョンと AI システムでロボットを強化することで、企業はリアルタイム検査の利点を得て、無駄とダウンタイムを削減できます。

ピックアンドプレイス

ピックアンドプレイス・ロボットは通常、最新の製造および物流の分野で利用されています。こうしたロボットは、高速かつ効率的に対象物を識別して把持し、ある位置から別の位置に移動させるための高度なマシンビジョン・システムを備えており、商品の製造と搬送の速度を高めます。

産業用ロボットアームの主な利点の 1 つは、最も単純な作業から最も複雑な作業、最も安全な環境から最も過酷な環境まで、複数のアプリケーションに対応できる汎用性です。

お客様の事例

さまざまな業界の企業が、インテリジェントなロボットアームの導入にインテルのテクノロジー、ソリューションとパートナーを利用しています。

例えば、自動車メーカーの Audi は、インテルおよび Nebbiolo Technologies と連携し、インテル製品を搭載したロボットアーム、マシンラーニング、予測分析を利用することで工場での溶接検査の向上および重要な品質管理プロセスの改善を実現しました。1

また、RightHand Robotics はインテルと提携し、ソフトウェア主導、ハードウェア強化型の RightPick2 プラットフォームによる、物流倉庫の自動フルフィルメント作業を革新しました。インテル® RealSense™ カメラを採用した RightPick2 は、コンピューター・ビジョン・テクノロジーを使用することで、優れた速度と信頼性で何千もの SKU のピックアンドプレイスを行い、あらゆるアイテムを自動処理できるエンドツーエンドのソリューションを提供します。

インテルのテクノロジーを利用した産業用ロボットアームの構築

AI 推論アクセラレーションを内蔵した CPU や GPU から無償のアルゴリズム、ミドルウェア、リファレンス実装まで、インテルは産業用ロボットアームの開発と導入に必要なハードウェアやソフトウェア、すぐに利用可能なソリューションを提供しています。

IoT や組込み用のインテル® プロセッサーは、運用自動化に必要なパワフルなコンピューティング性能を発揮します。

インテル® RealSense™ 製品は、ロボットアームに周辺環境を認識し、対象物を理解する機能を提供します。デプスカメラの確かな範囲によって深度マッピングが可能になります。これは、複数の環境のさまざまな条件でロボットアームが動作できるようにします。

また、OpenVINO™ ツールキットでは、開発者は、付属のモデル・オプティマイザーやランタイムおよび開発ツールを使用することで、包括的な AI 推論を最適化、調整、実行できます。これにより、スムーズな開発プロセスが促進され、一度書いたらどこへでも導入可能なモデルを実現します。

エッジ向けインテルのテクノロジーとソリューション

インテルのソリューション・ポートフォリオと業界エコシステムが、エッジ・ソリューションの設計と導入に役立ちます。

インテル® エッジ・ソフトウェア・ハブは、エッジ向けソリューションを学習、開発、テストするための検証済みソフトウェアを提供します。

産業向けインテル® エッジ・インサイトは、ビデオや時系列データの取り込みのための、検証済みですぐに導入可能なソフトウェア・リファレンス・デザインです。AI 分析を含み、ローカル・アプリケーションやクラウドに公開することができます。Docker を基盤とするため、お使いのアプリケーション向けに簡単に変更やカスタマイズできます。

インテル® Edge Controls for Industrial は、無償のソフトウェア定義された産業制御用のリファレンス・プラットフォームです。リアルタイムの決定論的コンピューティング、機能安全、そして IT のように管理できる標準規格の産業接続を統合します。

コンピューター・ビジョン・ソリューション向けインテル® ビジョン・プロダクトは、汎用 CPU の堅牢な選択肢とエッジへのビジョン導入向けに専用に設計されたアクセラレーターを提供します。

インダストリー 4.0 向けインテル® マシンビジョン・ソリューションは、ハードウェア、ソフトウェアおよびすぐに利用可能なソリューションを組み合わせることで、マシンビジョン、スマート・マニュファクチャリング、ロボット・ソリューションに重要な産業制御システム、産業オートメーション、予測メンテナンス、欠陥検出のための自動ビジョン検査などを実現します。

ロボットアームを次のレベルに引き上げるインテル

業界を問わず、企業は、新しいレベルの生産性と効率性を達成しながら同時に労働環境の安全性を改善する重圧を感じています。企業はインテルと連携することで、高度なセンシング・テクノロジー、AI、マシンおよびコンピューター・ビジョンやエッジ・ネットワーキングによりロボットアームを大幅に強化して、新しい生産性とパフォーマンス要件を達成するたけでなく、変化し続ける世界での競争力を高めることができます。

多関節ロボットアームとしても知られる産業用ロボットアームは、人の腕によく似た種類の機械です。動きを可能にする軸の役割を果たす、2 ~ 10 の回転関節を備えています。関節または軸の数が 1 つ増えるごとに、動きの自由度が高まります。ロボットアームの先端には通常、グリッパーと呼ばれることの多いマニピュレーターが搭載され、特定の作業実施を可能にします。

ロボットアームは、製造業、農畜産業、ヘルスケア、物流、小売業や接客業などを含む、さまざまな業界で利用されています。

ロボットアームの動きの範囲は幅広く、アーク溶接、マテリアル・ハンドリング、マシン・テンディング、パッケージングへの使用に適しています。また、製造業や物流分野ではパレタイジングやピックアンドプレイスのアプリケーションにも頻繁に利用されます。