製造および物流倉庫のオートメーションにおけるロボット

世界中で物流倉庫と製造施設のプロセス自動化をロボットがどのように実現しているかをご確認ください。

重要ポイント

  • 物流倉庫と製造のオートメーションでは、ロボット・テクノロジーが重要な役割を果たしています。

  • 人工知能とマシンビジョン・テクノロジーにより、ロボットが産業環境を視認、分析、把握できるようになりました。

  • AI 対応ロボットは品質、効率、安全性を高めるために作業を実行し、人間による監督はほとんど(または全く)必要ありません。

  • 自律移動ロボットと産業用ロボットアームは、ピックアンドプレースおよびマテリアル・ハンドリングの処理の自動化を支援しています。

  • IT/OT コンバージェンスにより、企業はインテリジェント・エッジ・ソリューションを導入して、ダウンタイムを減らし、プロセスの自動化を支えることができます。

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ロボットで製造と物流倉庫を進化させる

工業製品メーカーや物流倉庫ビジネスにとって、常に進化を続けている情勢の中で差別化を図るのは、ますます困難になっています。

消費者の消費が増しているため、業界全体で従業員の激務が広がっています。米国では 2021年第 2 四半期に個人消費額が 11.9% 増加しました。前の四半期の 11.4% 増加をさらに上回る数値です。1 これと並行して工業部門では大規模な労働力不足に直面しています。Deloitte と The Manufacturing Institute による 2021年5月の報告書によると、調査を受けた 800 社以上の米国製造メーカーの 77% 以上が 2021年以降の従業員採用と維持に問題が生じると予測しています。2

これら 2 つの要因に、急速なテクノロジーの発展とイノベーションを継続的に続ける競合会社の存在を合わせると、産業用ビジネスに未曽有の大混乱が生じることになるでしょう。

多くの企業は、課題の解決策としてだけでなく、市場において競合他社の一歩先を行く方法として、産業用オートメーションとロボットに目を向けています。しかしオートメションとは何でしょうか。どのように現在直面している課題を解決し、どのようにロボットが役立つのでしょうか。

物流倉庫オートメーションとは

物流倉庫オートメーションとは、ロボットなどのテクノロジーを駆使するプロセスで、労働者の最小限の補助でより効率的にプロセスを実行できるようにします。

最近まで物流倉庫オートメーションは無人搬送車 (AGV) により行われきました。AGV は事前に定義された経路に依存し、資材の配置などのタスクは労働者が行います。e コマースの指数関数的成長と柔軟性の高いテクノロジーへの需要向上により、AGV の限界も明らかになりました。

現在、物流倉庫オートメーションは、倉庫内を自律的に移動して労働者をサポートする、自律移動ロボット (AMR) により実行されています。また、産業用ロボットアームは、オブジェクトのピッキング、配置、並べ替えに使用される一般的なオートメーション・テクノロジーです。どちらのテクノロジーも増え続ける e コマースの受注処理に不可欠なものになっています。

AMR とロボットアームは、ビジョンセンサー (2D/3D カメラなど) で強化され、高度な運用を実現して革新的なプロセスをサポートする人工知能 (AI) テクノロジーにより支えられています。ビジョンおよび AI に対応してロボットは視認できるため、物体を検出、分類、並べ替え、ピッキング、梱包などが可能になります。人間の作業員よりも正確で一貫的な動作が行えることが多く、エラーや事故も発生しにくくなっています。

製造オートメーションとは

物流倉庫オートメーションを実現するにはロボットが重要なのと同じく、工場に自動化をもたらすうえでもロボットが不可欠です。

製造オートメーションではテクノロジーを駆使して生産プロセスを効率化しています。この結果、製造メーカーではコストの削減と生産量の増加が可能になっています。

ロボットはすでに数十年にわたて製造に用いられてきましたが、最近の AI の導入によりビジネスに革新的な変化が生じました。AI はロボットによるタスクの実行能力を高め、より多くのタスクを引き受けることを可能にしました。例えば、ロボットは現在、製造時にパーツの点検も実施し、問題がある場合はリアルタイムで検出できるので、総合的な製品または工程の品質と生産量が向上します。AI 搭載ロボットアームは、産業用セクターによっては、労働者が深刻なけがを負ったりするような危険な環境を複雑なタスクを実行すること、安全性を高めています。また、AI により、ロボットを別のタスク用に再利用する際に、再トレーニングや再学習が容易になります。これは運用コストの削減に役立ち、労働者はより複雑な高価値業務に専念できます。

ロボットは汎用性に優れているため、製造施設やアセンブリーライン全体で溶接、塗装、切断、インライン検査などの作業に用いることができます。また、ロボットは労働者のそばで稼働し、重量物の昇降、移動、固定など、製造工程の日常的だが負荷の高い危険な作業から守るためにも使用されます。

物流倉庫オートメーションと製造オートメーションを実現する方法

産業ビジネスは、工場フロアや物流倉庫でロボット稼働によるオートメーションを最大限に活用する前に、まず設置元に近い複数のセンサー、アプリケーション、プロセスからのデータと情報を収集、統合、分析できることが必要です。

これは IT/OT コンバージェンスを通じて達成できます。データを処理するソフトウェアとハードウェアである情報テクノロジー (IT) と、産業用途の制御を行うシステムである運用テクノロジー (OT) との統合です。この統合により、運用システムをほぼリアルタイムで調整可能になる応答性に優れた相互に接続されたプラットフォームが構築され、ダウンタイムの短縮、工程の自動化、新しい画期的なソリューションの情報提供という素晴らしい結果をもたらします。

この新しい統合システムを使用することで、企業は更なるコストの削減と利益の向上を可能にする画期的なインテリジェント産業用エッジ・ソリューションを統合できます。例: 効率を向上するために製造と物流の自動化をサポートする人工知能 (AI) 搭載 AMR、製品の不具合の検出、バーコードの読み取り、製品上の適切なラベル位置を確認するマシンビジョンを搭載した産業用ロボットアーム、マテリアル・ハンドリングで作業員の安全を守るセンサーが統合された協働ロボット (コボット)。

物流倉庫と製造におけるロボットの利点

企業は IT/OT コンバージェンスを実現すると、効果的にロボットを使用して工程を自動化し、その他いくつかの利点が得られるようになります。

  • 効率性と生産性の向上。ロボットは、複雑な作業やニッチな作業、反復性が高い作業や変数の多い作業など、多種多様のタスクを休息をとる必要なく実行できます。これにより生産、安全点検、その他繰り返しの実行が必要な作業が可能になり、生産量が増加します。
  • 製品の品質向上。極めて厳密な精度が求められる作業の場合、ロボットアームには最初から備わっている精度、一貫性、正確性が大きな利点となります。カメラを搭載し、AI による強化されているロボットは、アセンブリーラインでリアルタイムの点検を実行して作業のやり直しを減らすことで、製品の品質向上に役立っています。
  • 労働者の安全性の向上と人間工学的に配慮された作業環境。危険な環境へのアクセスが必要な作業、反復性が高く過酷な動作を求める作業または危険な化学物質などの処理が関わる作業では、労働者が負傷する危険性が大きく増加します。このような状況ではロボットを使用することで、労働者を危険から守り、負傷する可能性を回避することができます。
  • コスト削減額の増加。効率性と品質管理の向上、廃棄の削減、ダウンタイムの減少を通じ、オートメーションにおけるロボットの使用は会社にとってコストの削減に直結します。
  • 廃棄の削減。適切にプログラミングしたロボットは、非常に許容範囲が厳しい繊細な作業も適切に完了できます。製品の製造において変動がないということは、欠陥品、破損したパーツ、作業のやり直しの必要性を排除し、結果として廃棄を減少できます。
  • サイクル時間の高速化。製造メーカーが工程にロボットを統合する最も一般的な理由の 1 つは、製造サイクルの時間短縮です。作業員による作業よりも高速に運用できる能力、休息なしに作業を完了できる信頼性、運用の精度などから企業はロボットの採用に踏み切り、そのおかげでサイクル時間の最適化にも役立ちます。

ロボット物流倉庫と製造オートメーション・テクノロジー

物流倉庫と製造のオートメーションで最も一般的に使用されているロボットは次の通りです。

自律移動ロボット (AMR)

自律移動ロボットとは、人工知能、洗練されたセンサーのセット、周囲の環境を把握して自律移動を可能にするコンピューティング・テクノロジーを使用するロボットの一種です。カメラとセンサーにより AMR は障害物を認識し、作業の完了に向けて移動中には AI 推論で障害物を回避することが可能になります。

産業用ロボットアーム

産業用ロボットアームは高速で信頼性が高く、正確です。パーツの塗装、溶接、研磨といった反復的作業を自動化する目的で工場で使用されています。物流倉庫の場合、物流用コンベアから商品をピッキングして選別し、顧客の注文に対応するために使用されます。ロボットアームの主な利点は、アプリケーションと環境における汎用性です。数多くの環境で広範囲にわたる作業を遂行するようにプログラム可能なため、産業用オートメーションでは最も一般的に使用されているロボットの一種です。

協働ロボット

コボット (別称協働ロボット) は、作業員と安全にスペースを共有して、より多くの作業ができるような、統合安全性機能を備えたロボットのことです。Association for Advancing Automation によると、コボットには力と圧力の制限、安全性の監視による停止、速度と分離、手の補助の 4 つのタイプがあります。

産業用オートメーション・アプリケーション

物流倉庫と製造にロボットを導入する主な利点は、運用の柔軟性と汎用性です。現在のロボットの使用事例をいくつか紹介します。

ピックアンドプレイス

ピックアンドプレイス・ロボットは通常、最新の製造および物流の分野で利用されています。こうしたロボットは、高速かつ効率的に対象物を識別して把持し、ある位置から別の位置に移動させるための高度なマシンビジョン・システムを備えており、製造と搬送の速度を高めます。

パレタイジング

パレタイジング用ロボットは、商品や製品をパレット上に配置するプロセスの自動化し、パレタイジングの正確さ、費用対効果、予測可能性が高まります。また、ロボットアームの利用により、人身傷害の危険がある作業を労働者が行わずにすみます。

マテリアル・ハンドリング

マテリアル・ハンドリング・ロボットは、商品や資材を適切に保管、見つけやすいようにして、正確に運搬することで、安全で効率的な物流倉庫を実現させるのに役立ちます。こうしたプロセスの自動化により、顧客への商品配送の加速化、労働災害の防止、施設の効率性の向上が可能になります。

労働力の不足に対応しながら生産需要を維持するため、Yamaha Motor Co., LtdTier IVeve autonomy の協力を受けて、自律型電気自動車を製造現場に導入して施設内および施設間の製品の移動を行いました。3D ビジョンセンサー、Tier IV の Autoware OS およびハイパフォーマンス・コンピューティング向けインテル® Xeon® プロセッサー・ファミリーを使用することで、この AI 搭載の無人車両は建物の内外で運転され、細い通路、段差、傾斜を通行できます。また、自動的に周囲の環境に合わせて動作を調整し、障害物や経路上の人などを回避します。

インテル® テクノロジー

インテル® テクノロジー、エンドツーエンドのソリューション、グローバル・パートナーのエコシステムを活用することで、企業は以前より容易にロボットを開発・導入し、ワークフローに組み込めるようになりました。結果として企業は素晴らしい利点と画期的なイノベーションを実現するまでの時間が短縮されます。

IoT および組込み機器向けインテル® プロセッサーは、エッジでのデータ処理とリアルタイムに近い重要なインサイトの提供に必要な、パワフルなコンピューティング性能を発揮し、統合機能を提供します。インテル® RealSense™ 製品は、ロボットに周辺環境を認識し、対象物を理解する機能を提供します。強力な一連なステレオデプス・カメラとトラッキング用カメラにより深度マッピングと自己位置推定とマッピングの同時実行 (SLAM) が可能になります。これは、ARM とロボットアームが複数の環境のさまざまな条件で動作するために不可欠な機能です。

インテル® ディストリビューションの OpenVINO™ ツールキットを使用すると、開発者はモデルの変換と最適化をして、ディープラーニングの推論アプリケーションで高性能を実現できます。また、このツールキットは開発プロセスを円滑化を促進し、「Write once, deploy anywhere (一度書けばどこにでも展開できる)」モデルを実現します。

インテルの自律移動ロボット向けエッジインサイト・ソフトウェア開発キットを利用すると、開発者はエンドツーエンドの AMR アプリケーションを容易に開発、構築、導入することが可能になります。

運用レベルをさらに高めたい製造メーカーの場合、インテル® Edge Controls for Industrial により産業制御用システムをソフトウェア・デファインド・アーキテクチャーへと移行できます。これにより管理が容易になり、最高レベルの最新ソリューションを迅速に採用できます。

インダストリー 4.0 向けインテル搭載マシンビジョン・ソリューションは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで、マシンビジョン、スマート・マニュファクチャリング、ロボット・ソリューションに重要な産業制御システム、産業オートメーション、予測メンテナンス、欠陥を検出する自動ビジョン検査などを実現します。

物流倉庫および製造オートメーション用ロボットでインテルが果たす重要な役割

継続的に変容する環境で運用する物流倉庫と製造関連企業は、新たな課題を克服するためでなく、一歩先を行くためにインテルの革新的方法の採用を模索しています。ロボットによる自動化では、生産性、労働者の安全性、製品の品質の向上が実現できます。エンドツーエンドのソリューション、比類のない専門知識、グローバルなパートナー・エコシステムを備えたインテルは、ロボットのオートメーションに取り組もうとしているあらゆる規模の企業を強化します。

よくある質問 (FAQ)

よくある質問

自動化された製造システムとは、ロボット・ソリューションなどのテクノロジーを使用して生産工程の効率を高めるシステムのことです。

物流倉庫内の各種プロセスは、在庫の移動などのシンプルな作業から、フォークリフトの運転などの複雑な作業まで、施設全体で自動化することが可能です。その他の自動化が可能なプロセスの例としては、パッケージのピッキング、選別、梱包、発送、返品などが挙げられます。

物流倉庫のオートメーションは、あらゆる規模の会社が競合会社が多く競争の激しい業界で生き残るうえで重要です。企業は、効率の向上、コストの削減、労働者の安全と満足度の改善、顧客サービスの強化、顧客満足度の改善を実現できます。