量子コンピューティングがデータ処理の世界を一新

量子コンピューティング、基礎研究の段階から実用システムの檜舞台へ。

インテルラボはオレゴン州で量子プロセッサーの製造を進めており、今後 10 年以内の量産化を視野に、システムレベルのエンジニアリングを行っています。

量子コンピューティングとは

一般的な演算処理の世界では、2 進コード化の技術を基礎として、ビットの 0/1 を「オフ / オン」で電子的に置き換えます。一方、量子コンピューティングは、従来の演算処理とは大きく異なり、ビットではなく同時に複数の状態を表す量子ビットを採用します。量子ビットとは、古典物理学の世界で一般的に定義されている単位です。量子システムでは、量子ビット自体と、量子ビットによる重ね合わせやもつれ (エンタングルメント状態) などの量子現象を活用してデータを表示する手法であり、かつてない水準で超並列処理を行う力を秘めています。

インテルラボは、社内で進展中の研究活動に、他の組織とのコラボレーション、国際的な学術界および産業界を巻き込んだ投資活動を組み合わせ、さらにインテルが業界を牽引するシリコン製造技術とも一体化させることで、量子コンピューティングの研究を前進させています。数十年に及ぶ研究の結果、20 世紀の大半を占めた基礎研究の段階を脱し、ここ数年の間に量子コンピューティングを搭載した初のハードウェア部品の開発にこぎ着けました。

量子コンピューティング研究の時代的推移。

インテルラボの研究活動が 49 量子ビットの超伝導プロセッサー Tangle Lake (開発コード名) の開発として実を結びました。オレゴン州ヒルズバラの同社施設で同プロセッサーを製造しており、300 ミリメートルのパッケージ 1 個に 49 量子ビットを配置することに成功しました。インテルが製造したこの第 3 世代量子プロセッサーは、旧モデルの 17 量子ビットを大きく上回る進化を遂げました。

量子コンピューティング・システムの完全実装化にはまだ 10 年かかると予想されますが、Tangle Lake の開発は研究開発が一歩前進したことを象徴しています。量子システムには、自然現象をかつてない水準でシミュレーションおよび分析する能力が備わっているため、現在の超伝導型では天文学的な演算時間を要する気象予測を迅速に行える時代が到来するでしょう。一人ひとりに合わせたゲノム医療、宇宙物理学、そして環境問題の解決など、多種多様な分野で画期的な発明や開発に貢献することが大いに期待されています。

49 量子ビット・プロセッサー Tangle Lake。

産業界および学術界とパートナーシップを組み、開発を進展中
実用的な量子コンピューティング・システムの開発には課題が山積しており、困難な道のりとなります。例えば、量子ビットは極めて繊細な特徴を持っています。測定時などに少しでも干渉が入ると量子状態から従来型 (2 進法) の状態に戻り、データ損失が発生してしまいます。また、Tangle Lake を作動するには、絶対零度からわずか 1 ケルビンの範囲内に極低温環境を保つ必要があります。

加えて、商用規模で導入するには少なくとも 100 万量子ビットが必要となるため、大きなハードルが待ち構えています。にもかかわらず、量子プロセッサーのサイズは比較的大きく、この問題は看過できない制約となっています。例えば Tangle Lake は約 3 平方インチです。こうした各種課題を踏まえて、インテルは設計、モデリング、パッケージ実装、および製造手法を鋭意開発することで、より一層複雑性の高い量子プロセッサーの製造に取り組んでいます。

インテルは 2015年に、オランダの量子コンピューティング組織 QuTech とのコラボレーションを始動させました。そして、同組織に自社で開発中のエンジニアリング・テクノロジー環境を提供するために、5,000 万米ドルに及ぶ資金を投じ、同分野の研究開発を推進しています。QuTech は、オランダ応用化学研究機構とデルフト工科大学により、量子コンピューティング分野の応用研究および教育の場として創設されました。インテルが製造、電子制御、アーキテクチャーの分野で培った専門性を QuTech と連携させることで、初の実用的な量子コンピューティング・システムの開発に向けて、最高水準の研究環境を整備しています。

現在、オレゴン州で製造した Tangle Lake チップをオランダの QuTech に搬送中です。今後、同チップの分析工程に入ります。QuTech は、接続、制御、複合的な量子もつれなどの各課題を解決するために、量子にかかる負荷をシミュレーションする堅牢なテクノロジーを開発しています。この研究で得た知見は、システムレベルでの量子コンピューティングの設計研究を加速するだけでなく、設計および製造段階から将来世代のテクノロジー試験へ円滑に移行する一助となります。

インテルラボは、量子コンピューティング分野全体を横断して、基礎およびシステムレベルの両面で QuTech 以外の組織とも連携を深めています。QuTech、トロント大学、シカゴ大学などと連携して、量子デバイス自体をはじめ、エラー訂正、ハードウェアおよびソフトウェアに対する制御メカニズム、そして量子技術を実用化するための手法およびツールに至るまで、多岐にわたる共同研究を進めています。

超伝導を越えるスピン量子ビットの将来性
超伝導型 Tangle Lake などの量子プロセッサーに固有の各種課題を乗り越えるために、インテルラボと QuTech はスピン量子ビットの研究も進めています。スピン量子ビットはシリコン内の単一電子のスピンに基づいて動作し、マイクロ波パルスで制御します。超伝導量子ビットとは異なり、スピン量子ビットはシリコン内で作動する既存の半導体部品と極めて類似しているため、既存の製造テクノロジーを活用できる可能性があります。加えて、以下の優れた性能を発揮する可能性も秘めた有望な研究分野です。

• 動作温度: スピン量子ビットも極低温環境で動作させる必要がありますが、超伝導量子ビットほど要求水準は高くありません (20 ミリケルビンに対して約 1 ケルビン)。絶対零度に近づけるにつれて極低温環境を維持する難易度も飛躍的に高まるため、システム設計の複雑性を大幅に解消する可能性があります。

• 安定性と耐久性: スピン量子ビットは超伝導量子ビットより波長が長くなると予想されるため、アルゴリズムをプロセッサーに実装しやすくなります。

• 物理的なサイズ: 超伝導量子ビットより格段に小さく、理論上は 1 平方ミリメートル内に 10 億スピン量子ビットを搭載できます。最終的な量産段階では数百万の量子ビットが必要になると予想されています。従来のトランジスターと構造が類似するスピン量子ビットは、量子コンピューティング・システムの導入規模を拡大するうえで大きな長所を持つ可能性があります。

現在、研究者たちはインテルの 300 mm プロセス・テクノロジーでスピン量子ビットを開発しており、小型のスピン量子ビットをシリコン内に配置することに成功しています。現実に、QuTech は小型のスピン量子ビットを搭載した量子コンピューティング・システムの実験をすでに始動させています。また、オープンソースのソフトウェアを提供する QuTech は、スピン量子ビットの測定およびキャリブレーションを行う Python* パッケージ「Quantum Technology Toolbox」を開発しました。

量子回路をスケジュール設定するための 2 段階アプローチ

既存の量子ハードウェアの量産化に向けた取り組みが進むにつれて、最小限の動作数で量子ゲートをスケジュール設定する作業が必要になります。本研究資料では、量子ゲート回路をスケジュール設定する効果的な 2 段階アプローチを紹介します。

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パートナーシップ

QuTech

QuTech は、量子コンピューティングおよび量子インターネット分野の応用研究センターとして、デルフト工科大学とオランダ応用化学研究機構により共同で創設されました。

CQIQC

Centre for Quantum Information and Quantum Counting は、進展の目覚ましい学際的分野の研究に向けたコラボレーションを促進しています。

シカゴ大学

分子工学研究科は、新進気鋭の分野で工学研究および教育の牽引役を担い、分子レベルの科学技術の画期的な応用を促進しています。

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ニューロモーフィック・コンピューティングと確率的コンピューティング

AI 分野の次なる変革では、コンピューターの動作を人間の脳により一層近づける研究を推進しています。

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コンピューティングの未来を切り開いているのは黎明期のテクノロジーです。次なる技術革新の最前線を担う主要分野を紹介します。

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