未来の AI 時代を切り開く

斬新なアルゴリズム手法を採用し、人間の脳の働きを模倣。

インテルラボが推進する新しい AI は、従来型のコンピューターと比較して、格段に人間の認知機能に近づいています。

ニューロモーフィック・コンピューティングとは
初期の AI はルールベース方式で、従来型の論理演算を模倣することにより、範囲の狭い特定の問題領域に筋の通った解決策を提供していました。例えば、プロセスのモニタリングや効率性の改善に適した仕様でした。現在の第 2 世代に進むと、映像内容の分析にディープラーニング・ネットワークを活用するなど、感知や知覚に注力するようになりました。

来たるべき第 3 世代 AI では、理解力や自動適応力など人間の認知機能に関わる研究分野を掘り下げることになるでしょう。ニューラル・ネットワーク上で学習や推測を行う AI は、全体の背景や常識を欠き、柔軟性のない決定論的見解に大きく依存していました。しかし、第 3 世代は、こうした AI 特有の「脆弱性」を乗り越えようとしています。人間の一般的な活動を自動化するために、次世代 AI には予想外の状況や曖昧な状況への対応が強く求められています。

インテルラボは、この第 3 世代 AI の開発に貢献するコンピューター・サイエンス研究を推進しています。とりわけ、人間の神経細胞の働きと仕組みを模倣するニューロモーフィック・コンピューティング分野と、自然界の不確実性、曖昧さ、矛盾に対処するアルゴリズム手法を搭載した確率的コンピューティング分野に注力しています。

ニューロモーフィック・コンピューティング研究の主要テーマ
ニューロモーフィック研究の主な課題は、人間の脳と同レベルの極めて高い電力効率を保ちつつ、人間と同様に脈絡のない刺激から柔軟に学習できる AI を開発することです。ニューロモーフィック・コンピューティング・システム内の演算処理は、構造上は人間の神経細胞と類似しています。スパイキング・ニューラル・ネットワーク (SNN) は斬新な構造で、人間の神経細胞体を巧みに模倣しています。

SNN 内の各「ニューロン」は他と独立して働き、ネットワーク内に点在する他のニューロンにパルス信号を送信することで、受信先のニューロンの電子状態を直接変更します。SNN は信号自体と送信時期をコード化することで、刺激に反応する人工ニューロン間をつなぐシナプスを大規模に再配置し、自然な学習プロセスを模倣します。

人間の脳を模倣したコンピューティング回路を搭載したシリコン基板の生産
インテルラボは 2017年11月、研究者たちが SNN を実装するためのシステムとして、第 5 世代の自己学習型ニューロモーフィック試験用チップ Loihi (開発コード名) を発表しました。SNN アルゴリズム用に最適化した専用のアーキテクチャー内に 128 個のコアを搭載し、14nm プロセス・テクノロジーで製造された Loihi は、SNN の動作に対応しています。SNN には、従来の畳み込みニューラル・ネットワークのような学習作業は不要です。また、処理性能も徐々に向上しており、スマートなプロセッサーに仕上がっています。

Loihi チップには計 13 万のニューロンが組み込まれ、各ニューロンは他の数千に及ぶニューロンと通信します。開発者は、128 コアそれぞれに組み込まれた学習エンジンを介し、オンチップのリソースにアクセスして操作します。SNN 専用にハードウェアを最適化しているため、脈絡のない入力環境下にあっても、自動動作および継続学習が必要なシステムの学習速度を大幅に加速できます。さらに、極めて低い消費電力で、ハイパフォーマンスかつ大容量を実現しました。

また、インテルラボは、各種研究団体が Loihi ベースの実験システムを利用できる環境を積極的に整備しています。ニューロモーフィック・テクノロジーは、(生産段階ではなく) まだ研究段階にあるため、Loihi ベースの実験システム数は極めて少ないのが実情です。そのため、インテルラボでは、Loihi ベースのインフラストラクチャーをクラウド・プラットフォームで提供し、研究団体の利用を促進しています。

インテルの自己学習型ニューロモーフィック研究チップ「Loihi」(開発コード名) (写真提供: インテル コーポレーション)

学際的な取り組みでニューロモーフィック・コンピューティング研究を前進
ニューロモーフィック・コンピューティングは、計算論的神経科学、マシンラーニング、マイクロエレクトロニクス、コンピューター・アーキテクチャーをはじめとする学際的研究が密接に絡み合う分野です。インテルラボは、学術界、政府、産業界の英知を結集し、ニューロモーフィック・コンピューティング全体に貢献する補完的なアーキテクチャー、ツール、手法を連携して研究する場として、Intel Neuromorphic Research Community を創設し、。

神経科学の原理を実用的なコンピューター技術に転用する取り組みを進めています。例えば、プログラミング・モデルおよびツールをはじめ、高度な SNN アルゴリズムの開発を主要なテーマに据えています。とりわけ、この取り組みは、実世界の問題解決に役立つアプリケーションの開発や、SNN ベースの結合システムが外部のデータおよびコンピューター・システムと通信する仕組みの解明など、Loihi 研究チップの実験や開発を促進する役割を担っています。

本コミュニティーの会員団体は、研究成果を公開すること、そして連携して研究することに同意しています。インテルラボは、資金援助や Loihi の開発状況の共有などを通じて、コミュニティー内の一部の研究活動を支援しています。

確率的コンピューティング研究の主要テーマ
AI を進化させるうえで、自然界のデータに必然的に備わる不確実性やノイズへの対処は、重要な課題となります。アルゴリズムは、人間ならば直感的に対処できるがコンピューター・システムには苦手な自然界のデータの取り扱いに習熟する必要があります。

不確実性を理解して推定する能力が備われば、幅広い AI 領域で高度な利用用途が広がるでしょう。例えば、医療画像の分野に計測の不確かさはつきものですが、人間であれば放射線技師の確認を要する画像や、不確実性が低い状態で診断画像に表示されるべき画像の優先順位を付けることができます。自宅でスマートアシスト診断を行うときに、患者 (ユーザー) の意図が不確かな場合、エージェントは状況を明確にするための質問を投げかけることで、理解度を高めることができます。

自動運転車の研究において、自動運転車を走行させるシステムには、GPS ルートに沿ったナビゲーションや速度調節など、従来のコンピューター処理に適した作業が数多くあります。現在の AI テクノロジーを活用すると、予期せぬ歩行者との衝突事故を回避するなど、外部の状況を認識して対応できるようになります。

しかし、このような機能を活用して完全な自動運転車を完成させるには、ベテランドライバー並みの専門性をアルゴリズムに習得させる必要があります。GPS やカメラなどのセンサーによる位置予測は、不確実性をはらんでいます。また、近くの庭で子どもがボール遊びをしていれば、ボールが道に転がり出て、子どもが飛び出してくる可能性もあります。隣車線の運転が荒い場合にも注意が必要です。このような一連の知覚および反応を要する場面では、情報の入出力に一定程度の不確実性はつきものです。正しい行動を取れるかどうかは、状況を認識して理解し、少し先の展開を予測できるかにかかっています。こうした判断には不確実性がつきものであり、認知力と理解力が求められます。

不確実性の管理とモデリング
一般に、確率的コンピューティングは、自然界のデータに本来備わった不確実性に対処します。不確実性が AI システムに作用するケースは、主に次の 2 パターンです。

  • 自然界のデータに対する知覚および認識にまつわる不確実性: 原因としては、ハードウェアであるセンサーや動作環境に起因する入力面の不確実性と、学習データと採取データ間の差異に起因するモデル認識の不確実性が挙げられます。
  • 動的な事柄を理解および予測する際の不確実性: 人間の行動や意図の予測がその一例です。このような動的な事柄の予測を試みる場合、必ず人間の意図をモデリングするとともに、モデリング内の不確実性を把握する必要があります。その後、意図および目的を効率的に予測するために継続して観察を行い、不確実性を低減します。

この分野の主な課題は、効率的に不確実性を特徴付けて定量化し、計算や結果に反映させ、該当データと相互作用のあるモデルを蓄積させることです。

出力を決定論的な数値ではなく確率で表す 1 つの間接的根拠としては、すべての結論が暫定的であるとともに、一定程度の確実性と相関関係にあることが挙げられます。前述の自動運転車を例に出すと、視界から子どものボールが消えたとか、隣車線の運転ミスが増えたなどをきっかけに、将来起こりうる事態に備えて対応を取るべきと確信するケースが考えられます。

確率的手法は、直感的判断や予測を可能にするだけでなく、既存の AI に搭載したブラックボックスになりがちな認知システムに一定程度の透明性を確保する効果もあります。例えば、ディープラーニング・エンジンは、不確実性を測定することなく結果を出力します。確率的手法はこのようなエンジンの性能を補強し、不確実性に対して一貫性のある推測結果を出力するだけでなく、予測の信頼性まで判別できるようにします。不確実性の可視化は、AI システムによる意志決定の信頼性を高める一助となります。

決定論的手法が予測可能かつ反復可能な結果を出力できる一方、確率的手法は未知または測定不能で不規則な環境下にあるため、そのような結果を出力できません。自然界のデータにはらむノイズ、不確実性、矛盾を組み込むプロセスは、人間と同等またはそれ以上の理解力、予測力、判断力を持つコンピューターを生み出すうえで極めて重要です。データ分析にランダム性を取り入れた先行研究としては、定評のあるモンテカルロ・アルゴリズムを用いた確率性分析などがあり、こうした先行研究に立脚して開発を進めています。

確率的コンピューティング・エコシステムの構築
不完全かつ不確実なデータを処理しようという最大の動機に加えて、確率的コンピューティングの成功は、幅広いコンピューター・テクノロジーと連携および一体化できるかにかかっています。インテルラボは、Intel Strategic Research Alliance for Probabilistic Computing を創設し、学術界および産業界の垣根を越えて橋渡し役を担っています。

この取り組みは、基幹となるハードウェアおよびソフトウェアのビルディング・ブロックに確率性とランダム性を組み込むことで、研究所を離れて実用世界へ確率的コンピューティングを躍進させることを目標としています。本アライアンスでは、次世代 AI に認知力と判断力を備えさせるために、当該分野の研究成果を結集して研究を前進させています。

Loihi: オンチップ学習機能を備えたニューロモーフィック型メニーコア・プロセッサー

Loihi チップは、プログラム可能なシナプス学習ルールをはじめ、斬新な各種機能を搭載しています。

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