電源の安定化
DC-DCコンバーターは、非安定化電圧源から安定化電圧を得るのに使用します。非安定化電圧源としては、振幅の変化によって電圧が変動する整流されたライン電圧があります。安定化電源は、入力電源の電圧の変動や可変出力負荷が存在する場合でも、求めるレベル (3.3V、2.5Vなど) の安定した DC 出力電圧を実現します。安定化電源ソリューションを決定する際の検討項目は、以下のとおりです。
- 使用可能な入力電圧
- 目的の出力電圧の大きさ
- 出力電圧の昇圧または降圧、あるいはその両方を行う能力
- DC-DC コンバーター効率 (POUT / PIN)
- 出力電圧リップル
- 出力負荷過渡応答
- ソリューションの複雑さ(1 個の IC によるソリューション、パッシブ・コンポーネント数、コントローラー、および外部 FET)
- スイッチング周波数(スイッチ・モード・レギュレーターに関して)
The following sections describe several different voltage regulators.
リニア・レギュレーター
リニア電圧レギュレーターは、降圧 (出力電圧が入力電圧より低くなる) 用途でよく使用されます。リニア・レギュレーターは固定出力電圧、または外部バイアス抵抗を使用した可変出力電圧でも使用できます。
リニア・レギュレーターの利点は、シンプルな実装、最小限のパーツ (固定出力のケース内の IC のみ) および低出力リップルです。リニア・レギュレーターの主なデメリットは、その効率の低さです。それは、コンバーターがオンになったままで電流を流し続けるので、リニア・レギュレーター IC 内で大きな電力が消費されます。リニア・レギュレーターは、入力電圧と出力電圧の差が小さく、変換での効率が問題にならないときに使用してください。
スイッチング・レギュレーター
スイッチング・レギュレーターは、一般に昇圧および降圧の両方のアプリケーションに使用され、パルス幅変調(PWM)を実装している点がリニア・レギュレーターとは異なります。スイッチング・レギュレーターは、一定周波数および可変デューティー・サイクルで動作する電流スイッチ(IC レギュレーターの内部または外部)によって出力電圧をコントロールします。スイッチング周波数は通常、数 kHz から数百 kHz です。スイッチのデューティー・サイクル比により、負荷状態および入力電圧に対応する出力電圧の上昇または下降の程度と速度が決まります。スイッチング・レギュレーターには、可変スイッチング周波数およびデューティー・サイクルの両方を使用しているものもありますが、これらは通常、FPGA/CPLD アプリケーションには使用されません。
スイッチング・レギュレーターでは明らかに変換効率が良くなります。 出力電圧が負荷に対して十分なときは、パワーパス(FET スイッチ)内で最小限の電力が消費されます。基本的にパワー・コンバーターは、スイッチのデューティー・サイクルが最小なので、電力が必要ないときには「シャットオフ」します。一方、ボード上に何個かの受動素子が必要で回路が複雑になる点があります。高電流アプリケーションの場合、IC コンバーターは外部 FET スイッチ用のコントロール・ロジックとしてのみ動作するため、外部 FET IC が必要です。また、出力電圧リップルノイズも問題であり、これは一般に電源付近および負荷にあるバイパス・キャパシターで処理されます。
バック・コンバーター
バック (または降圧) 電圧コンバーターは、入力電源より低い平均電圧を出力します。図 1 は理想的なコンポーネントを使用した基本的なバックトポロジーを示しています。インダクターは出力負荷インピーダンスへの電流源として働きます。FET スイッチがオンのとき、インダクター電流が増加し、インダクターの両端に正の電圧降下および入力電圧よりも低い出力電圧を誘導します。FET スイッチがオフのとき、インダクター電流は放電してインダクターの両端に負の電圧降下を誘導します。インダクターの 1つのポートはグランドに接続されているので、他のポートは目的の出力電圧より高い電圧レベルになります。出力キャパシターはローパスフィルターとして働き、インダクターを流れる電流が変動する結果生じる出力リップルノイズを低減します。ダイオードは FET スイッチがオフのときに、インダクターへの電流経路を提供します。
図 1.バック・コンバーター。
同期式バック・コンバーター
同期式バック・コンバーターは、基本的にはダイオードを別の FET スイッチに置き換えたバック-ステップ・ダウン-コンバーターと同じです。上側の FET スイッチはインダクター電流を充電し、バック・コンバーターと同じように動作します。スイッチ・コントロールがオフのとき、下側のFET スイッチがオンになり、放電時のインダクターへの電流経路を提供します。このトポロジーでは、より多くのコンポーネントと追加のスイッチ・ロジック・シーケンスが必要ですが、より高速なスイッチオン時間とダイオードよりも低い FET 直列抵抗(rdson)により効率を改善します。
図 2.同期式バック・コンバーター。
ブースト(Boost)コンバーター
ブースト、またはステップ・アップ・コンバーターは、入力電圧よりも高い平均出力電圧を生成します。図 3 はダイオード、FET スイッチ、インダクターを切り替えた際のバックトポロジーの変動を示しています。FET スイッチがオンのとき、ダイオードは逆バイアスされ、入力電圧から負荷を分離し、インダクター電流を充電します。FET スイッチがオフのとき、出力負荷はインダクターおよび入力電圧からのエネルギーを受け取ります。インダクター電流が放電を始めると、インダクターの両端に負の電圧降下を誘導します。インダクターの 1つのポートは入力電圧でドライブされるので、他のポートはより高い電圧レベルになり、これがブーストまたはステップアップ機能です。バック・コンバーターと同様、キャパシターはローパスフィルターとして働き、インダクターを流れる電流が変動した結果生じる出力リップルノイズを低減します。
図 3.ブースト・コンバーター。
バックブースト(Buck-Boost)・コンバーター
バックブースト・コンバーターは、正の入力電圧から負の出力電圧(すなわち、入力電圧のコモン/グラウンド・ポートに対して負)を生成できます。バック・コンバーターと同様に、上記のトポロジーではダイオードとインダクターが入れ替わっています。FET スイッチがオンのとき、ダイオードは逆バイアスされ、インダクター両端での正の電圧降下によって誘導されるインダクター電流を充電します。FET スイッチがオフのとき、インダクターはコモン・グラウンド・ノードを通して出力負荷にエネルギーを供給し、インダクターの両端に負の電圧降下を誘導する電流を放電します。1 つのインダクターポートはコモン/グラウンドに接続されるので、他のポートはコモン/グラウンドより低い電圧レベルになり、出力負荷の両端は負の出力電圧レベルになります。
図4.バック・ブースト・コンバーター。