マイクロプロセッサーの位置付けと 4 つの基本工程

マイクロプロセッサーは、膨大な数のトランジスターを連携させることで、コンピューターを構成するさまざまなパーツを制御したり、計算処理を行ったりしています。そして、その仕組みは、年を追うごとに高度になってきています。ここでは、マイクロプロセッサーの役割と処理性能を高めるためのさまざまな高速化技術を解説していきます。

コンピューターの中枢を担う司令塔「マイクロプロセッサー」

コンピューターは、マイクロプロセッサー、メインメモリー、グラフィックス、ドライブ類、その他の周辺機器など、さまざまなパーツから構成されています。その中でも特にマイクロプロセッサーは、さまざまな計算処理や周辺パーツの制御を担っているコンピューターの大事な頭脳です。そして、PC やサーバーなどのコンピューターでは、マイクロプロセッサーも含む多くのパーツが、チップセットと呼ばれる半導体チップを介して接続されます。従来のコンピューターでは、2個以上の半導体チップ (複数のチップ構成ゆえにチップセットと呼ばれていました) が使われていましたが、近年では半導体技術の進歩によって回路の集積度が高まり、チップセットが提供していたさまざまな機能をマイクロプロセッサー自身に取り込むようになりました。また、グラフィックス・エンジンをはじめ、チップセット以外の機能もマイクロプロセッサーに次々と統合され、多くのパーツがマイクロプロセッサーに直結されているような接続形態となっています。その姿は、まさしくコンピューターの中枢を担う「司令塔」といえます。

  

マイクロプロセッサーの命令処理を支える 4 つの基本工程

現代のコンピューターは、プログラムに書かれている手順に従って忠実に動作します。プログラムは、マイクロプロセッサーが理解できる命令が多数並べられたもので、計算対象となるデータとともにメインメモリーに記憶されています。コンピューターは、メインメモリーに格納されたプログラムから命令を 1個ずつ取り出し、マイクロプロセッサー内部に送り込んで実行していきます。マイクロプロセッサーが命令を実行する手順は、大きく分けて以下の 4つの基本工程から成り立っています。

マイクロプロセッサーは、これらの工程を何度も繰り返すことで、複数の命令を次々と実行していきます。

1. フェッチ    メインメモリーから命令を取り出す

2. デコード    取り出した命令の具体的な指示内容を解読する

3. 実行    計算対象となるデータをメインメモリーから読み出し、命令の指示内容に従って計算処理を行う

4. ライトバック    計算結果をメインメモリーに書き戻す

近年のマイクロプロセッサーは、もっと効率よく命令を処理するために上記 4つ以外の特別な工程を随所に盛り込んでいますが、マイクロプロセッサー内部に命令を送り込み、それを実行し、最後に計算結果を出力するという大筋の流れは現在も変わっていません。

マイクロプロセッサーの動作周波数を高めるスーパー・パイプライン

フェッチ、デコード、実行、ライトバックという 4つの基本工程は、それぞれ独立した回路で処理されます。このため、1個の命令実行を完了してから次の命令に移る方式では、ある命令を実行している間、常に 1つの工程を担当する回路しか動作していないことになります。例えば、フェッチの最中にはデコード、実行、ライトバックの回路が待機している形となり、マイクロプロセッサー内部の回路を効率よく使えません。このような問題を解決するのが、パイプライン制御方式です。パイプライン制御方式は、マイクロプロセッサーの中に命令を次々と送り込んでいくためのパイプライン (工場の生産ラインのようなもの) を設け、最初に取り込まれた命令の実行完了を待たずに、後続の命令を次々と送り込めるようにします。パイプラインに入った複数の命令が各工程の回路を同時に使用できるため、マイクロプロセッサー全体で見ると命令の処理効率が向上します。そして、もともとの工程を細分化してさらに多くの工程に分割すれば、各工程の作業内容がシンプルになり、回路をより高速に動作させやすくなります。このような高速化技術は、スーパー・パイプラインと呼ばれます。

マイクロプロセッサーの並列処理能力を飛躍的に高める技術

インテルのマイクロプロセッサーは、古くからスーパー・パイプラインを取り入れて動作周波数の向上を図ってきましたが、スーパー・パイプラインに頼りすぎるとマイクロプロセッサーの消費電力が劇的に増加するという技術的な課題に直面しました。そこで、2003年に発売したインテル® Pentium® M プロセッサーを皮切りに、動作周波数を一辺倒に高めるのではなく、並列処理能力の向上にも積極的に取り組むことで、できる限り多くの命令を同時に実行できるような方針へと転換を図っています。このような並列処理を可能にする最も基礎的な技術がスーパースカラーです。スーパースカラーは、命令を実行するための回路を複数セット設けることで、パイプラインの本数を物理的に増やして命令実行の並列度を高めます。

これは、ちょうど道路の車線を 1車線から 2車線、3車線へと広げ、同時に通行できる自動車の台数を増やすのにも似ています。そして近年では、1個の実行コアで 2つのスレッドを同時に実行できるハイパースレッディング・テクノロジー、1個のプロセッサー・ダイに複数の実行コアを搭載するマルチコア技術、きわめて効率よく命令を実行可能な先進のプロセッサー設計 (マイクロアーキテクチャー) など、並列処理性能を飛躍的に高める技術が続々と登場しています。また、半導体製造技術の進歩によって、トランジスター自身のスイッチング性能と電力効率も大きく向上しました。インテルは、さまざまなマイクロプロセッサーにこれらの並列処理技術と先進のトランジスター技術を積極的に投入し、より少ない電力で、より高い処理性能を引き出せるように改良を続けています。

命令やデータをスピーディーにやり取りするためのキャッシュメモリー

マイクロプロセッサーの処理能力を最大限に発揮させるには、実行回路に対して効率よく命令を送り込んでいく必要があります。マイクロプロセッサーは、メインメモリーと命令やデータをやり取りすることで動作していますが、メインメモリーはマイクロプロセッサーが求める超高速のやり取りには対応しきれません。このため、マイクロプロセッサーには、超高速のアクセスに対応する小容量のキャッシュメモリーが搭載されるようになりました。マイクロプロセッサーがよく使う命令やデータをキャッ シュメモリーに置いておくことで、マイクロプロセッサーはこれらの情報にすばやくアクセスできます。また、インテルのマルチコア・プロセッサーでは、複数の実行コアから効率よくキャッシュメモリーを共有するメカニズムも備わっています。

デジタルコンテンツや複雑なデータ処理を大幅に高速化する機能

PC の使い方は時代とともに移り変わってきていますが、マイクロプロセッサーは常にそのときの使い方で最も性能が発揮されるように設計されています。例えば、近年では写真、音声、動画などのデジタルコンテンツを対象としたデータ処理が急増しています。マルチメディア処理の多くは、複数のデータに対して同じような演算を繰り返して行います。そこで、このような繰り返し演算を高速化する技術として SIMD (Single Instruction Multiple Data) が登場しました。SIMD は、1個の命令で複数セットのデータを同時に扱えるようにする命令処理技術です。

インテルでは、この SIMD 技術として整数データ (データの演算幅はトータル 128ビット) に対応したインテル® MMX® テクノロジーをいち早く実用化しました。そして、浮動小数点データにも対応したストリーミング SIMD 拡張命令 (SSE)、データの演算幅が 256ビットに拡張されたインテル® アドバンスド・ベクトル・エクステンション (インテル® AVX) へと進化を遂げています。インテルの最新プロセッサーは、利便性の高い命令がさらに追加された第 2世代のインテル® AVX2 をサポートしています。

PC を扱う多くのユーザーは、以前にも増して動画コンテンツを作成・閲覧する機会が増えています。しかし、動画コンテンツを作成する作業や異なるユーザー向けに動画フォーマットを変換する処理には非常に長い時間がかかります。このような動画にまつわる悩みを解消するのが、インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーに搭載されているインテル® クイック・シンク・ビデオです。インテル® クイック・シンク・ビデオは、動画変換の中でもとりわけ計算量の多いデコードおよびエンコード処理を、マイクロプロセッサー内部の専用エンジンによって高速に実行します。

また近年では、フル HD や 4K のような高画質と高圧縮率を両立した新しい映像フォーマットも登場しています。インテル® クイック・シンク・ビデオはこれらの映像技術に対応し、さらには専用エンジンとマイクロプロセッサーの最適なロードバランスにより、動画変換の高速化や画質の向上にもつなげています。

現在主流のコンピューティング環境を支えている 64ビット機能

従来は、32ビット単位でデータを処理する 32ビット・アーキテクチャーを採用していましたが、この処理単位を 64ビットにまで広げたのが、現在主流の 64ビット・アーキテクチャーです。システムの 64ビット化を図ることで、さらに高い処理性能を実現するとともに、4GB を超える大容量メモリーへの高速アクセスもサポートされます。

インテルは、この64ビット・アーキテクチャーに対応したシステムを実現する目的から、マイクロプロセッサーにいち早く 64ビット機能 (インテル® 64) を搭載するようになりました。近年では、クライアント PC やタブレット向けに 64ビット対応のオペレーティング・システム (OS) が出荷されています。このため、インテル® 64をサポートしたインテル® プロセッサー搭載 PC なら、すぐにでも 64 ビット環境へと移行できます。

インテル・ミュージアム


インテルは、世界最大の半導体メーカーです。主要な半導体製品として、コンピューターの頭脳 「マイクロプロセッサー」 を開発、製造しています。インテル・ミュージアムでは、そんなマイクロプロセッサーの歴史、動作の仕組み、最新技術などを取り上げていきます。

商標情報


Intel、インテル、Intel ロゴ、Intel Core、Core Inside、Xeon、Xeon Inside は、アメリカ合衆国および / またはその他の国における Intel Corporation の商標です。

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