マイクロプロセッサーは、地球上で最も複雑な集積回路のひとつです。マイクロプロセッサーの中には、スイッチの役割を果たす何億、何十億個のトランジスターが組み込まれています。

このような膨大な数のトランジスターを親指の爪ほどの面積に作り込んでいくのが最先端の半導体製造技術です。ここでは、 原料となるシリコンからマイクロプロセッサーができあがるまでの流れを解説していきます。

マイクロプロセッサーの土台となる高純度シリコンのウエハー

マイクロプロセッサーの回路は、シリコンでできた「ウエハー」と呼ばれる薄い円板の上に作られます。シリコンは、土や砂に多く含まれる成分で、地球上では酸素に次いで 2番目に多く存在する元素です。ウエハーのもとになるシリコンは、硅石 (けいせき) と呼ばれる鉱物から作られます。鉱山から掘り出された原石は、化学的な方法によって何度も繰り返し精製され、99.999999999% (イレブンナイン) にまで純度が高められます。

しかし、この時点ではまだ原子同士がバラバラに並んだ多結晶の状態ですので、マイクロプロセッサーの土台として使用できません。そこで、多結晶シリコンを高温のるつぼで溶かし、原子同士がきれいに並んだ単結晶のシリコンを作り直します。このときに作られる円柱状の大きなシリコン棒 (重量は数百 kg) をインゴットと呼びます。そして、インゴットは非常に薄く切り出され、直径 300mm のウエハーが作り上げられます。インテルは、マイクロプロセッサーの製造に適した高品質のウエハーを専門の業者から購入しています。

 

マイクロプロセッサーは徹底的に浄化されたクリーンルーム内で製造

最新のマイクロプロセッサーで採用されている半導体製造技術は、インフルエンザ・ウイルスの直径 (約 100 nm) よりもはるかに細かな回路パターンを作り込むことができます。こうした微細な回路にとって、大気中を漂うホコリはもちろんのこと、人間の目に見えない微粒子や細菌でさえも回路に大きなダメージを与える要因となります。このため、マイクロプロセッサーは、空気が徹底的に浄化されたクリーンルームの中で製造されます。また、クリーンルーム内では人間の手がほとんど介在しないように、コンピューター制御によるロボット装置が多くの作業をこなします。さらに、これらの装置を遠隔操作したり、動作状況を監視したりしている工場のスタッフも、クリーンスーツと呼ばれる防塵服で頭からつま先までを完全に覆ってから作業しています。

 

ウエハーの表面にマイクロプロセッサーの回路を作り込む

インテルは、外部から調達した高品質のウエハーを使用し、自社の半導体工場でウエハー表面にマイクロプロセッサーの回路を作り込んでいます。その工程は、ちょうどフィルム上の写真を印画紙に焼き込む作業にも似ています。半導体の世界では、マイクロプロセッサーの回路パターンが書き込まれたフォトマスク (写真フィルムに相当) に紫外光を当て、それをレンズで小さく絞ってからウエハー表面 (印画紙に相当) に転写します。このような工程を「フォトリソグラフィー」と呼びます。

1. フォトレジストの塗布

ウエハーの表面にフォトレジストと呼ばれる感光性樹脂を塗布し ます。ウエハー表面に液状のフォトレジストを滴下し、ウエハーを高速回転させることで薄く均一にフォトレジストを延ばします。フォトレジストは、光の当 たったところだけが溶けやすくなる性質を持ち、この後の工程で大きな役割を果たします。

2. 回路パターンの転写

フォトマスクに紫外光を当て、フォトマスクの回路パターンを通過した紫外光をレンズで縮小してからウエハー表面に転写します。フォトマスクには限られた範囲の回路パターンしか書き込まれていませんので、ウエハー全体に回路パターンが転写されるようにこの工程を何度も繰り返します。

3. 現像 (フォトレジストを部分的に溶かす)

マイクロプロセッサーの回路パターンをウエハー全体に転写したら、光が当たった部分のフォトレジストを溶かす現像液に浸します。光が当たっていない部分のフォトレジストは溶けないので、回路パターン通りにフォトレジストが残ることになります。このようにして作られたフォトレジストの回路パターンをレジストパターンと呼びます。

4. イオン注入とフォトレジストの除去

トランジスターは、性質の異なる半導体同士の組み合わせによって成り立っています。そこで用いられるのが、イオン注入と呼ばれる手法です。イオン注入は、イオン (電気的にプラスまたはマイナスの性質を持つ原子の集まり) を埋め込むことで、半導体の性質を変化させる操作です。このとき、フォトレジストが保護材 (マスク) の役割を果たすことから、フォトレジストのない部分だけに対してイオン注入を行えます。工程の最後には、化学薬品や反応ガスを使用して不要になったフォトレジストを除去します。

立体構造の 3次元トライゲート・トランジスターを形成する

インテルは、これまで長く採用されてきた 2次元構造のプレーナー型トランジスターに代わり、独自の 3次元構造をとった 3次元トライゲート・トランジスターを世界に先駆けて実用化しています。マイクロプロセッサーの製造工程では、インテルが新たに開発した手法を取り入れることで、こうした立体的なトランジスター構造を高精度に形成しています。

1. エッチング

インテルの 3次元トライゲート・トランジスターには、シリコン基板から垂直に立った「フィン」があります。このフィンを作り上げる工程がエッチングです。フィンの上面にあたる部分にハードマスク素材を塗布し、化学薬品によってハードマスクのないエリアを削って、シリコン表面に凹凸を作ります。最後に、ハードマスクを除去すると、トランジスターの立体的なフィンができあがります。

2. ゲートの仮形成

フォトリソグラフィーの手法によって、トランジスターの「ゲート」と呼ばれる部分を作り始めます。ここでは、フィンを取り囲む 3つの面に仮のゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜を形成した後、仮のゲート電極となる多結晶シリコン膜、さらにはウエハー表面を覆い隠すようにシリコン酸化膜を作り上げていきます。

3. ゲートの本形成

仮形成されたゲート絶縁膜やゲート電極をエッチングの手法によって適切に取り除き、ゲートを本形成するための準備を行います。その後、high-k (高誘電率) 絶縁素材からなるゲート絶縁膜と金属合金からなるゲート電極 (メタルゲート) がそれぞれ形成されます。この high-k 絶縁膜とメタルゲートを組み合わせることにより、トランジスターのスイッチング性能と電力効率が大きく向上します。

トランジスター間を接続して回路全体を形成する

これまでの工程を通じて膨大な数のトランジスターを作り上げたら、トランジスター同士を配線してマイクロプロセッサー全体の回路を構成していきます。トランジスターのソース、ドレイン、ゲートにつながる部分に 3つの穴を開け、銅素材を埋め込みます。さらに、電気メッキの手法によってウエハー表面に銅の薄膜を形成します。成膜からエッチングまでの工程を何度も繰り返しながら、合計 30 以上にもおよぶ層 (金属配線層と絶縁膜層) を作り込んでいきます。

プロセッサー・ダイの切り離しとパッケージング

ウエハー上に作られたマイクロプロセッサーの回路をひとつずつ切り離し、マイクロプロセッサーの形に仕上げていきます。マイクロプロセッサーの回路が作り込まれたシリコンの土台を「プロセッサー・ダイ」と呼びますが、これを専用のパッケージに収めて外気や衝撃から保護します。また、パッケージには電気信号のやり取りや電源供給のための電極、回路から発生する熱を効率よく逃がすための放熱板なども搭載されます。

1. ダイシング (プロセッサー単位で切り離す)

ウエハー上に作られたマイクロプロセッサーの回路を専用のテスターにかけて、良品と不良品を分別した後、それぞれの回路をひとつずつ切り離していきます。このようにして切り出された親指の爪ほどの半導体チップが「プロセッサー・ダイ」です。プロセッサー・ダイ同士の切り離しには、非常に硬いダイヤモンド製の円形カッター (ダイヤモンド・ブレード) が用いられます。

2. プロセッサー・ダイのパッケージング

マイクロプロセッサーの基板にプロセッサー・ダイを固定します。プロセッサー・ダイにはさまざまな電気信号をやり取りするための電極があり、プロセッサー・ダイ側と基板側の電極を正確に位置合わせしてから両者をハンダで接続します。プロセッサー・ダイの上に熱伝導性の高いシートを載せ、さらにその上から放熱板 (ヒート・スプレッダー) をかぶせてしっかりと接着します。マイクロプロセッサーの回路から発生した熱は、この放熱板を通して効率よく CPU クーラーに伝えられます。

最終テストと梱包を行って完成

できあがったばかりのマイクロプロセッサーをさまざまなテスターにかけ、不良品を取り除きます。最終的に検査に合格したマイクロプロセッサーは、放熱板の表面にメーカー名や製品名、製造国などをレーザー光線で彫り込み、最後に梱包が行われます。ショップ店頭に並べられるボックス・プロセッサーは、マイクロプロセッサー本体、専用の CPU クーラー、取扱説明書、保証書などが同梱されています。

インテル・ミュージアム


インテルは、世界最大の半導体メーカーです。主要な半導体製品として、コンピューターの頭脳 「マイクロプロセッサー」 を開発、製造しています。インテル・ミュージアムでは、そんなマイクロプロセッサーの歴史、動作の仕組み、最新技術などを取り上げていきます。

商標情報


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