医療
FPGA がもたらす機器により、医師は電子化された患者情報を活用し、より正確な診断を行うことができます。
プログラマブル・ロジックは、システム設計を成功に導く柔軟性に優れた低リスクの手段です。最適なコスト効率を実現すると同時に、画像診断、医療用電子機器、治療機器、ライフサイエンス / 病院用機器などの医療用アプリケーションに、ライフサイクルの長い付加価値のある差別化機能を提供します。
アプリケーション
ゲノミクス / ライフサイエンス
ゲノム配列解析とは、ゲノムの遺伝子配列を解析し、それをマップとして作成する作業です。この作業は、医療における技術革新、個別化医療に加え、希少遺伝性疾患の診断および治療にとっての基礎となります。
ハードウェア・アクセラレーション
超音波、X 線、CT、および PET アプリケーションでは、カスタム・パイプライン並列処理を使用して、高速フーリエ変換 (FFT) などのアルゴリズムの集中的なバックエンド演算処理を実行する必要があります。そこで、ホスト・プロセッサーから FPGA にオフロードすることにより、アルゴリズムの性能向上が実現します。
人口の増加と医療費
世界的に見て、ヘルスケア市場は以下に示すような人口推移と医療動向の影響を受けています。
- 人口の増加と高齢化: 米国国勢調査局の予測によると、米国の「ベビーブーム」世代 (米国の総人口の 28 %) の大部分が、2010 年から 2020 年の間に 65 歳を迎えることになります。
- 先進国および途上国の両方で、ヘルスケアの向上に対する消費者の期待が増大しています。
- 保険会社や雇用者による医療費の払い戻しや補償範囲が縮小傾向にあり、顧客 / 患者はより多くの費用を負担しなければなりません。
- テクノロジーの進化が新しい臨床治療法を生み出し、それによってより多くの疾病に関わる問題を解決し、早期診断と予防を促進しています。
下図に示すように、1 人当たりの医療費は世界的に大幅に増加しています。米国では、1 人当たりの医療費が 1960 年の 144 ドルから 1999 年には約 4,400 ドルまで増加しました。2008 年にはこの数字が 7,500 ドルに達するものと予測されています。このような数字から医療機器業者は、医療市場で成功するには米国に焦点を当て、米国で成功する必要があると考えています。
世界的に増加している 1 人当たりの医療費
テクノロジーの進化によるヘルスケアの効率向上
今後 10 年間でヘルスケア市場の中心となるのは、早期診断と、さまざまな場所からアクセス可能な患者情報のデジタル化、およびヘルスケアの効率向上に寄与する「トータル・ソリューション」の提供であると考えられます。
新たな診断技術の登場によって、早期診断と予防が可能になります。例えば、PET (ポジトロン断層撮影法) を使用すると、非常に高い精度でさまざまな種類のガンを検出できます。
また、新たな傾向として病院の「ペーパーレス化」があります。患者の記録をデジタル化することにより、医師がどこにいてもその情報にアクセスすることができます。デジタル化された病院では X 線装置もデジタル化されていて、画像をすぐに入手できるので、医療サービス提供者は X 線写真が検査室から戻ってくるのを何日も待つ必要はありません。
病院は、個別対応の単独リューションを購入する方式から、相互運用が可能でユーザー・インターフェイスも統一されている機器をさまざまなベンダーから購入する方式へと移行しつつあります 病院では、患者情報 (CT スキャン、X 線、PET スキャンなど) をネットワーク経由ですぐにアクセスできるように、データ・ストレージ・サーバーに提供するすべての診断機器を接続する内部ネットワークが開発されています。このため医療機器ベンダーは、ユーザー・インターフェイスが統一された相互運用可能な機器の開発に力を入れています。実際、ベンダーは診断装置だけでなく、ストレージサーバーやインターフェイス・ソフトウェアも含む完全なソリューションの販売に着手しています。
このような傾向のすべてがヘルスケアの効率向上につながっています。すなわち、より多くの患者がヘルスケアシステムを利用し、より高品質で高速の診断装置を使用することにより、早期診断、早期治療が可能になるのです。ペーパーレス・ホスピタルが実現すれば、検査結果や患者の記録に即時にアクセスできるので、効率が大幅に向上します。
プログラマブル・ロジックの優位性
医療機器の大部分には、何らかの形で半導体が組み込まれています。実際に、多くの医療機器に組み込まれる半導体部品は、年々増え続けています。その中でも、ほかの半導体と比べて急速な伸びを示しているのがプログラマブル・ロジック・デバイス (PLD) です。これは、PLD が医療機器開発において有望かつ強力なデバイスであり、ASIC および ASSP の代替デバイスであるからです。PLD は、ASIC に不可欠な前払い NRE (Non-Recurning Engineering) 費用や最小発注数量がなく、再プログラム可能な特性により、複数シリコンでのデザインの繰り返しによるコスト上昇のリスクを軽減します。ASSP と比較して、PLD はデザインの柔軟性が高く、ボード統合が可能なので、競合する医療機器メーカーの製品に対して製品の差別化を図ることができます。さらに、PLD は標準の進化や要求条件の変更に応じてフィールドでのアップグレードが可能です。また、共通プラットフォームを再使用することが可能なため、設計者は 1 つの基本的なデザインでさまざまな機能群をサポートする差別化されたシステムを構築することができ、製造コストも低減されます。CT 装置や患者のモニタリング装置を設計する場合も、プログラマブル・ロジックはシステムデザインを成功させるための柔軟性に優れた低リスクの手段であり、ほかの医療機器メーカーの製品と比較して、付加価値の高い機能と最適なコスト効率を提供できます。
PLD はライフサイクルが非常に長く、製品の陳腐化から顧客を保護します。医療業界では製品寿命が長いので、これは重要な利点です。
プログラマブル・ロジックのメディカル・アプリケーション
プログラマブル・ロジックを使用することにより、医療分野における多数のアプリケーション用に最先端機器をコスト効率よく開発することができます。
- 画像診断: X 線、超音波、CT、MRI、核医学 / PET
- 医療用電子機器: 患者モニタリング、生命維持、および麻酔装置
- 心調律管理 (CRM): ペーシングシステム、埋込型心臓除細動器 (ICD)、自動体外除細動器 (AED)
- ライフサイエンスおよび病院用機器: 実験装置、放射線治療器、その他各種病院用機器
インテル® FPGA 製品がもたらすメリット
インテルは、医療用電子機器メーカーに強い競争力を提供します。インテルのソリューションは、現在世界中のさまざまな医療用最終アプリケーションで使用されており、最適化された Intellectual Property (IP) コア、ハード・マイクロプロセッサーおよびソフト・マイクロプロセッサー、強力なデザイン・ソフトウェア、および各種開発キットを広範囲のプログラマブル・ロジック・デバイス (PLD) と組み合わせて、完全な使いやすいデザイン・プラットフォームを作成します。インテル® Stratix® シリーズ FPGA、インテル® Cyclone® シリーズ FPGA などのインテル® PLD は、ロジックの豊富な機能セット、メモリー、専用デジタル信号処理 (DSP) ブロック、および標準 I/O 規格のサポートを備えており、競争が厳しい医療機器市場で成功を勝ち取るために必要なすべてのツールを医療機器設計者に提供します。
インテル PLD は、医療機器メーカーに柔軟でコスト効果が高く、陳腐化の問題がない成功のための手段を提供します。インテルが医療機器メーカーに提供するメリットは次のとおりです。
- ASIC の高価な NRE と最小発注数量の回避によるコストの削減
- 期間が長くリスクの高い ASIC 開発サイクルの回避による市場投入までの期間 (Time-to-Market) の短縮
- 複数の ASSP ファンクションを FPGA に統合することによるコスト削減と製品の差別化
- デザインプロセス中および製品化後にフィールドでも再プログラム可能
- 1 つの基本デザインを用いた各種システムに対し 1 つのハードウェア・プラットフォームの再使用が可能
- 複数の業界標準およびプロトコルへの適合性
Intellectual Property (IP)
インテル製品に対して最適化された標準 IP コアにより、エンジニアリング・コストを削減し、市場投入までの期間 (Time-to-Market) を短縮できます。標準インターフェイスおよび Intellectual Property (IP) コアは、インテルまたは認定されたパートナーから入手可能です。
インテルはインテル® FPGA IP のデザイン、サポート、および販売を行っています。すべてのインテル® FPGA IP は、インテルの PLD で高い性能と低コストを実現するように、厳密にテストされ最適化されています。
開発キット
インテルおよびインテルのパートナーは、SOPC (system-on-a-programmable-chip) デザインの開発と検証をサポートするさまざまな開発キットを提供しています。
用語集
ライセンス形態 | 詳細 |
---|---|
自動体外式除細動器 (AED) Automatic External Defibrillators | AED は、心臓発作または心停止のために機能が停止した心臓を活性化するために使用されます。AED は、特に非医療従事者が簡単に使用できるように設計されています。 |
心調律管理 (CRM) Cardiac Rhythm Management | CRM は、ペーシングシステム、埋め込み型除細動器、および自動体外式除細動器を主に扱う医療機器産業の一部です。 |
CIC (Cascaded Integrated Combinatorial) フィルター | CIC フィルターは、デジタルシステムでのサンプルレートの大幅な変化を実現するために使用されるマルチレート・フィルターです。デシメーションと補間の両方の構造がサポートされています。CIC フィルターは、乗算器を内蔵しておらず、加算器、減算器、およびレジスターで構成されています。CIC フィルターは一般に、大きなエクセス・サンプル・レートを有する (すなわち、システム・サンプル・レートが信号占有帯域を大幅に上回る) アプリケーションで使用されます。(本定義の出典: The Scientist and Engineer's Guide to Digital Signal Processing Steven W. Smith 著、1997 年、p568-570) |
コンピューター断層撮影 (CT) Computerized Tomography | CT スキャンは、コンピューターによって機能強化された X 線撮影法です。CT スキャンを行うと、身体の特定部分の 3 次元図 (「スライス」と呼ばれる) が得られます。代表的な適用分野は、胸部、腹部、および脊髄の撮影などです。(本定義の出典: St. Joseph Regional Medical Center Web サイト) |
データ収集カード (DAC) Data Acquisition Card | 画像診断システムで使用される多数のカードのうちの 1 つです。システムのフロントエンドでのデータ処理 (フィルタリング) を実行します。 |
データ統合カード (DCD) Data Consolidation Card | 画像診断システムで使用される多数のカードのうちの 1 つです。データ収集カードによって処理されたデータは DCD に転送され、解析とバッファリングが行われます。 |
外部メモリー・インターフェイス (EMIF) External Memory Interface | デジタル信号プロセッサーによって使用されるメモリー・インターフェイス。 |
ガントリー | ガントリーは、CT 装置で使用され、患者の身体の周りを回転して断面図を作成します。 |
埋込み型除細動器 (ICD) Implantable Cardiac Defibrillator | ICD は、心臓のリズムを連続的にモニターする点がペーシングシステムに似ています。ICD は、頻拍性不整脈 (急速な心拍) の処置を行います。心拍が異常に速い場合、ICD は救命のための電気ショックを与えることによって心拍リズムを正常に戻し、突然心臓死を防止します。 |
静脈注射 (IV) システム Intra-Venous (IV) System | IV システムは、病院で広く使用されている薬物送達システムです。 |
低ノイズアンプ (LNA) Low Noise Amplifier | LNA は、各種医療システムで使用されるアナログ・コンポーネントです。 |
磁気共鳴映像法 (MRI) Magnetic resource imaging | 磁場と電磁波を利用して、身体部分内部の高精度画像を生成する患者検査法。この方法は、無痛であるとともに、放射線を使用しないため、極めて安全です。MRI を使用する代表的な分野は、神経病学、心臓病学などです。(本定義の出典: Columbus Diagnostic Imaging Web サイト) |
モダリティー | X 線、CT などの診断装置 |
変調 (Modulation) | 入力ビデオ信号を基準にして周波数キャリアまたは振幅を操作するプロセス。 |
核 / 陽電子放射断層撮影法 (PET) Nuclear/PET | 核医学は、少量の放射性トレース物質を使用して多くの疾患の診断と治療を支援します。核医学は、X 線撮影法や超音波診断法などの診断学的検査とは異なり、器官、組織、または骨の構造上の外観ではなくそれらの機能に基づいて医学的問題の原因を特定する学問です。代表的な適用分野には、心臓 / 血管科、および腫瘍の診断と治療などが含まれます。(本定義の出典: Standford Hospital Web サイト) |
ラジオグラフィー (放射線撮影法) & フルオロスコピー (蛍光透視法) (RNF) Radiography and Fluoroscopy | 診断用 X 線撮影法の一種。ラジオグラフィー (放射線撮影法) は器官の映像を提供し、フルオロスコピー (蛍光透視法) は器官の機能の観察を可能にします。 |
スリップリング | スリップリングは、ガントリー内部で使用され、CT 装置の固定部との連続した電気的接続を提供します。 |
タイム・ゲイン・コントロール (TGC) Time Gain Control | 画像診断システムで使用されるアナログ回路。 |
超音波診断法 Ultrasound | 超音波診断法は、音波を使用して、身体の各器官や組織の医学的画像または写真を取得する手法です。この診断法は無痛かつ安全です。超音波診断法は、軟組織 (心臓、血管、子宮、膀胱など) の高精度画像を生成し、心拍や血流などの内部運動をわかりやすく示します。この診断法では、病変または損傷のある組織の検出、異常な腫瘍の発見、および多様な変化状態 (胎児の発育など) を検出でき、それによって医師は迅速かつ正確な診断を行うことができます。代表的な適用分野は、心臓医学、婦人科医学、腹部医学などです。(本定義の出典: St. Joseph Regional Medical Center Web サイト) |
X 線 | X 線は、基本的に可視光線であり、X 線と可視光線の両方とも、光子と呼ばれる粒子が運ぶ波形状の電磁エネルギーです。これらの違いは、個々の光子のエネルギー準位、すなわち光線の波長です。X 線撮影法は、過去数十年間にわたって利用されており、非常に安定した市場基盤を持っています。代表的な適用分野としては、マンモグラフィー、歯科、フルオロスコピー (蛍光透視法)、血管科、外科、モバイルなどがあります。(本定義の出典: HowStuffWorks.com) |