今日のコンピューター・ビジョンをベースにした品質管理の機会を活用する
AI コンピューター・ビジョンに基づいて構築された製品品質モニタリング・ソリューションは、製造元と販売店に具体的な成果をもたらすところまで漕ぎつけています。店舗や工場の現場、あるいは製品のビジュアルデータが収集されるエッジに設置されたカメラ、計算機、AI を使用することで、企業はほぼリアルタイムで製品品質を監視し、評価できます。組み立てラインから出荷される製品の欠陥の有無を検査したり、生産セクションでイチゴの鮮度を評価したりといったユースケースに関係なく、多くの企業がコンピューター・ビジョンの導入に苦労しており、概念実証から本番環境に移行するにあたり、さらなるコストとスケーラビリティーの課題を想定しています。
最終的には、さまざまなタイプの企業が AI で強化された製品品質モニタリング機能に向け、それぞれのルートを取ることになります。企業の販売店や製造元は、自社で AI 機能を構築している可能性が高いですが、これらの業界の中小企業は、一般的に独立系ソフトウェア・ベンダー (ISV) とソリューション・インテグレーター (SI) にサポートを求めるでしょう。これらのベンダーとソリューション・プロバイダーは、厳しいコスト制約とパフォーマンス要件の中で作業しながら、コンピューター・ビジョンで強化された AI 機能を実現するよう求められています。
ISV、SI、販売店、製造元のいずれであっても、効率とスピードを最適化した AI 支援型の製品品質モニタリングの提供開始に役立つ、重要な考慮事項を見ていきましょう。
コンピューター・ビジョンの AI モデルのトレーニング
あらゆるコンピューター・ビジョンをベースとした製品品質管理において、戦略の中核となるのは、推論を実行するためにエッジで AI モデルを使用することです。モデルは導入前に最初にトレーニングされ、製品の欠陥の検出や製品の有効期限の認識に特化しています。その後、カメラからのデータを分析し、問題を特定して、解決のために施設スタッフに報告する AI 対応ソフトウェアの一部として、エッジデバイスに導入されます。
小売や製造業の企業組織では、これらのモデルをゼロからトレーニングしたり、社内スタッフを使って既存のモデルを微調整したりする傾向があるかもしれませんが、中小企業では、必要な AI 機能を実現するために、テクノロジー・パートナーに頼ることを選択するでしょう。これは、特定のユースケース向けに設計されたソリューションを ISV から購入するのと同じくらい簡単です。あるいは SI に頼り、いくつかのソリューションを統合したり、モデルのカスタマイズが必要であれば対応したりすることも可能です。
コンピューター・ビジョン・ソリューションを実現しようとする場合は、ゼロから始める必要はないということを覚えておくことが重要です。既存のモデル (多くはオンラインで無料で入手可能) は、カスタマイズの出発点として提供され、取り組みを加速するのに役立ちます。例えば、OpenVINO™ ツールキットの Open Model Zoo は、対象となる用途向けに再トレーニング、または微調整することができる幅広いディープラーニング・モデルを提供します。
ハードウェア
ハードウェアの観点から、取り組んでいるトレーニング・タスクに応じて、異なるレベルのコンピューティングが必要になります。
自社や顧客のニーズを満たすために既存のモデルで始めるならば、費用対効果の高い汎用ハードウェアで微調整や再トレーニングをすることができるかもしれません。そうすることで、全体的なアーキテクチャーの複雑さを軽減しながら、本当に必要でない専門リソースへの過剰投資を回避できます。
ただし、複雑なモデルをゼロからトレーニングするには、AI ワークロード向けに構築された特殊なアクセラレーターの高度なパフォーマンスが求められる場合があります。これらのテクノロジーは、大規模なパラメーター・セットによる複雑なモデル・トレーニングに必要な究極の性能を実現するために、ゼロから設計されています。
例えば、インテル® Gaudi® AI アクセラレーターは、要求の厳しいトレーニングと推論の AI ワークロードをサポートするために構築されています。再トレーニングと微調整のために、AI エンジンを統合したインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーは、CPU のみのアーキテクチャーでパフォーマンス要件を満たすのに特に適しています。
ソフトウェア
多くの組織にとって大きな課題は、チームのドメインや業界固有の専門知識を、利用可能な AI ソリューションに変換することです。この課題の解決に役立つさまざまなソフトウェア・プラットフォームが利用できます。これらのツールは、コンピューター・ビジョンのソリューション開発イニシアチブの価値を生み出すまでの時間を劇的に短縮するのに役立ちます。
例えば、インテル® Geti™ プラットフォームにより、業界のエキスパートは最小限のデータサイエンスの専門知識で、単一のインターフェイスで生産に対応できる AI モデルを迅速かつ共同で構築できます。ユーザーは、画像やビデオデータの追加、注釈の作成、トレーニング、再トレーニング、エクスポート、導入のための AI モデルの最適化を簡単に実行できます。
コンピューター・ビジョンのためのエッジ・ハードウェアに AI モデルを導入する
多くの組織は、コンピューター・ビジョンベースの品質管理を導入するには GPU を搭載したヘビーエッジのインフラストラクチャーが必要であると想定しています。この想定は、すべて正しいとは限りません。今日の製造元と販売店は、一般的なハードウェア・リソースを使用して、エッジで AI コンピューター・ビジョンを実現できます。
最新の CPU は、エッジでコンピューター・ビジョン・ワークロードを処理するのに必要なものを十分に持っています。トレーニングと同様に、エッジ推論の CPU に依存することで、テクノロジーの過剰投資を防ぎ、導入を合理化し、電力効率の最適化を支援します。CPU は、すぐに使用できる小型フォームファクターの高耐久化されたシステムに簡単に導入でき、エッジで遭遇する幅広いオペレーティング環境をサポートします。
インテル® Xeon® プロセッサーやインテル® Core™ Ultra プロセッサーなどのプロセッサーは、エッジ・コンピューター・ビジョンのワークロードに最適な電力効率に優れた AI パフォーマンスを提供します。
多くの製造元と販売店は、POS システムやソフトウェア定義の IT / OT インフラストラクチャーなど、CPU 搭載の重要なエッジシステムをすでに実行しています。多くの場合、これらの既存の投資により、追加のハードウェア購入の必要性を最小限に抑えながら、エッジでコンピューター・ビジョンをサポートできます。
必要に応じて、GPU ハードウェアをより要求の厳しいパフォーマンス要件を満たすために使用することができます。GPU テクノロジーは、通常、より大きな消費電力とフットプリントを必要としますが、エッジ導入を可能にし、高度な機能と革新的なユースケースをサポートします。
例えば、インテル® Arc™ GPU とインテル® データセンター GPU フレックスの両方を提供し、エッジで高度なコンピューター・ビジョン機能を実現する支援をします。
つまり、ハードウェアは方程式の一つの側面にすぎません。ISV と SI は、小売および産業界のお客様が、異種導入環境をより簡単に処理し、パフォーマンスを最適化して、必要なモデル開発を簡素化できるように支援する方法を必要としています。ここでは、ISV と SI はソフトウェア・リソースを活用することで、取り組みの迅速化と効率化を支援できます。
例えば、OpenVINO™ ツールキットは、付属のモデル・オプティマイザー、ランタイム、開発ツールを使用して、包括的な AI 推論の最適化、微調整、実行を支援します。これは、精度を維持してモデルのフットプリントを削減し、ハードウェア使用の最適化を実現しながら、低レイテンシーと高いスループットで AI 推論を高速化するのに役立つオープンソース・ツールキットです。これらはすべて、複数の工場や店舗で AI コンピューター・ビジョンを拡張するために必要な要素です。また、このツールキットは、TensorFlow や PyTorch などの一般的なフレームワークを使用してトレーニングされたモデルを変換し、最適化するために使用することもできます。
インテル® oneAPI 上に構築された OpenVINO™ ツールキットは、SI および ISV がエッジで AI 推論をより簡単に導入して、コンピューター・ビジョン・ソリューションをサポートできるようにします。OpenVINO™ ツールキットを使用することで、販売店や製造元がすでに導入している幅広いハードウェアで、ソフトウェア製品が実行できるようになります。また、新規導入の技術的な要件を簡素化するのにも役立ちます。
この種の柔軟性により、クラウド・インフラストラクチャーに依存することなく、ほぼリアルタイムのインサイトを提供できるスケーラブルで軽量なエッジ・ソリューションを実現することができます。そうすることで、これらのオンプレミス・ソリューションは、処理のためにデータをクラウドに転送することに伴うコスト、複雑さ、セキュリティーの懸念を回避します。
今すぐ可能性を引き出しましょう
ISV、SI、さらに彼らがサービスを提供する販売店や製造元のために、今こそ AI を活用した製品の品質管理に対し、スケーラブルで効率的なアプローチを採用する時です。インテルとパートナーのエコシステムは、必要なオープンで相互運用可能なテクノロジーを提供することに尽力しています。
利用可能なソリューション開発の可能性を探求し続ける際は、この記事で説明しているハードウェアおよびソフトウェアのテクノロジーの多くをインテル® Tiber™ デベロッパー・クラウドを介して試すことができることを心に留めておいてください