HDR ゲーム用モニターを選ぶときのポイント

重要なポイント:

  • HDR とは?

  • HDR のセットアップ

  • VESA Display HDR プログラム

  • ピーク輝度

  • 色深度

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VESA により認定された HDR 出力に対応したモニターだけでなく2、多数のモニターが HDR によるビジュアル向上を売り文句にしており、現在 4K 対応と並んで、HDR 対応が PC モニターの主流になりつつあります。

ASUS、Acer、MSI および AOC では、現在も依然広く使用されているスタンダード・ダイナミック・レンジ (SDR) モニターと平行して、すべての製品ラインに HDR ゲーム用モニターを採用しています。最新の HDR ゲーム用モニターの中には、SDR モニターと比べてほんのわずかな向上しか見られないものもあります。一方で、本物の HDR 体験を提供できるモニターもあります。すべて HDR 対応と謳われているため、高品質の HDR モニターと低水準の HDR モニターとの違いを見つけるのが難しいこともあります。

このことを念頭に置いて、購入時に注目すべきポイントを理解することが重要です。HDR を最大限に活用するには、モニターの機能が最適な組み合わせになっているかを注意して確認する必要があります。

HDR とは?

HDR は、ディスプレイ上で映像を表示する際の 5 要素である「解像度」「ビット深度」「フレームレート」「色域」「輝度」の中で、画像の明るい部分と暗い部分の差であるコントラスト比を示すための「輝度 (ダイナミック・レンジ)」を表す指標です。過去のブラウン管の輝度を基準としたSDR (標準ダイナミック・レンジ) と比較して 100 倍以上の明るさの段階を表示するものを HDR (ハイダイナミック・レンジ) と呼びます。

HDR モニターとは?

HDR (ハイダイナミック・レンジ) 対応のモニターは、高いダイナミック・レンジを持つ映像を再現できます。明るさや色の表現を向上させ、映像のリアリティーや臨場感を高められるため、グラフィックスや映像の表現が重要なゲーム用モニターに採用されています。

ゲーム用の HDR 対応モニターは、暗いシーンと明るいシーンの両方で詳細な情報を鮮明に表示して、視覚的に魅力あるゲーム体験をプレイヤーに提供できます。

HDR 技術

明暗の改善に加え、多くの HDR 対応モニターには改良されたカラー技術が採用されています。10 ビットカラー対応などのビット深度が向上したモニターでは、カラー・レンダリングが改善され、色に対する光の効果を忠実に再現できるため、より多くの色を表現でき、色相間の遷移がより滑らかになります。

人が感知できるコントラスト比に、より近づいた明暗を映像として表示できる HDR 対応モニターは、高画質化が進む PC ゲームへの没入感や魅力をさらに高めるのに役立っています。

さらに、ゲーム用の HDR 対応モニターは、色空間や色域が広く設定されているものが多く、その場合より鮮やかで色彩に富んだ画像を作り出すことができます。

HDR のセットアップ

HDR の明暗とカラー技術があれば、当然ゲームの見栄えは良くなります。HDR でゲームをプレイするには、次の 3 つのものが必要になります。

  • HDR 対応のゲーム
  • HDR コンテンツを処理できるプロセッサーとグラフィックス・カードを搭載したコンピューター
  • HDR モニター

HDR 対応のゲーム

HDR ゲーム用モニターの長所を活かすには、HDR にネイティブで対応するゲームが必要です。2017 年以前に発売されたゲームで、HDR に対応しているものはほとんどありません。しかし、2017 年以降は対応するゲームが徐々に増えてきています。HDR 対応のゲーム3 には、Far Cry 5、Destiny 2、Battlefield 5、PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS、Metro Exodus ほか、多数あります。

HDR システム

システムもタスクに見合ったものでなければなりません。HDR ビデオ出力のハードウェア要件は比較的緩く、近年の PC には通常 HDR 対応のコンポーネントが搭載されています。次のハードウェアが搭載されたシステムなら、4K HDR モニターに対応できます。

  • 第 7 世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリー以上4
  • NVIDIA GeForce GTX 10 シリーズ、NVIDIA GeForce RTX 20 シリーズまたは AMD Radeon 5 シリーズ以上のビデオカード

HDR コンテンツの視聴に必ずしも高性能なシステムが必要なわけではありませんが、HDR でのゲームプレイはシステムへの負担が高まります。ウルトラワイド・モニターや 1440p または 4K といった高解像度のモニターでは、そうした負担は一層重くなります。

HDR モニター

まず、HDR ゲーム用モニターでは、各ゲームでプレーヤーが好むレベルのリフレッシュ・レートと応答速度を提供できなければなりません。(詳しいガイダンスについては、こちらでモニター技術の詳細をご覧下さい。) 市場で販売されている HDR モニターの多くは、従来ゲーム用モニターで使用されていた TN パネルよりも応答速度が遅く、リフレッシュ・レートが低い ISP パネルを使用しています。そのため、ゲーム専用に設計された HDR モニターを選ぶようにしてください。144Hz のリフレッシュ・レートと 4ms の応答速度の HDR モニターは入手可能ですが、コストは割高になります。

HDR モニターは、HDR10、HDR10+、Dolby Vision、HLG などの HDR フォーマットに対応している必要があります。これらはビデオファイルの圧縮および展開に使用されるビデオエンコード規格であり、それぞれ互いに異なる長所を持っています。

エンコード規格は間違いやすいのでご注意ください。モニターに HDR10、HDR10+、DV または HLG 入力への対応を示す表示があったとしても、その表示自体はモニターの性能レベルや実際のパフォーマンスを示すものではありません。この表示からわかるのは、モニターが HDR コンテンツを映像信号に正常にデコードできる、ということだけです。実際に画面で HDR コンテンツを表示できなければならないのですが、HDR 対応と謳われているディスプレイでもこの基準を満たさないものが多くあります。

専門家のアドバイス: ほとんどの HDR ゲームは HDR10 フォーマットに対応しているので、HDR10 対応のモニターを選んでください。

HDR 信号を受信できることに加え、適切なハードウェア性能を備えたモニターを探してください。HDR 出力を使用する場合、モニターには次のハードウェア・スペックが必要です。

  • 最大輝度: 400cd/m² またはそれ以上
  • 黒レベル (画素ピッチ): 0.40mm またはそれ以下
  • 色深度: 10 ビット (8+2 ビット)
  • 色空間: DCI-P3 カバー率 90% またはそれ以上
  • バックライトのローカルディミング

VESA ディスプレイ規格

モニターが実際に HDR 出力に対応しているかどうかを確認する最も簡単な方法は、VESA* DisplayHDR のロゴを探すことです。このロゴは、HDR の唯一のグローバルなオープン・スタンダードである VESA* Display HDR プログラムが、モニターのスペックを検証、実証したことを証明するものです。このプログラムは、スペックが大きく異なる HDR モニターが市場に出ている状況に対し、ある程度の整合性をもたらす目的で開発されました。

このプログラムでは、HDR モニターを 7 つのランクに評定します。ランクは、主に最大輝度レベルで定義されますが、ローカルディミング、色深度、色域に関する要件も含まれます。第 1 ランクの DisplayHDR 400 に分類されたモニターは、HDR コンテンツの表示に必要な最低限の仕様を満たしたものです。一方、より高いランクの認証を受けたモニターは、さらに優れた HDR 性能を備えていることになります。

最大輝度

最大輝度は、周囲の領域に影響を与えることなく、画像の狭い領域をどれだけ明るくできるかを示します。この数値が高いと、夜空の星 1 つ 1 つを明るく表示しながら、周囲を真っ黒な状態に保つことができます。

画面から放出される光量の測定値である最大輝度が 600cd/m² のモニターが、本当の意味での HDR 出力の最低ラインと見なされるべきです。エントリーレベルの HDR モニターの大半の輝度レベルは 400cd/m² です。こうしたモニターは、典型的な輝度定格が 250 ~ 350cd/m² の SDR モニターより一歩進んだ画質になりますが、高品質 HDR モニターの重要な機能である「ローカルディミング・ゾーン」がありません。

ローカルディミングを使用すると、モニターのバックライトを個々のゾーンごとに暗くすることができます。これにより、画像の明度と暗度のコントラストが向上します。モニターが、ローカルディミングのサポートを提供しているかどうかは必ずしも明白ではありませんが、対応している場合は仕様に記載されているはずです。

色深度

誤解を招きやすいのですが、色深度 8+2 ビットのモニターを避ける必要はありません。ほぼすべての HDR モニターでは、2 ビット分のディザリングを備えた 8 ビットパネルが採用されており、真に色深度が 10 ビットのモニターが持つ高い色数を模倣できます。これらのパネルは 8+2 ビットパネルと呼ばれます。

8+2 ビットパネルは 10 ビットパネルとして販売されることが多いのですが、本物の 10 ビットパネルの性能には及びません。ただし 10 ビットパネルは現在、8+2 ビットパネルの 2 倍から 3 倍の価格になります。とは言うものの、通常 6+2 ビットパネルを使う SDR モニターに比べれば、8+2 ビットモニターは格段に質の高い製品と言えます。色深度の詳細についてはこちらをご覧下さい。

HDR モニターで究極のゲーム体験を

色彩鮮やかな輝きと、グレーから漆黒まで表現する黒のレベル、豊富な輝度を同時に表示できる HDR モニターは、従来の SDR モニターよりもゲーム体験と没入感を向上させることができます。ただし、HDR モニターに適切な機能と仕様が揃っている場合に限ります。ゲーミングモニターとして HDR モニターを選択するのであれば、VESA などの規格団体で認定を受けているかなど、コストだけでなく仕様についても適切な HDR モニターを選択する必要があります。

また、HDR モニターは応答速度が高速であるため、ゲームのレスポンスも向上します。動きの早いゲームでもラグや残像感が少なく、滑らかな映像を楽しむことができます。

HDR モニターが持つ高速な応答速度により、ゲームのレスポンスは向上します。早い動きのゲームでもラグや残像感が少なく、滑らかな映像を楽しむことができます。

色深度、色域、黒レベル、ローカルディミング・ゾーンなどの HDR のハードウェア仕様に関する詳細については、ゲーム用モニターの総合ガイドをご確認ください。このガイドは、ゲーム用モニター技術について知っておくべきことをまとめたものです。