お気に入りのゲームのデザインの原則

重要なポイント:

  • ゲームの定義

  • ゲームが楽しいのはなぜか?

  • 楽しさとは?

  • ゲームデザインの分析

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常に目に見えているとは限りませんが、ゲームは共通の言語を共有しています。Cuphead はヒットマン 2 とは内容は大きく異なるかもしれませんが、どちらのゲームにもより広範なゲームデザインの原則を見て取ることができるでしょう。とは言え、プレーヤーは往々にしてそのようなことは意識していません。

しかし、ゲームデザインの原則を知る方法を学べば、お気に入りのゲームで、より良いプレーヤーになる助けとなるはずです。PC の構築方法を学ぶのと同じように、お気に入りのゲームの内部の仕組みを知ることで、より一層ゲームの価値を理解できるようになります。

ゲームデザイナーと学者は共に、ゲームをより深く理解するための有用な分析ツールを数多く開発してきました。これらのゲームデザインのアイデアの多くは、具体的な例に当てはめると、さらに簡単に理解できます。以下では、これらのゲームデザインの概念が実際のゲームとどのように関連しているかを見ていきます。

ゲームデザインとは?

ゲームデザインとは、ゲーム全体の総合的な設計をおこなうことです。これにはゲームに登場するキャラクターやストーリーの設計だけではなく、ターゲットユーザーに基づいた内容の選定なども含まれます。ゲームデザインは「ゲームを企画する」だけではありません。ゲームの企画や立案は不可欠な工程ではありますが、ゲームデザインのコアとなる部分ではありません。

言い換えれば、ゲームデザインとは、ゲームをよりよいものに仕上げていく作業です。考案されたゲーム企画をもとに、ターゲットやゴールなどをより具体化していきます。ここでは、ゲームデザイナーがディレクターとともに、どのようなゲームの世界観にするかなどを決めていきます。

ゲーム企画の具体化が進むと、次はゲームの画面や操作設計、デザイン、サウンドなど細かな部分を作り上げていきます。

ゲームデザインにおいて重要な 4 点

  1. ユーザーが操作しやすいデザイン
  2. ゲームに引き込む「きっかけ」づくり
  3. ゲーム内容のバランスを取る
  4. 直感的な操作ができるコントロールにする

ゲームデザインをおこなう上で、ユーザーが操作しやすい構造を設計することは非常に重要です。ユーザーが快適にゲーム操作をおこなえ、ゲームを楽しめるということは、優れたユーザー体験の提供に繋がります。重要なのは、複雑すぎる操作を必要とせず、シンプルで感覚的な操作を可能にすることです。

次にゲームデザインで重要な点は、ユーザーをゲームに引き込む「きっかけ」を作ることです。ユーザーがゲームに引き込まれるきっかけはさまざまで、ストーリーやキャラクター、またグラフィックの美しさもその一つです。この「きっかけ」は多くのユーザーを呼ぶ重要な要素となります。ストーリーやキャラクター、またグラフィックの美しさなど、いずれかでアピールポイントを作ります。

3つ目が、ゲーム内容のバランスを取ることです。ゲームデザインにおけるバランスとは、ゲームをしているユーザーが不快に感じないゲームの内容にするということです。たとえば、ユーザーがプレイしているレベルでは倒すことのできない敵が出現し続ける、攻撃する武器がすぐに使えなくなる等、スムーズにプレイできない場合、ユーザーはストレスを感じます。このような事態を避けるためにも、ゲーム内のバランスを調整することは欠かせません。ただし、このバランスを保つことは繊細な感覚が求められます。しっかりとターゲットユーザーを設計し、ユーザーに適したバランスに調整することが必要です。

ゲームデザインで重要な 4 つ目の項目は、直感的な操作ができるコントロールにするという点です。ここでは、ユーザーの負担を軽減したゲーム・コントローラーやキーボード、マウス操作でゲームをプレイできるかが求められます。あまりに複雑で高度なコントロール操作が要求される場合、いくらゲームのストーリーなど他の点が優れていても、ユーザーにすぐに飽きられてしまいます。できるだけユーザーのストレスを減らした操作方法を提供することが大切です。

ゲームデザイナーの存在

ゲームデザインには、ゲームデザイナーの存在が欠かせません。ゲームデザイナーは、ゲームプランナーとも呼ばれ、ゲームの基本な設計全般を担います。ゲームデザインは、個人でおこなう場合もありますが、チームでおこなうことも多いです。

ゲームデザイナーは、ビジュアルデザインなどをおこなうための CG・プログラミング知識から、ゲームルールの構築など論理的思考も求められます。その他にも、ゲームの企画を立案したり、シナリオ作成、システムを構築したりと、クリエイターとしての役割もあります。

このようにゲームデザインをおこなうゲームデザイナーの仕事は多岐に渡り、最新ゲームを常に把握している必要があります。責任が大きい役割ではありますが、ゲームが多くのユーザーに楽しんでもらうことができた際は、大きな喜びに繋がるでしょう。

ゲームとは何か?

現在、「ビデオゲーム」という用語は、サイドスクロールのプラットフォーム・ゲームからファーストパーソン・シューティング・ゲーム、いわゆる「ウォーキング・シミュレーター」まで、幅広いゲーム体験を包含します。さらに、開発者がゲームという概念の限界に挑戦を続けるにつれて、「ゲーム」の固定的な定義では幅広いゲーム体験を網羅できなくなりつつあります。それでもなお、ゲームを定義しようとする取り組みは、ゲームの作成方法やその存在理由を理解する上で役立ちます。

ゲーム学者のジェスパー・ジュール氏は、ユトレヒトで開催された 2003 Level Up Digital Games conference の基調講演「The Game, the Player, the World: Looking for a Heart of Gameness (ゲーム、プレイヤー、ワールド: ゲームたらしめるものの核心を探る)」において、「ゲームをゲームたらしめるもの」の 6 つの主要要素を明らかにしています。

  1. ゲームにはルールがある
  2. ゲームには、変動的かつ定量化できる結果が存在する
  3. ゲームの結果には、さまざまな価値が割り当てられる
  4. プレーヤーは結果に影響を与えるよう努力する
  5. プレーヤーは結果との関連性を感じている
  6. 現実のできごとに影響を与える意図の有無にかかわらず、ゲームをプレイすることがある

このようなゲームデザインの要素が実際にどのように機能するかを理解するために、手書きのアニメーション・スタイルや高い難易度で知られるサイドスクロール型のアクションゲーム、Studio MDHR の Cuphead を分析するためのフレームワークとして、ジュール氏の定義を活用して各要素を分解した分析をしてみましょう。

Cuphead のルールはシンプルです。プレーヤーは、直線方向に続く映像の最後にあるチェックポイントまで銃を撃ちながら走り抜けるか、複数ステージに登場するボス・キャラクターを倒すことでゲームをクリアできます。どちらのステージタイプでも、ステージをクリアする前にプレーヤーの体力値が 0 になると終了です。

このように、Cuphead には、ジュール氏がゲームについて示した 2 つ目の要素である「変動的かつ定量化できる結果」が存在します。単なる勝ち負けだけでなく、完了したステージの結果は、いくつかの指標 (ステージの完了にかかった時間、ステージの完了時点で残ったヒットポイントなど) を用いて採点されます。プレーヤーは、敵を 1 人も傷付けることなくステージを完了すると、特別な「平和主義者」のグレードを獲得することもできます。つまり Cuphead は、ジュール氏の示した 3 つ目の要素として、ステージで想定される結果に対して明示的に複数の価値を割り当てています。

ジュール氏の第 4 の要素では、プレーヤーはこれらの成果に影響を与えるように努める必要があるとされています。より良い成績を収めるには、スキルや連携が必要です。Cuphead をプレーしたことのある方ならお分かりのように、全く努力しない場合、たいていのプレーヤーは確実に失敗します。そのほかにも、ゲーム自体のインタラクティブな性質は、プレーヤーの努力の結果がすべてにつながることを意味します。例えば、アクションするかどうかの違いが、ステージをクリアするか「ゲームオーバー」に終わるかの分かれ道となります。

ジュール氏は、プレーヤーがゲームの結果に納得するかどうかは主観的なものであることを認めています。しかし、ジュール氏はプレーヤーによるゲームへの感情移入は、ゲームを始めると決めた瞬間から始まると主張しています。

Cuphead の場合、プレーヤーは一番初めに失敗した時から、その悪名高いまでの難しさに心を捉えられてしまいます。何十回もステージクリアに失敗したとしても、プレーヤーは成功への執念を募らせます。ゲーム自体が画面越しにプレーヤーを挑発するかのように、絶妙なやり方でこうした執着心を刺激します。

最後に、Cuphead は現実世界での交渉を引き起こす結果をもたらします。ゲームの結果が実生活での体験に影響することを許容するかどうかは、プレイヤー次第です。これは感情的な反応 (コントローラーを投げる)、またはより具体的な行動 (ステージの結果で友人と賭けをする) として現れることがあります。ただし、このような結果は任意であり、ゲーム自体で必要とされるものではありません。

ジュール氏によるゲーム定義のフレームワークは、具体的でありながら柔軟性を持つものであり、さまざまな種類のゲームに適用できます。演習として、この定義をあなたのお気に入りのゲームの 1 つに適用することを考えてみましょう。MMO、レーシング・シミュレーション・ゲーム、ストーリー性の高いアドベンチャー・ゲームには、どのようにマッピングしますか。

ゲームが楽しいのはなぜか?

ゲームを定義する方法は十分に理解できましたが、ゲームを「楽しい」体験にする理由については、私達はまだ何の知識もありません。あるゲームはジュール氏の説明における基準を満たすかもしれませんが、だからと言って必ずしもすべてのプレイヤーにとって楽しめるわけではありません。ではゲームはどのようにして、その仕組みを「楽しみ」に転換しているのでしょうか。

ゲームデザイナーのロビン・ハニッケ氏、マーク・ルブラン氏、ロバート・ズーベック氏がこれに答えています。彼らは 2004年に、「MDA: A Formal Approach to Game Design and Game Research (MDA: ゲームデザインとゲーム調査の正式なアプローチ)」を発表しました。このホワイトペーパーでは、「MDA フレームワーク」が紹介されています。これは、ゲームを仕組みと原動力、および美学の 3 つの部分に分割する設計手法です。

要するに、仕組みとはゲームのルールを表し、原動力とはこれらのルールから生まれる秩序を表し、美学とはこのような秩序に参加することに伴う感情的な体験を表すものとされています。仕組みはゲームのプレイ中にはほぼ認識されない状態となり、プレーヤーはゲームの美学しか意識しないことが理想的です。これらの要素がすべて同時に機能しているときは、私達はプレイを続けずにはいられません。これが、しばしば「楽しい」と呼ばれる感覚です。

具体的には、仕組みには個々のアイテム (箱の鍵や銃など) やシンプルなアクション (ジャンプや魔法をかけることなど) が含まれ、ゲームの最も基本的な要素となります。原動力とは、プレーヤーがこうした仕組みを活用する方法を表します。例えば、対戦相手を狙撃するために長距離用ライフルを使ったり、できる限り多くの敵に影響を及ぼすために究極の能力を使う頃合いを見計らうことなどがあります。MDA のフレームワークによれば、美学とは発見、挑戦、物語、友情、ファンタジーなど、さまざまな形で表現され得るものです。これらは、プレーヤーの行動を裏付ける動機や、プレーヤーを楽しくさせる要因を導き出すものを表しています。

MDA フレームワークをよりよく理解するため、これをヒットマン 2 に当てはめてみましょう。ヒットマン 2 のゲーム・ディレクター、マティアス・エングストローム氏はヒットマン 2 について、「憧れや遊び心が詰まった、世界を舞台とするエージェント・ファンタジー」と表現しています。このゲームでは、プレーヤーは必要とあればどんな手段を使ってでも標的を暗殺する使命を負った殺し屋、「Agent 47」を操ることができます。プレーヤーは、それぞれのステージに散りばめられたツールをどのように組み合わせて使い、目標を達成するのか、想像力を発揮することが求められます。

では、それが楽しみを生み出すのはなぜでしょうか。「探索、発見、問題解決というゲームの核となる連鎖こそ、私が愛するものです」とエングストローム氏は述べています。またエングストローム氏は、ステージを繰り返しプレーすることを勧めます。「何十回、何百回とステージをプレイすることで、プレーヤーはサンドボックス設計の時計の針をゆっくりと動かし、捕食者の頂点に立つことができるのです」と、彼は言います。

MDA フレームワークを用いてエングストローム氏の主張を分析する場合、ハニッケ氏らが「自己発見としてのゲーム」と説明している「表現」は、ゲームの美学を示す要素の 1 つと考えることができます。プレーヤーがヒットマン 2 のステージをもう一度プレーしたいという思いに駆られるのは、それがプレーヤー自身の創造性を表現する真っ白なキャンバスの働きを担うからです。

プレーヤーはゲームのツールを創造的に使用することで「表現」を行っているのです。例えば、銃を持った標的がよく見えないときでも、シャンデリアを落下させたり、殺鼠剤を盛ったり、ジェット機から突然追い落としたりすることで打ち倒すことは可能です。この場合、それぞれのツール (殺鼠剤、銃、鍵開けの道具) が仕組みで、プレーヤーが考え出す巧みな戦略が原動力にあたります。

正確には楽しみとは何か?

ここまでで、ゲームがどのようなもので、いかにして機能するかを確認しました。あと 1 つ残るパズルのピースがプレーヤーです。プレーヤーがゲームをプレーする理由 ゲームがどのように楽しみを引き出すかは理解できましたが、それを求めるよう私達を駆り立てるものとは何でしょうか?

このテーマは、ラフ・コスター氏が 2003年に Austin Games Conference で発表した内容をさらに展開させた著作、Theory of Fun for Game Design (ゲームデザインのための楽しさの理論) で取り上げられています。この著作において、コスター氏はすべてのゲームがパズルのように機能することを示しています。解決策が単純であればあるほど、プレーヤーが思わず惹き込まれるようなパズルの魅力は失われていきます。

コスター氏は、人間がパターン認識を巧みに行うことがその理由と考えます。プレーヤーは常に、自分が観察したパターンを習得したいと感じることになるでしょう。しかし、パターンを理解できるようになると、予測可能性が増し、以前ほど興味惹かれるものではなくなります。楽しみというものは、新しいパターンを識別することと、習得しやがて飽きてしまうまでの間にある、緊張感のなかに存在するのです。

この考え方を、Frontier Developments の Planet Zoo に当てはめてみましょう。これはビジネス管理シミュレーション・ゲームで、プレーヤーや自分自身の動物園を経営する機会を得ることができます。「Planet Zoo における体験を語る言葉として最もよく見られるのは、おそらく遊び心にあふれるとか楽しいといったものだというのが私の意見です」とゲーム・ディレクターのピアーズ・ジャクソン氏は言います。「美しい環境、気分を高揚させる音楽、愉快なキャラクター、素晴らしい動物たちなど、私たちは常にプレーヤーを笑顔にすることを目指しています」

コスター氏が Theory of Fun で述べたのと同様に、ジャクソン氏は、プレーヤーが Planet Zoo のようなゲームを楽しむのは、ゲームの秩序を習得することにやりがいを感じるからだという考えを持っています。「管理において、最適化された設定を少し絞ることで、収益性、作業量、ゲストフロー、動物の健康状態が改善され、本当に満足感を得られる場合があります」とジャクソン氏は言います。

しかし、Planet Zoo が特に楽しいゲームであるためには、ゲームの秩序を拡充し、潜在能力を高めることが必要です。ジャクソン氏は、シムピープルシムシティのクリエーターであるウィル・ライト氏の言葉を借りて、楽しみとは「可能性という空間のなかで特定の領域を見つけ出すプロセス」と説明しています。これは、ゲームの境界のなかで許可されるプレーヤーのアクションについて言及したものです。

プレーヤーが Planet Zoo において、可能性という空間のなかで特定の領域を見出すのは、このゲーム固有の課題と直面したときです。例えば、それぞれの種類の動物は、食物やシェルターから社会的交流まで、固有の欲求を持っています。プレーヤーは、個々のニーズに同時、かつ持続的に対応できるよう、動物のすみかを配置する必要があります。Planet Zoo の「楽しみ」の 1 つは、慣れ親しんだ秩序が形を変えて生み出された難題に遭遇するものの、やがてはそれを克服する方法を学んでいくことにあります。

ゲームデザインについて考えてみましょう

これらのツールを使って分析できるのは Planet Zoo だけではありません。事実、このようなゲームデザインの原則は、巡り合ったあらゆるゲームを解釈するために用いることができます。秘密のコードを解読するようなものだと思いましょう。次にゲームをするときは、ゲームデザイナーのように考えてみてください。「この仕組みが特に優れていると感じるのはなぜか?」 「このゲームをやめられないのはなぜか?」 以前よりもこのような質問に答える心構えができました。さらに、ゲームのプレー体験も役に立つでしょう。