e スポーツの 2018年オリンピックへの道

2018年平昌オリンピック冬季競技大会に先立って、e スポーツが発祥の地である韓国に帰ってきました。

ポーランドのキェルツェで育った Michal Blicharz 氏には、夢中になっていたものが 2 つありました。それは、柔道とオンラインゲームです。とは言っても、自分の競技スポーツと対戦型ゲームへの情熱が融合し、歴史を変えることになろうとは夢にも思っていませんでした。

Blicharz 氏は、柔道の試合の審判を務める時間以外はインターネット・カフェに入り浸り、友人と Unreal Tournament をプレイしていました。町内の挑戦者をすべて打ち負かすと、Unreal Tournament の挑戦者として武者修行の旅に出かけたのです。2000年の初めには、光学式マウスとヘッドフォンを携えて、Windows* 98 PC が何列も並ぶインターネット・カフェでトーナメントに参戦しながらポーランド中を移動しました。

「友人と一緒に、冒険のような感覚で旅していました。強敵に出会いたかったのです」と Blicharz 氏は述べています。

こうした時代を経て、プロゲームは世界的な現象へと発展し、Blicharz 氏はその過程の大部分を目撃してきました。現在、彼は ESL Gaming 社の副社長として、世界中で e スポーツ・トーナメントの開催を支援しています。国際的な e スポーツ競技会で最長の歴史を誇る Intel® Extreme Masters もその 1 つです。

ネットワーク・テレビでの放送や大スター選手の登場により、e スポーツはここ数年大きな脚光を浴びています。カリフォルニア州オークランドで開催された Intel® Extreme Masters 大会の観客数は、前年から約 40% 増加し、全世界で 2,860 万人ものファンがオンラインで視聴しました。

インテルがオリンピック競技大会の世界的なパートナーとなったことで、e スポーツは 2018年平昌オリンピック冬季競技大会に先立つデモンストレーションという形で、かつてない大舞台に上がるチャンスを獲得しました。

Intel® Extreme Masters 平昌大会では、世界最強の StarCraft* II プレーヤーたちが賞金総額 15 万ドルをかけて直接対決。12月上旬には、世界中で誰でも参加できるオンライン予選がスタートし、12月19日に北京で開催された予選大会では、中国のトッププレーヤー 2 名による対戦がライブで行われました。そして両方の予選を勝ち進んだプレーヤーたちが、韓国の平昌で決戦に挑んだのです。

「インテルはこの大会を、世界中のより多くの人々に e スポーツのスリルを体験するチャンスをもたらす重要な一歩として考えています」とインテルの e スポーツ / ゲーム担当副主任兼ジェネラル・マネージャーである John Bonini は話しています。

e スポーツは驚くべき速度で成長しています。Newzoo* のレポートによると、2017年は e スポーツが世界中で 3 億 8,500 万人の観客を引きつけ、収益は約 7 億米ドルに達すると予測されました。これは、前年比 40%を 超える成長率です。2020年までに、e スポーツの収益が 14.8 億米ドルに達し、観客は 5 億 8,900 万人まで増加すると、Newzoo* は予測しています。

例えば、ポーランドのカトヴィツェで開催された 2017年 Intel® Extreme Masters 2017 チャンピオン大会では、スタジアムでのイベントに 17 万 3,000 人のファンが来場しました。Business Insider の報告によると、この大会では 4,600 万人の個人視聴者が観戦し、e スポーツのオンライン視聴者数としては記録的な数値となりました。2016年にカトヴィツェで開催されたイベントと比較すると、観客数は 6 万人、オンライン視聴者数は 35% 増加しています。

Blizzard Entertainment の CEO 兼 StarCraft* 制作者である Michael Morhaime 氏は、「過去数年間、e スポーツの人気が世界中で高まっています」と Twitch* と Twitter* でライブ放送された Intel® Extreme Masters 2018 平昌大会のパネル・ディスカッションで述べました。

Morhaime 氏にとって、e スポーツの競技会が 2018年平昌オリンピック冬季競技大会に先立って開催されたことは、里帰りのようなものです。なぜなら、韓国は e スポーツの発祥の地だからです。

プロゲームの誕生

「Blizzard はこれまで e スポーツに 20 年近く携わってきました」と Morhaime 氏は語ります。

「きっかけとなったのは 1990年代後半に韓国で人気だった StarCraft* でした。韓国では StarCraft* が競技用ゲームとしていち早く認められ、主流ゲームになりました」

Intel® Extreme Masters 2018 平昌大会が StarCraft* II のトーナメントで幕を開けたことは、驚くべき偶然です。初代 StarCraft* は、プレーヤーが素早い指さばきでエイリアンの軍隊を指揮する戦略ゲームで、1998年に韓国のゲームブームに火を付けました。韓国国内でゲーム競技会が瞬く間に広がり、公園やショッピング・モールで毎週試合が行われました。さらに、2 社のケーブル・ネットワーク会社が StarCraft* のトーナメントをレギュラー番組として放送するまでになったのです。

プロゲームがまだ世界のほかの地域では認知されていなかった時代に、伝説的な StarCraft* プレーヤーである Yun-Yeol “NaDa” Lee 氏は毎日 10 時間練習して 1 年で 20 万米ドルを獲得し、大勢の熱狂的ファンから喝采を浴びました。

プロゲームが職業として確立されるにつれて、「e スポーツは情熱の対象から人々の生活手段へと変化してきました」と StarCraft* のコメンテーターである Geoff Robinson 氏は述べています。

世界の注目

しかし、韓国以外の国々では e スポーツの普及に時間がかかりました。

「e スポーツはトレードショーの片隅に置かれ、観客も 10 人程度しかいませんでした」と Blicharz 氏は 2006年に開催された Intel® Extreme Master の最初のシーズンを振り返ります。

2009年になって、中国政府がゲームカフェの衰退に対する取り組みを主導する中、Intel® Extreme Masters は中国に進出しました。その後中国は世界有数の e スポーツ市場に生まれ変わり、コスプレーヤーが殺到する Intel® Extreme Masters 上海大会などのトーナメントを開催するようになっています。

2013年には、ポーランドのカトヴィツェで Intel® Extreme Masters チャンピオン大会が開催され、1 万人という最高観客数を記録しました。それ以来、この極寒の都市は e スポーツのメッカとなり、2017年には 17 万 3,000 人の観客を集めています。これは、世界最大級のサッカースタジアムの観客動員数をはるかに上回る数字です。

Intel® Extreme Masters は、e スポーツを世界に普及させる取り組みを続けています。オーストラリアで初めて開催された e スポーツのメジャー・トーナメントである Intel® Extreme Masters 2017 シドニー大会では、数千人のオーストラリア人ファンによる「Aussie Aussie Aussie, oi oi oi」という荒々しい掛け声が響き渡りました。

「e スポーツが普及するのは自然な流れであり、誰もこの動きを無視することはできません」と Blicharz 氏。最近の調査では、e スポーツには 3 億 8,500 万人を超えるファンがいることが示されています。

Blicharz 氏によると、Intel® Extreme Masters 2018 平昌大会がまた 1 つの節目になったと言います。このデモンストレーションに関連して、国際オリンピック委員会 (IOC) は、将来のオリンピック競技大会で e スポーツが正式競技になる可能性を示唆しました。

この流れは止められない

オリンピックから認められれば、e スポーツに変革をもたらす可能性があります。2018年平昌大会に先立って行われた予選会では、e スポーツへの新たな観客の呼び込み、そしてファン層とコミュニティーの拡大が大いに期待されました。

オリンピックの歴史を専門とする Bill Mallon 氏によると、米国以外の多くの国では国家レベルでスポーツに資金を提供しており、その資金の大部分はオリンピックの競技種目につぎ込まれます。

かつて、プロテニス界はオーストラリアと米国による独占状態でしたが、1988年にテニスがオリンピックの正式種目になると、競技レベルが劇的に向上しノバク・ジョコビッチやビクトリア・アザレンカのような東欧出身のトップ・テニス・プレーヤーが参入するようになりました。

同様のシナリオが e スポーツでも起きる可能性があります。ただし、世界中に普及させるには、多額の資金投入が必要です。Blicharz 氏によれば、e スポーツの普及にとって最大の障害は、発展途上国のテクノロジーが基準に満たないことです。しかし、インテルと IOC の提携により関心は高まっており、辺境の地域でもインターネット接続が改善され、PC の高速化が進む可能性があります。どちらも e スポーツ競技会開催の前提条件です。

Blicharz 氏は、「e スポーツの普及が遅れている国はまだ多くありますが、5G ネットワークなどのテクノロジーにより変化が起きることを願っています」と述べています。

e スポーツに大きな変化が到来しつつあります。