Innovate Finance 2019 で明らかになった AI の主要トレンドに関する詳細

AI 分野における規制、導入事例、スタートアップ企業の参入。

「AI の素晴らしいところは、独自のデータから価値を引き出せる点にあります。データの中に何があるか、十分なレベルで構造化されているか、信頼度はどの程度かを把握していなければ、そのデータを基盤に何を構築できるかなど分かるわけがありません」

 

スタートアップ企業、銀行、政府、およびメディアから 2,000 人を超える参加者がロンドンの Guildhall に集結し、年 1 回の Innovate Finance Global Summit (IFGS) が 4月29日に始まりました。FinTech 界を代表する 5 年目となるこのイベントでは、HSBC、Société Générale、Citibank をはじめとする企業の経営幹部が集まり、活発なパネル・ディスカッションが行われ、素晴らしい歴史的背景に加えて、わくわくするような未来を垣間見ることができました。

1. AI の規制

Cognitive Scale 代表取締役 CEO、Manoj Saxena 氏は、AI セッションの開始にあたり、AI アプリケーションはテクノロジーのためではなく、人間の利益になるように設計するべきであると熱をこめて呼びかけました。AI の潜在能力を原子爆弾の潜在能力に例え、明確で信頼できる AI の必要性を強調し、これはイノベーションとコントロールのバランスをとる政府の規制によって実現できると示しています。

 

一方、パネル・ディスカッション「AI Innovation in Focus: Competitive Edge, Governance, Ethics and Regulation (注目の AI イノベーション: 競争力、ガバナンス、倫理、そして規制)」では、IMC の CEO である Stuart Sherman 氏が、各国政府の動きの遅さを指摘し、AI 倫理の指揮をとる現実のプレッシャーを目の当たりにしている主要企業が独自に取り締まりを行う必要があると提案しました。

中国では、GDPR のような、アジア諸国に適用するには厳格すぎると考えられる EU の規定に従うべきかどうかという議論により、競争や規制施行となった場合のトレードオフが浮き彫りになっています。JD Digits 副社長兼チーフ・エコノミストの Jian Guang Shen 博士 は、AI の規制は政府が発するべきではないとし、英国のスタートアップ企業数社を証拠として引き合いに出しています。

Saxena 氏が基調講演の締めくくりとして述べた言葉は的を射た注意喚起です。AI の善悪ではなく、AI の利用方法について人間がどのような判断をするかにかかっています。

2. 直感的にも個人的にもなり得る AI

製品から体験へと焦点が移行し、ブランドの商品化が進む中、あらゆる業界が顧客ロイヤルティーの崩壊という局面に立たされています。そう述べた Facebook 金融サービス業界担当幹部の Russell Pert 氏 は基調講演で、大多数のユーザーがビジネスにおけるコミュニケーションにメールや電話よりも Messenger*、WhatsApp* といったアプリケーションを好むことを挙げ、顧客の行動の変化を強調しました。スムーズな体験を重視して、Globe Telecom、FirstCar Quote など Facebook のクライアントは、Messenger* や WhatsApp* を介して顧客に近づくため、チャットボットを導入しています。

しかし、すべてのボットが同じように生み出されるわけではありません。Stuart Sherman 氏は基調講演で、多数のボットが発表されてはすぐに停止されることを説明しました。パーソナリティーの分析により直感をエミュレートする、目的に合わせたボットを構築することが重要だと指摘しています。直感的な AI は実現可能ですが、現状の人口統計的なアプローチを越えることのできる生きたデータが必要です。Sherman 氏は、人口統計学的な観点からチャールズ皇太子と「暗黒の王子」と呼ばれるオジー・オズボーンの特性を紹介しました。この 2 人は人口統計学上は一致していても、全く異なる人物です。よく一致しているように見えるこの 2 人を区別できるデータが不足していることから、その足りていないデータが持つパワーの重要性がこの例から分かります。企業が顧客へさまざまな対応方法を提供できるようにするのも、この不足データです。

 
 

3. AI への過剰な期待を超えて

パネル・ディスカッション「AI in Practice: The A to Z of AI Applications in Financial Services (現実環境での AI: 金融業界の AI 導入 A to Z)」では、専門家たちが金融サービスを革新している実際の導入事例について検討しました。年間 400 万の貸借対照表から情報を抽出するという煩雑な処理を解消した、Evolution AI による AI とコンピューター・ビジョンを使用した事例から、インテリジェントなニューラル・ネットワーク・リスク制御システムにより不正行為成立の急増に対処するインテルと China UnionPay* との連携まで、AI はすでに金融サービス業界 (FSI) に変革を起こしています。もちろん、課題がなかったわけではありません。

AI の導入を成功させるというのは、データを完全に整理することであり、経営幹部を巻き込むことです。インテルのヨーロッパ、中東、アフリカ地域 AI テクニカル・ソリューション・スペシャリスト、Walter Riviera は、経営幹部を相手にするときの課題を次のように強調しています。「思うに、競合他社からビジネスの差別化を図り、先頭を切ってイノベーションを実現したいという理由から、多くの企業が AI の時流に飛び乗ろうとしていますが、 各社のビジネスニーズから始めることが重要です。AI の素晴らしいところは、独自のデータから価値を引き出せる点にあります。データの中に何があるか、十分なレベルで構造化されているか、信頼度はどの程度かを把握していなければ、そのデータを基盤に何を構築できるかなど分かるわけがありません」。

Riviera は、AI への過剰な期待を控えるべきだと、経営幹部に促しています。「AI が業界の専門用語であるからといって、導入が複雑になるというわけではありません。アプリケーションが機能する限り、シンプルにできます。銀行取引などの金融アプリケーションでは、データの取得とほぼ同時くらい速さでリアルタイムの応答が必要とされているため、できる限り迅速にその解決策を提供できるようにしたいと思っています。複雑になるほど、遅延の可能性が高くなりますから」。

AI によって人間が嫌う繰り返し作業がなくなり、従業員の時間に余裕ができる可能性がある点について、パネリストの意見は一致しています。これは AI が「人間の仕事を奪う」という意味ではなく、人間にはもっと複雑な仕事をする時間ができると期待されているということです。

4. Pitch360: AI イノベーションの実現事例

Innovate Finance Global Summit のフィナーレは Grocers’ Hall に場所を移し、インテルがスポンサーを務める Pitch360 のチャンピオンを目指して、24 社の革新的なスタートアップ企業が審査員を前にコンペで競いました。インテルの FinTech グローバルヘッドである Dejan Kusalovic が出席し、コンペが開始されました。Kusalovic は、コンペに参加するさまざまなスタートアップ企業を紹介し、「参加企業すべてに共通する最も重要なただ 1 つの特徴は、データです。増え続ける多様なデータをスマートかつ革新的に活用することが、金融サービスにおける新しいテクノロジーの成功にとって欠かせません」と述べています。実際、8 つのエントリーカテゴリーは、暗号通貨から決済システムや FinTech for Good の活動まで、FinTech の全範囲に及んでいます。イノベーションの全体像と可能性は、表彰台に上がる受賞企業からすぐに明らかになりました。

AI とマシンラーニングのカテゴリーでは、AI を使用して投資家と資産管理者向けに検索機能と意思決定を向上させることに重点を置くスタートアップ企業 3 社にスポットライトが当たりました。まず、Kite Edge が次世代のエンタープライズ検索について説明しました。この検索では、意味解析エンジンを使用して、研究機関や報道機関のコンテンツに加え、社内のドキュメントや非構造化データも処理することで、最終的にはマシンベースの拡張インテリジェンスを使用して、資産管理者がより的確な意思決定をできるよう支援します。

続いて Meltwater が Outside Insight* プラットフォームのデモを行い、このプラットフォームがなければ逃してしまう、偏った意思決定や非効率的な作業から発生してしまう可能性の高い、投資家の機会損失を回復する方法について、AI のパワーが実演されました。AI を使用してウェブデータを精錬し、より情報に基づいた、より的確な意思決定につながる信号を浮かび上がらせるこのプラットフォームは、まずは投資家のコミュニティーを対象としています。最後に登場した CRiskCO は、企業の信用審査に AI を使用して変革を起こしました。このサービスが提供されれば、金融機関は商用貸付の開始プロセス、ベンダーのリスク管理、高度なリスク査定を自動化し、短縮できるようになります。

聴衆がスマートフォンを使用して投票し、Meltwater が AI カテゴリーで王冠を勝ち取りましたが、総合優勝は Novastone が受賞しました。Novastone は、クライアントとのやり取りをスムーズにすることを目的とし、インスタント・メッセージ・プラットフォームによる「フォームへの入力ではなく対話」に重点を置いています。これにより高度にパーソナライズされたクライアント体験を実現しています。

Innovate Finance Global Summit 2019 から得られる重要なメッセージは明らかでしょう。金融サービスにはあまりにも多くの AI ユースケースが考えられるため、各企業の要件や顧客のニーズに合わせて導入方法を調整する必要があります。

詳細情報:

- Financial Services Data Transformation (金融サービスのデータ・トランスフォーメーション)

- How Combining AI with High Performance Computing Could Transform the Finance Industry (AI とハイパフォーマンス・コンピューティング・クラウドの組み合わせが変革する金融業界)

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