ロンドン・ブロックチェーン・サミット 2018: ブロックチェーンによる銀行の改革

最近開催されたこのイベントでは、幅広い業界を横断するブロックチェーンの新たな役割について詳しい検証が行われました。

「ブロックチェーンは、銀行に真の変革をもたらし、大幅なコスト削減と効率向上を実現します」

テクノロジー・ライター、Libby Plummer

新しいテクノロジーによってデジタル分野の勢力図が一変する中、医療から農業、スポーツといったさまざまな業界で混乱を招いていることも否定できません。ブロックチェーンは、2018年に今後のカギとなる技術動向として登場して以来、あらゆる分野でその影響を目にするようになりました。その中でも最も影響が大きいと見込まれるのが金融サービス業 (FSI) です。

ブロックチェーン (英語) は共有台帳の一種で、分散台帳とも呼ばれます。所有権を管理する非集中型の共有データベースとして、取引レコードを改ざんの困難な状態で永続的に記録します。最も一般的認知度の高い共有台帳であるため、暗号通貨ビットコインの中核を担っています。ただし、ブロックチェーンの適用範囲は仮想通貨にとどまるものではありません。少々紛らわしいのですが、普遍的に理解されているブロックチェーンの定義というものはなく、共有台帳技術の包括的な説明として用いられることが最も一般的です。この種の分散型ストレージは、透明性と追跡可能性を強化します。

世界中の主要な金融機関が、ブロックチェーンにすでに多額の投資を行っています。この技術には、銀行にとって影響力の大きい 2 つのメリットがあり、 1 つはプロセスの合理化による経費節減で、もう 1 つは優れた効率性です。これにより、取引の高速化が可能となり、その結果、間接費の削減と顧客満足度の向上がもたらされます。この技術は、金融業界を一変させてしまう可能性があります。Harvard Business Review (英語) の予測では、インターネットによるメディアへの影響に匹敵する規模で、銀行に衝撃をもたらすとまで言われています。

これは、最近開催されたロンドン・ブロックチェーン・サミット (英語).1で取り上げられた主要テーマの 1 つです。
最近ロンドンで開催されたブロックチェーン・サミット・シリーズ (5 つのイベント・カンファレンス) の一部では、120 人を超える講演者が集まり、この影響力のある技術がもたらす可能性について専門家の観点から意見が交わされました。ブロックチェーンは、金融業界でさまざまな方法による利用が考えられます。主要な可能性としてまず挙げられるのは、国際送金の高速化です。これまでは必要以上に時間がかかることで広く認知されていました。カリフォルニア州に本拠を置く Ripple 社1は、国境を越える送金の高速化を可能にする独自のブロックチェーン基盤の変換プラットフォームを、すでに 100 を超える金融機関 (スペインのサンタンデール銀行1など) に導入しています。

ブロックチェーンの合理化機能は、貿易金融に多大な影響を及ぼす可能性があります。事務処理が長引くことで一般には 1 週間かかるとされる取引が、わずか 1 日に短縮されます。さらに、スマート・コントラクトが円滑になります。仲介者が不要になるだけでなく、設定したアクションまたは日付で契約条件が自動的に有効になるためです。この仕組みによって、銀行内のデータ品質が向上し、他行間で共通のデータベースを共有するという目標が現実のものとなると見込まれます。

金融業界にとってブロックチェーンの最も重要なメリットの 1 つは、個人情報が確実に保護された状態で顧客データへの共有アクセスが可能になることです。本人確認 (KYC) 規制により、クライアントの個人情報を照合し、マネー・ロンダリングを防止するために、一次文献の認証が金融機関に義務付けられています。ドイツ銀行をはじめとするメガバンクの系列グループや規制当局1 は最近、ブロックチェーン・プラットフォーム R3 (英語) Corda*1 上に構築された KYC アプリの試験運用を開始しました。その意図は、各金融機関が KYC データを個別に確認および更新する必要をなくすことによって、コスト削減と処理速度の向上を図るというものです。

「ブロックチェーンでカギとなるのは、セキュリティーの確保、個人情報の保護、そして拡張性です」と、インテルの Fintech Enabling 部門グローバルヘッドを務める Dejan Kusalovic が、ロンドン・ブロックチェーン・サミットでのイベントの 1 つ、銀行業界におけるブロックチェーンに関するパネル・ディスカッションで話しています。ブロックチェーン・プラットフォームの開発においては、基盤を支える技術が重要な役割を果たし、インテルはこの領域での開発をすでに進めています。

インテル® ソフトウェア・ガード・エクステンションズ (インテル® SGX) (英語) は、ハードウェア支援型のセキュリティーを提供し、コードおよびデータの公開 / 改ざんを防止する設計になっています。これにより、アクセス中、保管中、送受信中にかかわらず、データの確実な保護が可能になります。インテルは、ブロックチェーンのスタートアップ企業である Enigma 1と連携しています。Enigma が開発した独自のプライバシー・プロトコルは、インテル® SGX を使用してデータを保護しながらデータ処理も実行できるというものです。この技術は、ブロックチェーン基盤のプラットフォーム Ethereum1 上で実行されるスマート・コントラクト機能の開発に採用される予定です。また、インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーが、ハードウェア支援型の多様なセキュリティー機能により、ブロックチェーン・プラットフォームを構築する強力な基盤を提供します。

さらに、インテルは 2016年に共有台帳プラットフォーム Sawtooth Lake を Hyperledger*1 プロジェクトに提供しました。Linux Foundation1 が展開する Hyperledger* は、ビジネス向けブロックチェーン技術のインキュベーターの役割を果たし、数多くのフレームワークを特徴としています。このフレームワークの 1 つ Hyperledger* Sawtooth は、個々の用途に合わせてカスタマイズ可能なビルディング・ブロックの共通セットの提供を目的に設計されています。

ブロックチェーンは、非集中型のビジネスモデルとして、銀行にとっては理想的です。「ブロックチェーンはますます多様な事例で最適なソリューションとなってきています」と Kusalovic は言います。ただし、この技術は金融サービス業界の一部の側面で完全な改革をもたらすと見込まれますが、すべてのケースで適切とは言い切れません。金融機関は、具体的にどのような課題がこのテクノロジーで解決できるかという点に注目する必要があります。どのデジタル・トランスフォーメーションの形態にも共通することですが、ブロックチェーンをほかの要素と切り離して考えることはできません。むしろ、既存システムと結び付く、より広範なデジタル戦略の一部として扱う必要があります。確実に成功を収めるために、銀行の組織は、他行とのコラボレーションや、コンソーシアムの一部として機能する可能性を検討することも必要になります。エコシステム・パートナーとの連携も、テクノロジーの理解を促進する上で欠かせません。

ブロックチェーンは、銀行に真の変革をもたらし、大幅なコスト削減と効率向上を実現します。ただし、克服すべき課題は山積みです。特に、EU 一般データ保護規則 (GDPR) の遵守を含め、新しい法律への準拠も義務化されており、将来的には、ブロックチェーン特有の規制も予測されます。さらに、オープンバンキングの台頭により、従来型の銀行は、成長の一途をたどるフィンテック関連スタートアップ企業との激しい競争が避けられません。しかし、「銀行が手に入れようとしているカギは信頼です」と Kusalovic は述べています。強固な伝統というアドバンテージの上に、デジタル時代に対応するブロックチェーン基盤のシステムを構築する従来型の銀行にとって、信頼は中心的な課題となります。

詳細情報:

How Intel is Shaping Blockchain Technology (英語)

https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/security/blockchain-overview.html

How Blockchain will Transform Finance in 2018 (英語)

https://www.intel.co.uk/content/www/uk/en/it-managers/blockchain-transforms-finance.html

What will Banks Look Like in 2030?How New Technologies will Transform the Future of Finance (英語)

https://www.intel.co.uk/content/www/uk/en/it-managers/technologies-transform-future-finance.html

NextGen Banking London 2018: The AI Revolution (英語)

https://www.intel.co.uk/content/www/uk/en/it-managers/nextgen-banking-ai.html

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