資金の流れを超えた展望

「インターネットが人間のコミュニケーションに何をもたらしたか。トランザクションの信頼性にブロックチェーンがもたらす影響もそれに並ぶと考えています」

誇大広告が現実になる時、その影響を最も受けるのはどこでしょうか?

2017年の Gartner による予測では、ブロックチェーンが世界にもたらすビジネス価値 は 2030年までに 3 兆 1,000 億米ドルに達すると見込まれています。この価値を引き出せるのは、業務処理の効率化、創造的破壊を越えた市場の再割り当て、新しいビジネスモデルの構築からです。

これは金融サービスに特に当てはまります。金融業界は当初、懐疑的ではありましたが、銀行取引が新たな時代に入った現在では、ブロックチェーンがデジタル・トランスフォーメーションの成長要素となっています。

Financial Times は昨年、銀行がブロックチェーンを活用する領域を、清算 / 決済、支払、貿易金融、本人確認、シンジケート・ローン (協調融資) の 5 つと示しました。

清算 / 決済の効率化とバックオフィス業務の「一掃」はどの金融機関も関心を持つところです。コスト削減の可能性は計り知れません。主要コンサルタントの試算によると、大手の投資銀行ならば、ブロックチェーン・テクノロジーの導入でもたらされるコスト削減は 100 億米ドルを下らないのではないかと見込まれています。新規参入企業と老舗銀行グループとの間の生き残りをかけた闘いでは、このようなコスト削減と、即時決済によるリアルタイムのトランザクション手続き完了を実現できる力が、優位性を決定付ける重要なカギになるかもしれません。こうした優位性を得たとしても、規制に関する大きな課題や、不正利用への対処といった問題はまだ残されています。

成長が見込まれるもう 1 つの関連分野はスマート・コントラクトへの活用です。ブロックチェーン全体に分散、複製されるスマート・コントラクトは、ビジネスの進め方に革命をもたらす可能性を秘めています。例えば、資金決済受領後の財産所有の自動移譲、SLA 管理下クレジットの自動決済、証券保管振替機関を必要としない証券取引が可能になるかもしれません。

まだスマート・コントラクトの将来性は大部分が未知数なうえに、ブロックチェーンにおける信頼性、規制遵守、個人情報の保護、不可逆性といった多くの課題が残されてはいますが、スマート・コントラクトにより契約実行の自動化が進む可能性は高く、主体となる人間の介入が必要なくなる点については特にそう言えるでしょう。その例として、AlphaPoint は、収集品、個人所有の株式、ローン、商品のような従来的な非流動資産のデジタル化により、金融サービスに新たな市場を開拓しています。AlphaPoint の TrustedVM* は、契約の安全な実行と有効化を可能にするインテル® ソフトウェア・ガード・エクステンション (インテル® SGX) が実現する、信頼できる実行環境 (TEE) を活用しています。

この動きは、貿易金融、グローバル・カストディー (国際保管銀行) といった、変革の起こりそうな別の分野への波及も期待されます。どちらも売り手と買い手の間に仲介者という昔ながらの領域が存在する分野ですが、 ブロックチェーン・テクノロジーにはこの意味でも、業界に大きな変化を引き起こす可能性があります。ブロックチェーンによるビジネスチャンスにはある程度の確実性があるにしても、実際にビジネスモデルを変革できた組織にのみ当てはまることで、その場しのぎの対応ではこのチャンスをつかむことができません。ブロックチェーンには、コストのかかる現状の複雑さを打開する現実的な見通しが期待できます。

影響を受けるもう 1 つの分野として、資産の真正性と出所を保証する、つまりどういった資産でも信頼できる記録となる証明書の作成が挙げられます。R3 の分散型台帳プラットフォーム Corda* では、インテル® SGX テクノロジーを組み込み、金融機関の「Need to Know 原則」が適用される場面で、データの機密性に複数のレイヤーを追加します。例えば、機密情報を開示することなく資産の出所を証明したいという機関には、インテル® SGX で暗号化データを処理するため、マシンの所有者に復号された状態でデータが開示されることはありません。

ブロックチェーンには、金融サービスの本人確認に関して差別化を図るさまざまな手法が備わっています。顧客エンゲージメントの向上、検証コストの削減、マネー・ロンダリングの防止といった適用方法もその一部です。

Financial Times がシンジケート・ローン (協調融資) を銀行変革におけるイノベーションの時期を迎えた分野と見ている一方で、資金調達と投資でおそらく最も注目を集めているのは、初期資本の資金調達手段であるイニシャル・コイン・オファリング (ICO) でしょう。2017年には 60 億米ドル、 2018年から現在までに 90 億米ドルを超える資金を調達していると見られています。この数字にもかかわらず、見た目の成長からは全体像が明らかになっていません。Telegram と EOS のツートップを除外してしまうと、昨年末と比べてペースダウンが示されているのが分かります。それでも、欧州の規制強化によるさらなる抑圧にもかかわらず、発行側と投資側の双方からの需要は確実に続くと思われます。

これがブロックチェーンによる資金の流れをスタートさせる要因です。皮肉ではありますが、法定通貨のステータスが確立されないことには、世界経済で信頼度の低い立場以外からの大規模採用は可能性が高いとは言えないかもしれません。税制と規制に関する課題から、主権国家の多くは懐疑的です。

ブロックチェーン全体では、個人情報の保護、セキュリティー、拡張性、信頼性の確保が共通の課題として残されています。インテルはパートナー企業とともに、顧客、コンソーシアム、標準化団体、研究機関と密に連携し、企業での採用とブロックチェーン導入による迅速な価値創造に向けて取り組んでいく計画です。インテル® ソフトウェア・ガード・エクステンション (インテル® SGX) 、インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーをはじめ、インテルの最先端テクノロジーと、Hyperledger* Sawtooth などオープンソースへの支援がビジネスを活性化していくことになります。

ブロックチェーンによって金融サービス企業が実現していくことも、自らの組織と市場を再構築していくにも、まだまだ多くの方法があるのは間違いありません。やはり、ブロックチェーンが関わるのは資金の流れだけではないということも明らかです。

さらに詳しい情報は、こちらをクリックし、6月26日~27日に開催され 120 人を超える講演者とテクノロジー業界を代表する有数のブランドが参加した Blockchain Summit London のレポートを参照してください。

https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/security/blockchain-overview.html

https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/financial-services-it/financial-services-overview.html

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