インテルの IT はどのように 10 万人のリモート勤務サポートに移行したのか

Archana (Archie) Deskus 作 | 2020年4月20日

author-image

投稿者:

インテルは他の多くの企業と同様に、長年に渡りリモートワークを導入してきました。しかし、COVID-19の感染拡大により、一夜にして10万人以上の従業員と派遣社員、エコシステム・パートナーと共にリモートで勤務するというシナリオに突入しました。これは驚異的な速さで展開されたため、私たち全員がアプローチを根本的に変えることを求められました。

事業運営を維持しながら従業員の生産性を担保するため、製造、サプライチェーン、セールス&マーケティング、人事、財務の各分野で多くの変更を行わなければなりませんでした。例えば、当社の製造プロセスは高度に自動化されており、工場の稼働を維持するための鍵は、技術者やエンジニアが継続的な工場稼働を可能にするためのリモートオペレーション機能を装備し、インストールやトラブルシューティングのために機器へのアクセスを可能にすることでした。また営業およびマーケティング担当者が、仮想エンゲージメントやイベントを通じて顧客や業界パートナーと連携できるようシフトしなければなりませんでした。そしてシームレスで一貫性のある体験を提供するために、複数のプラットフォームを微調整して、コラボレーションを可能にし、加速する必要がありました。

備えあれば憂いなし

インテルのリーダーシップ・チームの 2 つの優先事項は変わりませんでした。従業員の健康と安全、そしてビジネスの運営を可能な限り通常通りに維持することによる顧客のサポートです。インテルは2002-2003年のSARS発生後、パンデミック・リーダーシップ・チーム(PLT)を発足させています。PLT は会社全体の連携を大幅に促進し、健康と事業運営に関する深い機能的専門知識を有しています。さらに、すべてのインテルの組織は、堅牢な事業継続計画(BCP)を必ず持っています。インテルのIT部門にとってそれは、インテルの従業員の約半数をいつでもリモートワークさせられる準備ができていたことを意味しています。インテルの従業員は、長年にわたりモバイルPCを使用し、高度にモバイル化してきました。従業員は、オフィス以外の場所でも効果的かつ生産的に仕事ができる各種の通信およびコラボレーション・テクノロジーを使い慣れています。さらに、インテルの仮想プライベート・ネットワーク(VPN)は自動的に負荷分散するため、ユーザー数がキャパシティーを超えた場合には、ユーザーはシームレスに別のVPNにロールオーバーされます。これらすべての準備により、この予期せぬ在宅勤務のシナリオの基礎ができていたにも関わらず、インフラストラクチャーを構築する従来の方法では、今回の危機に対応するためのスピードが遅すぎました。インテルの IT 部門は、迅速なスケーリングが可能なクリエイティブなソリューションを早急に採用しなければなりませんでした。

最悪のシナリオに備えて考え方を変える

計画を立てていたにもかかわらず、予想される需要に対して VPN のパフォーマンスを維持することが出来ないことがすぐに明らかになりました。これはもはや、比較的短期間に一定の割合のリモート従業員をサポートするということではなく、IT にとって最悪のシナリオを克服するための取り組みを強化しなければなりませんでした。懸念があっても、不完全なソリューションであっても、私たちはコンフォートゾーンを超えて迅速にキャパシティーを構築する必要がありました。そうすることで、より永続的なソリューションに向けて段階的に対処することができます。私たちの対応は、感染拡大のペースに合わせたものである必要がありました。そのため、音声およびビデオ・エンジニアリング、データ・コラボレーション、セキュリティーとプライバシー、ネットワーク、サーバー、ストレージ、運用、仮想化の各チームが連携して対応を加速させなければなりませんでした。

従来のアプローチでは、オンプレミスでキャパシティーを追加することになり、2 週間から 3 ヶ月の期間を要すると見込まれました。その代わりに、音声やビデオ会議などの最も帯域幅を必要とするワークロードをクラウドに移行しました。インテル IT のマルチクラウド戦略は、セキュリティを維持しながらビジネスニーズに対応し、anything-as-a-service(XaaS)機能をサポートしているため、このステップにそれほど苦労はありませんでした。マルチクラウド戦略を活用することで、従業員がVPNを必要としないツールや機能に簡単にアクセスできるように、短期間でas-a-service オファリングを使用できるようスケールアップしました。既存のクラウド・サービス・プロバイダとの関係を活用し、クラウドへの更なるワークロード移行に対応するために必要なものを優先的に選択して連携しました。

堅牢な事業継続計画とクラウド対応にもかかわらず、それは大仕事でした。私たちは、一度の週末を使ってインテルの VPN キャパシティーを倍増し、同時にオンプレミスのサポートを加速させ続けました。しかしながら月曜日の朝には、世界中のインテル従業員が自宅で生産的に仕事をしていました。

対応を加速させるためのプロセス変更

私たちは、対応を加速させるために形式的なプロセスを迅速に修正する必要がありました。発生時に通常のプロセスに従っていたら、何千もの従業員が仕事ができない状態となっていたことでしょう。私たちは調達プロセスに例外を設け、従業員が仮想空間で業務を行えるよう入職 / 退職プロセスを変更し、機材更新プログラムに入っていたデバイスを一時的に再利用することでノートブックPCの提供を加速させ、さらにコラボレーションを強化するためにリモートワークをサポートする新しい機能を追加しました。

今後IT分野に何が起こるのか?

私たちの早い段階での成功の鍵は、迅速な行動と、従来の考え方からの逸脱を厭わない姿勢です。私たちは、問題を別の角度から検討し、社内で協働的な議論を行い、やむを得ない妥協をも伴う迅速な意思決定をしなければなりませんでした。これまでのBCPは、私たちの「ニューノーマル」となりました。では、今回の感染拡大に加えて別の大災害が発生した場合、この新しいBCPはどのようなものとなるのでしょうか?

必要に応じてクラウド・ソリューションを使用してバーストやスケーリングを行い、物理的なインフラを追加で構築する能力があることは分かりました。リモートで従業員をサポートし始めた最初の 2 週間で、追加された新しいキャパシティーに対して完全な冗長性を構築できていました。今後はニーズに応じてこのバースト機能を活用しながら、クラウドから as-a-service ワークロードの一部を引き戻して、コストとソリューションの最適化を図ることができます。

今後の見通し

COVID-19との戦いは、いまだに終わりが見えません。私たちは、この課題を克服するために世界中の市民や政府と連携する準備ができています。しかし、これまでとは様相が異なるかもしれません。この感染拡大は、大規模なリモートワークの成功とメリットを実証するための転換点となるかもしれません。私たちは、私たちの働き方が根底から変わるような革新的なビジネスモデルやテクノロジーを目にするかもしれません。また多くの人にとって、デジタル・トランスフォーメーション・ジャーニーの中で、自分たちがどの時点に到達しているかも再確認することができます。これが終わった後には、大部分の企業が将来の想定外の出来事に対応するために、デジタル・トランスフォーメーション戦略を加速させ始めるでしょう。

本記事は、インテルの IT Peer Network 上で 2020年4月に公開された記事から翻訳されました。元の記事を読むには、こちらをクリックしてください。

Archana (Archie) Deskus について

Achana (Achie) Deskus は、Intel Corporation の上席バイスプレジデント兼最高情報責任者 (CIO) チーフ・ディレクターです。インテルの CIO として、彼女の組織は情報テクノロジーを活用して、多様な企業のポートフォリオ全体で企業の重要な成長目標を加速させています。Deskus のリーダーシップの下、5,000 人以上の IT 専門家がインテルの資産を保護し、競争上の優位性を高め、さらに IT ソリューションを提供しています。Deskus は、上席バイスプレジデント兼最高情報責任者を務めていた Hewlett Packard Enterprise (HPE) 社からインテルに入社しました。Hewlett Packard 入社前、Deskus は Baker Hugs での CIO として戦略的イニシアチブを成功させることで、業務上のパフォーマンスとビジネス価値を実現しながら、IT 組織を戦略的ビジネスパートナーへと変革しました。Baker Hugs の前は、Ingersoll-Rand、Timex Corporation、Unitech Technologies Corporation で CIO の職を歴任しました。